97%の、まだJINSを知らない人たちへ。物流のプロが、サプライチェーンで叶える世界進出
日系、外資系それぞれの物流会社で世界各地を渡り歩き、2021年、JINSにジョインした前園博之。
「海外貿易」に憧れて物流業界一筋のキャリアを歩んできた前園が、メガネ会社に足を踏み入れた理由を聞くと──。
「幅の広い仕事ができるのが物流だとしたら、次は奥が深い仕事をしてみたくて」
JINSに入社早々、挫折も味わったという前園が目指すのは、JINSの“世界進出”だ。
「正直、メガネという商材へのこだわりはなくて...」
日系大手の物流会社に14年勤務し、香港、中国、欧州を駆け回った。
「貿易への憧れと、モノに触れられる業種が良くて」。
世界各地での経験を生かし、2社目は欧州系の物流会社へ。社長はドイツ人、上司はベルギー人。25カ国の多国籍社員の「ザ・外資系」の環境は刺激的だったが、次第に「合理的過ぎでシステマチックなやり方が、個人としてはしんどい」と感じ、転職を決意した。
JINSを選んだ理由を、前園はこう振り返る。
「次は、モノを扱うBtoC企業に入ろうと思っていたんです。自分でデザインして、作って、売って、ECもやって、返品も受けて...というように、モノの上流から下流まで携われるSPA(※1)業態の会社を日系、外資系問わず探していました。
正直、メガネという商材へのこだわりはなくて、そんなに詳しいわけでもなかった。でも、医療機器という“難しい”商材を扱えることにとても魅力を感じたんです」
世界各地の人と関わる中で、日本のモノの価値を実感していた前園。精巧さが求められる医療機器なら、なおさらだ。
サプライチェーンという点では、日本は法整備が確立しているが、世界ではその常識は通用しない。前園は、自身の経験から「海外は法律がコロコロ変わるので、企業側も、現場の取引先の方々も把握しきれていない。自由さはあるけど、危うさもあるんです」と話す。
その“ヒリヒリ感”がやめられないのだろう。前園のJINSでのキャリアは、さらなる海外進出に向けたサポートから始まった。
6つの国と地域から、世界へ広げるために
入社当初は社長室に配属、その後、サプライチェーン本部ロジスティクス部で既存の海外店舗のロジスティクス(※2)改善や、JINS海外進出を手がけてきた。
2010年に中国に初進出して以降、香港、台湾、フィリピン、アメリカと、日本を含む6つの国と地域での販売をおこなうJINSが次に目指すのは、さらに広い世界だ。
グローバルの物流には人一倍詳しく、各地に知人がいたこともあり、JINSの進出は順調に進むと思いきや、そう簡単にはいかないのが現実だ。
「世界には、何百年とかけて築かれてきたロジスティクス(※2)のやり方があるんです。歴史的に物流のルートやルールは決まっている地域も多く、その中で、できる範囲で工夫、改善をしていかなければなりません。
加えて、医療機器だからこその難しさもあります。世界に進出するためには、お金、時間、ルールも知識も、越えなければならない最初のハードルがとても高いんです」
前園は、市況やリソースを鑑みて「まだその時ではない」と判断。JINSの次なる世界進出は、まだまだ道半ばだ。
「世界全体でルールやサプライチェーンの足並みが揃うには、まだまだ時間がかかると思います。今、海外でのメガネ販売においては、一部フランチャイジー(加盟店)と協業するなどしている国や地域もありますが、その場合、JINSの商品は彼らの取扱い商品のほんの一部にしか過ぎません。
JINSを売っていくために、彼らが十分に時間を割けているわけではないので、そこも課題です。made in Japanのものは良いよね、という市場における共通認識があるうちに、世界のJINSを確立したいなと思っています」
コロナ禍という未曾有の状況もあり、出鼻をくじかれている前園。それでも余裕を見せるのは、世界各地の物流を見てきた経験から、こう思えるからだ。
「世界中を見ても、日本の企業が進出していない国の方が少ないですよね。逆説的に言えば、他の小売が進出できているのに、JINSにはできないという理由がないんです。
まずは行ってみて、ダメだったら修正すれば良いんです」
JINSを通して世界を見ると...
世界進出を目指すJINSのサプライチェーン、その強みは?前園はSPA業態の強みを挙げた。
「JINS=SPA業態の強み。製造、流通、小売それぞれを持つ企業よりも全体的、横断的、有機的な改善ができるという点です」
つまり、制約が多い物流業務において、ロット(出荷数量)管理や納期調整、パッケージの形状決定に至るまで自社完結できる環境はロジスティクス改善の幅を広げる事に直結しており、サプライチェーンの中で「やれること」がとても多いのだ。
「今後、SPAって物流以外でも色々な可能性があると感じています。例えば、製造対象をメガネから別の商材にしたり、流通も、その域内で別の使い方をしたり。小売も、JINSという知名度と、450店以上ものネットワークを活用して、他のことに活用することもできると思います。
SDGsということが叫ばれている今、サプライチェーンから何か取り組んでいかなきゃと思っているんです。1つ30gのメガネをリサイクルするというのは、もちろんとても大切なことですが、大きなインパクトを生み出すには時間がかかります。
こうした業態だと環境やエネルギーの問題に目が行きがちですが、JINSがやるべきなのは『全ての人に健康と幸せを』ではないかなと。ここを、サプライチェーンを使って実現していくのが、個人的な目標です」
そのために必要なのが、世界進出というわけだ。
「今は6カ所しか進出できていない。これは世界のたった3%。つまり97%の人はまだJINSを知らない、ということなんです。
この97%の人たちに、JINSの商品を届けていきたいと思っています」
最後に前園は、JINSのこれからの可能性についてこう話した。
「自分がずっと関わってきたBtoBの世界は、良きパートナー探しと契約の盛り込み方、現場でのコミュニケーションでほぼ決まると思っています。会社と会社の関わりである故、そこには一定の常識が働き、相手の出方もある程度想定できます。
一方、JINSのようなBtoCは、不特定多数を相手としている為、想定できない事が多く発生すると実感しました。その最たる例が、コロナ禍の緊急事態宣言。店舗を閉じなければいけないことにより売上をものすごく心配したのですが、結果的に一時的ではありますが、メガネの売上が伸びる現象が起きたんです。
外出が減った→コンタクト利用者が減った→逆にメガネ需要が増えた、という現象が起きました。ここまで想定できる人はなかなかいなかったのでは?と思います。
逆に言えば、どこに、いつビジネスチャンスがあるか分からない。そしてJINSは、SPA業態であるが故、さまざまな可能性を秘めているということを感じています」
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「世界を舞台に仕事をしたい」「挫折があっても、前を向ける」
こんな人は、ぜひJINSの門を叩いてほしい。
そこには、険しく、想定外のことが起きようとも、可能性を信じ、ともに夢を追うことができる仲間が待っている。
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