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ただあるということ、隠してしまうということ



星空の見える露天風呂で思ったこと。

温泉の湯気で星空が隠れてしまう。湯気は生命そのものだと思った。その移ろいやすさや、得体のしれなさから、そんな気がした。お風呂からあがった子供たちから立ち上る湯気はまさに生命そのもの。

雲も生命だと思った。湯気よりもゆったりとしてはいるが、やはりその時々刻々と変わっていく様は、大きな生命という感じ。

星空は変わらない。ただいつまでもそこにある。星空に神話や死者を見るのは、真実だと思った。死者は変わらない。彼らはもう動かないし、喋らない。ただ記憶の中にある。

生者は動くし、しゃべりもする。表情や感情はめまぐるしく変わるため、なかなかあるがままとはならない。いつでも周りにいろんなものが付きまとう。

突然、死者というのは存在そのものなのだとわかった。彼らにはもう、いろんなものがついてない。ただ残された者の記憶の中にあり、それが星空やいろんなものに投影されるのみである。肉体を失うことで、逆に彼らはただの存在となり、真理となった。

しかし星空は雲によって隠されてしまった。生命は真理を見えにくくしがちでもある。その葛藤とともにありつづけるからこそ、それは尊いものなのだろう。

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