ズブズブ


未だ寝れずに目を瞑っている。もうすぐ4時。
そしたら頭の方から沈み込んできた。
ズブズブ、枕も布団もこえて、身体が下の方へ飲み込まれていく。ズズズ。
焦ってはいない。恋人が横ですやすや寝ているから。焦って声を出したりして、起こしてはいけない。
ついに天井へ伸ばしていた左手も飲み込まれて、視界も平衡感覚も失った暗闇の中を落ちていく。胎内のようで、袖口から出した手がフニフニとしたものに包まれてあたたかかった。
底を知らないまま、一筋の光がさしてきた。しかしそれは大きくて、知らない、神々しい手で、かわす間も無くその手に首を掴まれた私は息が吸えずにもがいた。やがて体力が尽きて完全に包み込まれて溶け込んでしまった私はその手の中で安らかに眠ってしまった。あまりにも眠りすぎていて、いつのまにか無数の糸で覆われ始めた。よくみるとそこには小指の第一関節ほどもない、小さな虫のようなものが一生懸命に糸を紡いでいる。口から吐き出しては前足で伸ばして、後ろ足で後ずさる。そうやって何匹ものその虫に覆われて何時間たったのだろう。そろそろサナギになる。

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