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おぞましくていとおしい
ただの暮らしをやり仰せてきただけなのに、不意に叶ってしまう願いがいくつもあった。待って、いかないで、と叫び出したい喉が、きゅうっと締め上げられて、その息苦しさは胸に落ちて、呼吸を少しだけ乱し、凝固して小さな石となって、胃の底に沈む。
彼の歌声が聞きたいと思ったこと。
私の誕生日にハッピーバースデーのあれを歌ってくれたのを、うっかり聞いてしまった。きょうは彼の車の中で『木綿のハンカチーフ』がかかっ
私はいつだって彼の特別な恋人になりたい
今年のはじめに彼と過ごした東京、もっと言うと銀座のあのあたり。昔あのへんで働いていたことのある彼にとっては、上京自体はぜんぜん特別な思い出にはならないだろうし、人妻を連れた不埒な旅行──それ以外のタグが付されることはないのだと思っていた。
しかしながら彼が折に触れて、同じ宇宙を見たコーヒーやケーキに、見下ろした街並みに想いを馳せたりするので、あの1泊2日は、どうにも忘れっぽい彼の心の底にもきちんと
それはまるでカヌレのような
前の恋人に「菓子で喩えるならカヌレ」と言われたことがあって、私自身はカヌレがけっこう好きな方で、かといって色々なところのものを取り寄せて食べてみる……といった情熱はなく、ふらりと立ち寄った洋菓子店で、あのころっ・むちっとしたやつを見ると、頭の中で一瞬「ものすごカロリー高いんだったなこれ」、と思いながら、いくつください、と言う、そのくらいのものである。
会社なんかで焼き菓子が配られることがあると、
私に接続する前の彼が「振り向いてほしくて、君を想って【あの女】を書いた」というのは、接続後の私の気を引くためについた嘘かもしれないというのは分かっていて、分かっているけど、そういうウソだって唱え続ければ真実になる呪いのようなもんで、死ぬまであの痛みを覚えるつど、私を思い出せばいい
3月2日、必要火急の不倫セックス
予定の電車までは30分以上待ち時間があったから、ドトールでアイスコーヒーを注文した。
「おれたちの中間地点はここかな」──愛知県外の過疎駅を示して、彼。きのうスクリーンショットで寄越した待ち合わせ場所の天気予報は晴れ、気温は13度。私の体はまだ名古屋にあるけれど、顔半分を覆い隠したマスクのおかげで体感温度は高くて、これから数十分を電車に揺られて過ごすのだから、あんまり化粧が浮かないように、と思っ
1月31日、セックスがわからない
彼が特に大きいとか、私がきついとか、肌が吸い合うとか、おそらくそういうわけでもないのに、何でこんなに良いのだろう。
あれをしよう、こんな風にしてほしいとか持ち寄るのに、キスをしたとたんにぜんぶを忘却してしまう。切なくて「いれて」と叫ぶと、彼もまた切なげに私の願いを叶えてしまって、あとはただひたすら、この甘美な激流に呑みこまれるしかない。
彼は女を悦ばせるありとあらゆる方法を知っているのに、私は
きれいな男の使いみち
圧倒的な「男」の美しさに触れた翌日は、私の手の届かない仙界に彼が帰ったことが悲しく、朝寝をする子供の横で、なんでまたあんなに輝かしい命を愛してしまったのかとさめざめと泣いた。絶対的なミューズを得た詩人はこんな気持ちだったのかと知った。あの美しさをあらわすのに私の辞書では不十分で、もどかしくて胸がつかえる。
男のデザインが欲しい。
これはいささか傲慢な言い分になるけれど、私に愛された男は、出産以
インターネットセックスにまつわるツイートまとめ
インターネットで「なみ」として知り合った男性と、セックスの可能性を最大限に考慮に入れたうえで、オフラインで会うことになった。これは対面を待つ少し前の胸の高鳴りと、胃の不快感。
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「名古屋はこちらに比べてまだ過ごしやすいみたいだから、前に写真を送ったジャケットを着ていくよ」と言っていたのに、ぜんぜん違うやつを着てきた。「話が違うじゃん」と泣きそうになる。
たしかに男前で、そのふるまいも「
男が少し前の詩を紐解いて「これはきみを想って書いた」と言い出したので卒倒してしまった。この女になりたかったのに、と抗議したら「君に振り向いて欲しくて」とはにかんだので、今度こそ絶命してしまった