【採用担当者必見】良い面接官と悪い面接官の傾向とは?(第1回JIRC調査)
株式会社スタジアム(JIRC)の岩田です。
今回は面接官の皆さまにとって非常に興味深いテーマ、「良い面接官と悪い面接官の傾向」についてご紹介いたします。
1.調査の実施背景
私は前職時代、約10年間で5000人以上もの面接を対応してきましたが、これまで2次や最終面接で人事や営業、エンジニアなど現場サイドの責任者と共に面接する中で、
(1)適切な見極めができていないケース
(2)十分なアトラクト(動機づけ)ができないケース
を数多く見てきました。
適切な見極めができなければ、本来合格にすべきでない人を次の選考に進め選考工数を増やしてしまったり、最終面接のジャッジを誤れば入社後のミスマッチに繋がります。
また、面接は応募者にとって数少ない企業との貴重な接点です。求職者は複数の企業を同時並行で応募しているのが一般的であり、内定後応募者に選んでもらえるように面接時から十分なアトラクト(動機づけ)ができなければ、内定を出しても辞退されるリスクが高くなります。
こうしたケースが一部の企業ではなく、多くの企業で起こっている事実を知ることになりました。
ではなぜ「適切な見極めができない」、あるいは「動機づけができない」といった事態が発生するのでしょうか?
私が駆け出しの頃は社内の面接官トレーニングに参加しレクチャーを受けたり、経験豊富な面接官に同席させてもらい、面接の場数を踏みながら試行錯誤の上、精度高く人材の見極めやアトラクト(動機付け)を行えるように意識してきました。
が、多くの方が私と同じようなプロセスを経て面接対応され、残念ながら人事採用責任者や経験豊富な面接官でさえ自身の面接を客観的に見つめ直す機会を持つことができていないのが現状です。
客観的に定量的に自身の面接を見つめ直す機会があれば、課題や対策が明確になり、面接スキルを各段に向上させることに繋がります。
こうした背景から、弊社では面接力向上を目的に人事採用担当者(面接経験者、未経験者)、面接対応者に向けクラウド型面接官研修「imトレーナー」を数多く実施しています。
imトレーナーで得られた評価データ、コメントから面接スキルの高い評価を得た面接官と低い面接官でどういった違い、傾向があるのかを分析し面接に携われる皆さまに情報を提供することにいたしました。
分析から見えてきた調査結果は以下の通りです。
2.調査結果
<分析結果サマリー>
1.高い評価を得た面接官の3つの特徴
(1)応募者がリラックス状態で本音を語れる雰囲気作りができている
(2)行動事実の深堀による評価ができている
(3)応募者に合わせた動機形成ができている
2.低い評価を得た面接官の3つの特徴
(1)緊張感がありざっくばらんな話ができる雰囲気になっていない
(2)行動事実ではなく応募者の印象で評価をしてしまっている
(3)応募者に合わせた動機形成ではなく一律の回答になってしまっている
【図1】面接官 高評価者と低評価者の傾向(トレーナーからの評価)
図1は株式会社スタジアムの専属トレーナーが大手企業を中心とした人事採用担当者の面接スキルを評価した際のスコアを元に、高評価者(上位20%)と低評価者(下位20%)の傾向を各項目ごとに分析したものです。両者に大きな差が出た項目は以下の通りです。
<評価に大きな差(1P以上)が出た8つの項目>
1.応募者本来の姿を引き出すためリラックスした雰囲気を作っている
2.応募者のエピソードを掘り下げ、詳細な事実情報を引き出している
3.確認事項を明確にして、首尾一貫した質問を展開している
4.組織の活動より本人の行動に焦点を当て、引き出している
5.事実情報にとどまらず、応募者の本音や真意を引き出している
6.応募者の内面に迫り、志向を明らかにしようとしている
7.応募者の入社意欲が高まるよう、その人に合わせた情報提供をしている
8.応募者の納得感を高めるため、できるだけ具体的に情報提供をしている
<考察>
面接官全体の傾向として応募者に十分な回答時間は設けられ「適した時間配分ができているか?」という点では差は見られませんでした。
一方評価が分かれたポイントとして
(1)応募者がリラックした状態で本音を語れる雰囲気づくり
(2)行動事実の深堀による評価
(3)応募者に合わせた動機形成
の3点が面接評価に大きく影響していることが分かりました。具体的な評価コメントを見てみましょう。
<高評価者の傾向と具体的評価コメント>
(1)応募者が本音で語れる雰囲気づくり
・冒頭にアイスブレイクの時間をしっかり設定、緊張を解いた上で進行。
・時折冗談を織り交ぜ、自然に会話できる場づくりを意識できている。
・深掘りしているが、圧迫することなく自然に会話を引き出せている。
(2)行動事実の掘り下げ質問
・事実関係を元に具体的に掘り下げ、行動事実を把握することできている。
・本人の行動に焦点をおき、深掘り、事実を質問で引き出せている。
・考えたことの背景や事実確認を行い、深掘りができている。
(3)応募者の動機づけ
・希望職種のイメージが描けるよう具体的な働き方を端的に伝えている。
・質問回答に加え、適性人材や求められる人材等+αの情報を伝えている。
・動機付けの時間をしっかり設定、入社後のイメージを交えながら質問に回答しており熱量を感じることができる。
・終盤に応募者の評価ポイント(良かった点)をフィードバックしている。
<低評価者の傾向と具体的評価コメント>
(1)緊張感があり固い雰囲気
・アイスブレークの時間がなく緊張がほぐれないまま面接を進行している
・冒頭に「全体の流れ」を説明、形式的で単調且つ緊張感が生まれている
・面接官が質問を考える事が何度もあり、無言の時間が緊張を生んでいる
(2)応募者の上辺の印象や浅い情報だけで評価
・質問が一回の応答で終わるケースが多く「なぜそう感じたか」「なぜ重視するか」の深堀ができておらず浅い
・広く浅く質問しており、真意を引き出す事実情報を深く聞き出せてない
・応募者の特性や志向を把握するための事実確認、行動の背景、価値観など多面的に質問できていない
(3)一律の回答で応募者に沿った動機付けが不十分
・質問の背景にある応募者の不安を考慮した具体的な回答ができていない
・聞かれた事の回答のみ、学生の思考や価値観を意識した回答ができてない
・質問に答える姿勢が淡々としており、姿勢からは熱意が伝わらない
以上がトレーナーが評価した高評価者、低評価者に見られた傾向です。
【図2】面接官 高評価者と低評価者の傾向(学生からの評価)
図2は模擬面接時の学生役(内定を持つ大学4年生)が面接官に抱いた印象を評価した際のスコアを元に、高評価者(上位20%)と低評価者(下位20%)の傾向を各項目ごとに分析したものです。両者の大きな差が出た項目は以下の通りです。
<大きな差(2P以上が出た4つの項目>
1.面接官の雰囲気が良かったか
2.質問で納得の回答が得られたか、会社や業務内容を理解できたか
3.不明点や疑問点の解消ができたか
4.入社意欲や会社への関心が高まったか
<考察>
面接官のマナーや言葉遣い、質問の分かりやすさ、話を理解する姿勢など基本的なスタンスでは差が見られなかった。
一方で
(1)和やかな雰囲気作り
(2)会社や仕事理解を深められたか
(3)疑問点の解消
(4)納得のいく回答
など、入社意欲や会社への関心など志望度に影響を与える項目に顕著な差が見られた。
面接は応募者にとって数少ない企業との接点。和やかな雰囲気づくりは企業の印象に影響を与えるだけでなく、学生が本音で語ることができ、納得感をより高く評価された事が伝わり、入社意欲が高まる傾向が見られた。
また応募者は面接を通して会社風土や仕事理解を深めていきたいと考えており、十分な質問時間が設けられているか、納得のいく回答が得られ、疑問や不安点を解消できたかも入社意欲を高める上で重要な要素であることが分かった。
3.高評価者と低評価者のギャップを埋めるには?
こういった面接官の課題を解消するための情報(tips)をJIRCでは数多く発信していきたいと考えています。また、既に数多くの企業で面接官向け集合研修プログラムが開催されていますが、こういった課題を埋めることが十分にできている訳ではありません。
JIRCでは、このような面接官が抱える課題を解消し、面接に必要な知識や実践的なスキルを実装するための新たな面接官向け集合研修プログラムを開発、実施する予定です。
プログラムの主な特徴は以下2点です。
JIRC 面接官向け集合研修プログラムの特徴
1.imストレッチ
面接前、序盤に学生が本音でコミュニケーションを図れる環境を整えるために準備(意識)すべき内容を学ぶことができる。
(1)応募者に好印象を持ってもらい
(2)面接官が適切に見極めできるようにする
2.コンピテンシー面接
従来型の面接(応募者の印象や表面的な考え方、価値観の評価)ではなく、成果に繋がるか行動特性(コンピテンシー)から学生時代の具体的な行動事実に基づいて評価する手法を学ぶことができる。
集合型研修プログラムの正式なリリースは改めてご案内いたしますので今しばらくお待ちください。
<調査内容>
調査対象 :imトレーナー受講者の高評価20%、低評価者20%
調査方法 :面接官定量評価、及び定性コメントによる調査
実施機関 :Japan Interview Research Center
引用について:本調査結果を利用の際は(JIRC・スタジアム調べ)と表記ください。
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