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沈水香木
2018年12月21日 23:45
室外機の音が、遠くで唸りを上げていた。 この人はその微量の騒音にさえも敏感だ。まぶたを閉じては開け、見えもしない室外機の音の方へ視線を這わせ、動きを止める。ただの室外機の音なのに、それ以外の意味合いを勝手に持たせて、しまいにはのびた下まつげに涙液が溜まり、ゆるやかに老いた肌を湿らせる。 「そんなに、悲しまなくてもいいでしょうに」 わたしは途方にくれて、目の前の人に言うのだけど、残念な