散光星雲

フィクションとノンフィクションの狭間の思考と日常が堆積していつか地層になるまで。

散光星雲

フィクションとノンフィクションの狭間の思考と日常が堆積していつか地層になるまで。

最近の記事

ズブズブ

未だ寝れずに目を瞑っている。もうすぐ4時。 そしたら頭の方から沈み込んできた。 ズブズブ、枕も布団もこえて、身体が下の方へ飲み込まれていく。ズズズ。 焦ってはいない。恋人が横ですやすや寝ているから。焦って声を出したりして、起こしてはいけない。 ついに天井へ伸ばしていた左手も飲み込まれて、視界も平衡感覚も失った暗闇の中を落ちていく。胎内のようで、袖口から出した手がフニフニとしたものに包まれてあたたかかった。 底を知らないまま、一筋の光がさしてきた。しかしそれは大きくて、知らない

    • フラフラ

       大学を卒業して4月になったのに、なにもせずに1週間がすぎた。何もしていないとお金は減っていくばかりで、暇な時間をどうにか減らすために、これまた何もしていない恋人と過ごすために片道1時間半かけて会いに行っている。この前はお昼すぎに起きて、コンビニでタバコとジュースを買ってから手を繋いで土手まで散歩した。騒がしく帰る小学生を避けていたら、なんだか世間に後ろめたい気持ちになった。散歩は気持ちよくてそのまま二駅分歩いたし途中でアイスも買った。 そうやってゆるやかにたっぷり過ごして

      • ポカポカ

        気持ちの良いもの いびきを描きながら電車で寝ている人 地下を抜け出して地上に出てきた電車の、 窓に入り込む昼下がりのひかり 君の腕の中 太陽を浴びたバスタオル 桜がひらひら舞う公園 電線のない空 寝る前にココアをのむためにお湯をいれるとき その熱々のココアが入ったコップを二つ持ってテーブルに来ること お散歩の途中でチャック付きのクッキーを買うこと チャック付きのお菓子をカバンに入れておくこと 動物園で居眠りしている動物 まばたき それから大きなあくび

        • カサカサ

           冬が終わって春になろうとしているのに、私の手はカサカサになってきた。 手がカサカサになると思い出すのは小学生のころのこと。 手がカサカサで、クリームを塗ってもカサカサで、もしかしたら病気なんじゃないかと思うまで、太刀打ちできないほどずっとカサカサしている白い手だった。いろんなクリームを試しているうちに母も私も狂ってしまって、この白いカサカサは手についている汚れだからしっかり洗えばとれるのではないかと考え始めた。 夕食の後に、明日の学校に備えての母と私の格闘が始まる。ぬる