世間の騒ぎをどう見るか?
世間はえらく騒いでいる。
松本人志が8年前、複数の女性に性交渉を強要したとか。
それに対して吉本興業は、こう言うコメントを出した。
松本人志の容疑を否定する人、やっぱりなと思う人たちの報道でまた世間は賑わっている。
刑法上、民法上はどういう問題なのか?
「不同意性交等罪」というのができたらしい。
でもそれはいつから施行されるのか?
ってことは、8年前の事案なので、刑法上は不同意性交等罪っての適用はないってことね。
要するに同意かどうかがこれまでの「強制性交等罪」では問題になっていたってこと。
刑法上は、その「同意」を証明が難しかったので今回の法律で要件を緩和した。
刑法上の強制性交等罪で有罪になれば、5年以上の有期懲役になる可能性もある。
しかし、民事上の「示談」で終わる場合もある。
示談では、当事者によって、この損害賠償義務の有無・金額・支払方法が合意される。損害の内容には、①所有物を破壊されたり、金銭を奪われたり、怪我で治療費を支出させられたりといった経済的な損失(財産的損害)もあれば、②違法行為によって受けた精神的なダメージ(精神的損害)もあるらしい。
その金額はいくらくらいになるのか?
金額に影響するのは、①被害者の被害感情、②犯行内容の悪質性、③結果の重大性、④加害者の経済性がある。
一般的には、100万円程度から500万円程度までの間におさまる事案が多いらしいが、松本人志の場合は、事実が認定されれば、④加害者の経済力というので破格の額になるかもしれない。
事実はどうなのか?
で、実際の加害と被害はどうなのだろうか?
「週刊文春」で確認できるのは、二人の被害者の証言である。
週刊誌では、集めた女性3人と共に松本人志スピードワゴン小沢、放送作家Xが、
「ジャンケンでベッドルームに松本と女性」
「メインルームのソファに小沢と女性」
「バスルームに放送作家と女性」
というように分かれていたと女性は証言している。
もう一人の証言者であるBさんは、電話で連絡があり、彼氏と同棲していたので部屋飲みが嫌で断ったものの、小沢がしつこく「VIPは外のみできないから」と誘ってくるので参加したとか。
そこで松本氏に性行為を強要されたと証言している。
「ダメなら口でやって」「口が嫌なら手でやって」と強要されたとか。
という知人の証言もある。
ただ、物証と呼べるものがほとんどない。
あるのは、スピードワゴンの小沢のアリバイ作りのLINEと言われているもの。
これはベッドルームにいるAさんに小沢が送ったLINEらしい。
文春によれば、携帯に出ることの出来ないAさんにこのメッセージを送り、偽装工作をしたのだとか。
というのは文春で書かれているある人の解釈。
わかっている事実が少なすぎるのと、すべて被害者の証言であること、物証は解釈のみのLINEとなかなか事実認定が難しそうではある。
松本人志側の名誉毀損裁判はどうなるか?
松本人志と吉本興業側は、
と言っている。
もし今回の報道が事実と違うなら、当然、松本人志側が名誉毀損裁判で勝訴するだろう。
しかし,名誉毀損裁判が厄介なのは、名誉毀損罪が①公然と②事実を摘示し、③人の名誉を毀損した場合に、④その事実の有無にかかわらず成立するのだが、阻却事由というのもあることだ。
刑法では、
①公共の利害に関する事実
②その目的が専ら公益を図ることにあった
③真実であることの証明があったとき
という3つの条件を満たせば、名誉毀損罪は罰せられない。
民法ではこれが、
【事実適示型の名誉毀損での違法性阻却事由】
①公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
②専ら公益を図る目的に出たこと(公益目的)
③摘示された事実が真実であると証明されること(真実性)
という条件になる。
本来、違法性阻却事由を満たしている証明するのは名誉毀損をした側だが、「これは本当だ」と証明することに比べると、「これは嘘だ」と証明することは一般的に困難であり、証拠となる資料も確実なものを充実させる必要がある。
また、真実であると証明できなかったときでも、「真実であると信ずるについて相当の理由がある」ならば、故意・過失がないとして、加害容疑者側が損害賠償請求ができなくなる。
今回の場合、Aさんは週刊文春の再取材にこう答えている。
ホテルに誘った事実は否定できないだろう。
その小沢のLINEは物証として残っているようだ。
そこで性交渉が行われたのかどうか、それが強制だったのかどうか?
この証明は難しいし、事実ではないという証明も難しいだろう。
今回、8年前のことをAさんが告発したことについてこう語っている。
ジャニーズ事件の場合は加害者がすでに他界している。
本人に事実を確かめようもない。
しかし、今回は加害容疑者が生きている。
ジャニーズの場合、事実が確かめられないケースもあるようだ。
そもそもジャニーズに所属していたという記録も残っていないケースもある。
しかし、今回の松本人志の性加害容疑は、事実を確かめる裁判はできる。
ホテルの宿泊記録もあるだろう。
スピードワゴン小沢、放送作家Xもいるし、当日泊まったという3人の女性も法定に立つことが出来る。
どうしてAさんが刑法犯罪に当たる行為について訴訟しなかったのか?それは不思議である。
法治国家であるなら、強制性交であれ名誉毀損であれ、事実を認定し、法的措置を取るべきだろう。
性加害は無くすべきだが、噂やデマ、推測や偏見で世の中が動くことも避けるべきだろう。