音楽への潜航へ向けて

名盤との出会いは人生を変える。
成功だとか失敗だとか、そういう話ではないのだ。
その作品に触れて、その時間が彩られる。その彩りは確実にその時間を豊かにする。
この体験は、あらゆる芸術的作品から得られるものだ。しかし、より自分がのめり込める、潜っていけるような作品から得られるそれは、より格別なものである。私の場合は音楽が好きだ。あまり良い悪いの序列をつけながら聴くことは好みではないが、聴いたあとの感覚に、作品によって少なからず違いがあるのもまた間違いない事実だ。

今まで何となく発していた「名盤」という言葉。
自分なりにようやく、それらしい意味を見つけられたような気がしている。より深く潜り、どこまでもその良さを探していたくなるような感覚。
この感覚を、ことさらに強く励起させてくる作品を、私は「名盤」と呼ぶようにしようと思う。


そして、ようやく言葉になったこの感覚をもとに辿っていくと、私は数々の名盤に出会って来ていたのだなと、改めて思う。
しかし私が楽曲を作品単位でしっかりと聴き込むようになったのは、ここ5年ぐらいの話だ。
例えばアルバムが発売されて1週間ほど、その作品を周回して聴く。その後は、プレイヤーのシャッフルに任せて聴くことが多かった。

生活の変化に合わせるように音楽の聴き方、音楽への向き合い方も変わっていった。
一つひとつの作品をより深く聴くようになった。そうすると、どちらが正解とは言えないのだろうけれど、少なくともそれぞれの作品に対するイメージがより自分にとって強固なものになっていくのが感じられた。
強化になっていくということは、より確かに触れる感覚を得られるかもしれない。一点突破を志さなければ深く潜ることが出来ないかもしれない。いずれにせよ、よりしっかりと作品を、音楽を聴く必要を感じた。まだまだ、「音楽を聴くこと」の楽しみ方が浅いことに気付かされた。気付いてしまってなお止められないのならば、対応する必要がある。

私は、文章を書くことが好きだ。
去年から、ライブの感想を文章で残すようになった。この体験は私にとって明らかにプラスになった。
現場で、「記憶に残すことを意識しない」ことは何も変わっていない。しかし、「思い返して深めること」は、瞬間の煌めきを一切損なうものではないことを知った。むしろ、思い返して得られるものがあったように思う。これはまだ言語化出来るほどに固まっていないから、続ける中で進めていきたい。

そう、話を戻そう。というか、ようやく本題である。
新旧を問わず、私が「名盤」だと思った作品について、私の想いを強くぶつける文章を書こうと思う。間違いなくしんどいのだろう。しかし同時に、愉しさも計り知れない。
楽曲はもちろん、作品に対して、その空間により潜航するイメージを強く持って。


この文章は、どうせそのうち行き詰まって読み返しに来るであろういつかの私に向けて書いた。
だから、これを読んでくれた、私以外のあなた方に、どうもありがとう!

例えば一枚30分の作品を集中して聴くと、初めて聴いた場合には、8時間フルタイムで働いたのと大差ない疲労感がある。
でも、それぐらいの勢いでのめり込める対象こそが、人生に必要な豊かさなのだと私は思う。

プレッシャーになるから控えめな表現に留め置くけれど、私の愛した作品が、一人でも多くの人に興味を持たれるきっかけになるような、そんな文章を書く。
気合い!



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