見出し画像

大学経営者はパチンコ店経営者ほどリアル感をもっているのか?

第1回で「職を賭けてやります!」なんて気負って書いたけど、あんまり反応無かった。
悲しい(・_・、)
ICUの学生みたいに2000個も「好き」がついて話題になったらどうしよう、いろんな所からクレームが来たらどうしようとかビビっていけど。
ない。
一切ない。
で、何を書いても大丈夫そうなので、第二弾。
学費減額の問題。

学費減額のためには1.5兆円必要?

いきなり結論からですが、学生たちが電子署名で求めている学費の半分減額を全国で実現するためには、1.5兆円ほど必要なようです。
あくまで手元にある資料を合成したときの計算ですが、大学・短大・専門学校の学費(授業料等納付金)の総額って3.7兆円くらいらしい(「教育再生実行会議第8次提言」より)。
高等教育無償化が始まっているけど、文科省は対象者が約2割になるという当初の見込みで総額予算は7,600億円だった(2018年度文科省試算)。
つまり、3.7兆円から無償化分0.76兆円を引くと、ざっくり2.94兆円分は学費で無償化になっていない分という計算になります。
その半額減額だと、半分の1.47兆円。ざくっと約1兆5,000億円があったら大学・短大・専門学校の学費が半額にできるという計算になります。
この1.5兆円という額が大きいのか小さいのかはあとで。

学費半分を返すお金は誰が負担するのか

電子署名を集めている学生たちはこのお金を大学側に返還を求めています。
各大学で負担ということです。
うちの大学の場合だと、去年の学費収入は約64億円。半分だと約32億円。
実は、この額は本学の人件費の約30億円とほぼ同じ額なんです。
学費の半分って、ざっくり人件費をゼロにするとまかなえるくらいの規模感って思ってください。
でも、財務って大学によって違うんです。
例えばNoteで話題になったICUの1年間の学費収入は、約54億円。半分だと約27億円。
一方、人件費は約50億円。人件費を半分にするとまかなえちゃうような財政構造になってます。ICUって、うちの大学より人件費が高いんですね。
いずれにしてもICUの先生の給与が半分になっちゃったらどうなるか?先生たちみんなよその大学に出て行くよね。
個別の大学で学費を半分にすることってなかなか難しいんです。昔からの蓄えのある大学は別だけど。
蓄えのある大学って、『東洋経済』なんかで「強い大学!」って特集の上位に並ぶ大学なんかです。って、ちょっと告げ口しとく。

では、1.5兆円を誰が負担すべきか?

では、もし学費の半分減額が必要だとして、その費用はどこがもつべきか?
必要なのは1.5兆円。ちなみに今回のコロナ不況対策で各世帯一律10万円給付の原資って約12兆円とか。国債発行は1000兆円を超えた!って報道もあった。
実は、1.5兆円自体は長期的な国家財政にとってそんなに大きい額ではない。
でも、大学・短大・専門学校への進学って今は18歳人口の約7割とか。逆に言えば3割は恩恵にあずからないから不公平だって声もあるんだろうね。

国が1.5兆円を負担すべきか?

国は1.5兆円を出すべきか。
あなたの税金を学費減額のために私の大学に回すのはいいと思いますか?って友人にいろいろ意見を聞いた。
同じ学校でも日本語学校の校長なんかは、どうかねえと反対だった。明かな学校間の不平等だからと。
一方で、企業のコンサルタントをやっている友人は、不況の時に企業が研修にお金をケチるのは将来のことを考えていないから。教育が投資だということがわかっていないと言った。
教育は投資。
たしかにミクロレベルでは生涯賃金は、大卒の方が高卒より4,000万円くらい多いらしい。
いや、それはよけいに不公平ってことじゃ?
でも社会をマクロレベルでみてみるとどうか。
今の父親母親が大学に入学した時代の高等教育進学率は44%だった。今は71%。
世の中が変わった。情報や知識を扱う仕事が増えた。社会もスマートになった。
これは教育にお金をかけて、人材を育てたおかげといえる。
その7割の家庭に教育費負担がのしかかっている。
OECD調査では教育費の公費・私費の負担率が日本の高等教育は66%。OECD平均は30%。日本は極端に国家より家庭に頼った教育費の構造になっている。
ここにコロナ不況。
国が疲弊している。
この国難に政府がこのお金を全額とは言わなくても、いくらか出してもいいのでは?
それで各大学がその分を学費減額して学資負担者に還元すべきなのではないか。
それを各大学の経営者は政府に堂々と要求すべきなのではないか。

パチンコ店経営者ほど大学は経営のことを考えているのか

では、どうしてそうならないのか?

ところで私にはパチンコ店業界の社長の友人が二人います。
ビジネススクールのクラスメイト。ひとりはチェーン店経営とコンサルタントをしている人。もうひとりは、パチンコ店だけでなく、アミューズメント施設や外国のホテルなども経営もしている人で、どちらもまじめで尊敬できる友人です。
この前、休業要請があるのに大阪や兵庫であるパチンコ店が経営を続けていましたね。特措法で名前を公表されるケースもあった。
どうしてか?ってその友人たちに聞くと、大阪で名前公表される直前まで頑張っていた店主が言っていたのと同じ意見だった。政府保証の金融機関から融資が受けられなくされた、ということ。
つまり、コロナ不況なのに業界差別されているってこと。
そりゃ、政府保証の融資から外されてちゃ店閉められないよね。
従業員の賃金などの支払いのためには収入がいります。経営を続ける運転資金っていうんだけどそれがないと倒産しちゃうんだよね。
だから続けていた。パチンコ屋なんて無くしてしまえ!とかいう趣味の問題や、この際、憲法に緊急事態条項をなんていうのは論点がズレズレの話。問題を正面から見てほしい。
ふたりとも言っていて印象的だったのは、「われわれもプライドをもってやっているんだ」ということ。
お客を大事にしている。従業員を大切にしている。店の経営をなにより考えている。昼も夜も。だから営業を続けるということ。もちろん感染防止を行うことが前提ですよ。

どうして大学は経営のリアル感をもてないのか?

では、どうして大学経営者はパチンコ店経営者ほどリアルに現状を捉え、政府に要求できないのか?
大学にお金があるからでしょ、という職員もいます。
たしかに『東洋経済』の「強い大学ランキング」で上位になる大学はその通りといえるところもある。中には収益率(大学では事業収支差額比率と言います)30%!、内部保留比率○○%ってところは痛くも痒くもないでしょう。
○○億円パッケージ、一律給付○万円!ってことができるのもそのため。それを競うのもひとつのPR手法でしょうけど。
一方で大学の4割は定員割れという実態もあります。そんなところは○○億円パッケージなんてできない。
パチンコ店が営業を続けるのは、融資が受けられないから、店が潰れるからって危機感です。
大学は学資負担者に学費が負担になっているとあんまり思っていないし、この難局に必死で困っている学生から救おうと思っていないんじゃないでしょうか。だから、一律○万円支給なんて、目先のことでごまかそうとする。
大学人の方、間違っていたら遠慮なく指摘してください。

大学人としてのプライドはあるのか。迷える学生を救う覚悟はあるのか?

で、私学団体も文部科学省には腰が引けているように思います。
経営のリアル感がないから政府に強く要求しない。
大学人としてのプライドはあるのか。
自分の大学が学生を大事にしているというプライドはあるのか。
困っている学生を全力で救おうとする覚悟はあるのか。

大学に経営のリアル感がないのでは?
誤解かな?

まだまだ書きたいことがあります。
一番言いたいのは、学生に「そんなに簡単に、退学したいなんて言うな!」です。
それは次回に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?