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【短編・掌小説】○○菓子店は深夜に待っている

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深夜の菓子店を訪れる、ひとや、ひとみたいなもののお話。 更新は、深夜に、きまぐれに。
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#掌小説

〇〇菓子店は深夜に待っている・マカロン菓子店

〇〇菓子店は深夜に待っている・マカロン菓子店

 室外機の音が、遠くで唸りを上げていた。
 この人はその微量の騒音にさえも敏感だ。まぶたを閉じては開け、見えもしない室外機の音の方へ視線を這わせ、動きを止める。ただの室外機の音なのに、それ以外の意味合いを勝手に持たせて、しまいにはのびた下まつげに涙液が溜まり、ゆるやかに老いた肌を湿らせる。

「そんなに、悲しまなくてもいいでしょうに」

 わたしは途方にくれて、目の前の人に言うのだけど、残念な

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