犬も猫もカワイイが、ずいぶん違いがあるものだということを考えてみた

野良猫はいるけど野良犬はいない。猫の雑種はよくみるけど、犬の雑種を見かける機会はとんと減った。なぜか。

野良犬がいないのは、昭和25年に制定された「狂犬病予防法」の影響がなんといっても大きいのだろう。狂犬病は、感染したら100%死に至る恐ろしい病である。


そういえば今年、狂犬病が久しぶりにニュースになった。

戦後の混乱期に野良犬が増えて狂犬病が大流行、昭和25年に法制定、その後7年かけて制圧したという。これだけでもすごいドラマだ。

狂犬病の問題があるから、犬を飼う時には保健所に届け出て、毎年予防接種を打たなくてはならない。実家でも犬を飼っているときは必ず毎年新しい「犬」(予防接種済み)のシールが玄関に貼りつけてあった。※今はシールではないのかしらん。

飼い主のいない犬=野良犬はいてはいけないことになっている。だから、確かに、野良犬を見かけることはまずない。


でも、野良犬が減ったから雑種犬が減ったとは、簡単に結びつけられない。野良犬は私が子どもの頃からほとんど見かけなかったが、それでも当時は雑種を飼っている家の方が圧倒的に多かった。

雑種ではなく、積極的にブランド犬=純系種が飼われるようになってきたのだ。犬が、近所の知り合いからではなく、ペットショップで買って来るものになった理由が別にあるのではないか。


日本ペットフード協会というところが毎年犬猫の実態調査をしている。データがおもしろくて小一時間眺めてしまった。

いちばん新しい令和元年(2019年)のデータを見てみる。飼育されている種別について。

犬は、純血種が88.1%、雑種が11.9%とのこと。雑種が少なくなったという印象は間違いではなかったが、ここまでとは思わなかった。

一方、猫は純血種が18.8%で、雑種が81.2%と、犬とは真逆である。これも想像以上で驚いた。

では、飼育されている犬や猫の入手先はどうか。ペットフード協会では情報を見つけられなかったので(※あとで見つけました。結論は大きく変わらないのでお許しを)、東京都福祉保健局が公開している「東京都における犬及び猫の飼育実態調査の概要」で確認する。直近はH29年度である。

犬の入手方法は、「ペットショップ」が64.2%で圧倒的に多かった。次いで「知人から貰った」が13.9%、行政およびボランティア団体から「譲渡」があわせて7%。「拾った」はわずか0.9%に過ぎない。

一方、猫は「拾った」が36.2%で最も多く、「いつのまにか居ついた」が9.3%、あわせて45.5%が出生不明である。「知人から貰った」が15.6%、行政やボランティア団体から「譲渡」があわせて12.9%で、これらも犬より多い傾向。そして「ペットショップ」は11.0%に過ぎない。

入手先は過去の調査とも比較されている。犬の入手先はペットショップが常に50%以上を占め、「知人から」は減ってきているようだ(H18:22.6%→ H23:22.5% →13.9%)。

猫は「知人から」が年々減少している(H18:28.7%→H23:22.4% →  15.6%)のは同じだが、「拾った」が年々増加しているのは興味深い(H18:24.1% →H23:33.8% →36.2%)。

データを見ると明らかだなぁ。犬と猫でこんなに違うのか。


東京都福祉保健局の調査では、犬も猫も一般の飼育下ではほとんど繁殖していない事が示されている。ということは、ペットショップ経由が主である犬は、ほぼ人工的な管理下で繁殖しているといえる。一方猫は、自然状態で繁殖している方が多いのだろう。でなければ出生不明の「拾った」や「居ついた」が多いことを説明できない。


日本では、野良犬の存在は許されず、飼育下で繁殖している。家畜化が進んでいると言って語弊はあるまい。

人に懐いていない犬は攻撃的で怖い。「番犬」の用途があるとおり、仲間と敵の区別がしっかりしているのが犬だ。現代では、防犯ベルやカメラが普及し、番犬は必要ない。犬の役割が愛玩や友人であるなら、扱いやすく手なずけられた種の方が優れているのだろう。犬の側からみれば、これは人間と共生するための適応かもしれない。

また、犬は猫よりも身体の大きさ、色、姿形などの変化が大きそうだ。分化した特徴のある「犬種」として純血を維持しようとした、人の働きかけも大きいように思われる。


猫も昔から人の近くに暮らしているが、ネズミを自主的に捕るくらいで、役畜(働く動物)の役割が与えられるということは聞いたことがない。もしかしたら、人と猫の関係は昔も今もほとんど変わっていないのかもしれない。なぜか。

猫は「最初から完璧だから」といった人がいた。そうかもしれない。人間の生活に寄り添って生きる随伴動物として、何も変わる必要がなかった。その関係が、おそらく、かなり昔の時点から完成されていたのだ。

岩合光昭さんがテレビで「猫には野性が残っている」という意味のことを語っていたが、たぶんそのとおり、変わっていないのだ。猫は最初から完璧だから。


そういえば、犬の入手先がペットショップ主体である理由として、テレビやマンガの影響も見逃せないだろう。

「名犬ラッシー」が流行ったらコリー犬、「動物のお医者さん」が流行ったらシベリアンハスキー、忠犬ハチ公がハリウッドで映画化されたら秋田犬。なんだか日本人の品種好き、ブランド好きの特性が存分に発揮されている気がする。このへんは別に考察が必要だ。

猫も純血種が主役の人気ドラマでも出てくれば、状況は変わるのかな。変わる必要はないか、完璧だから。


ん? 何の話してたんだっけね。


犬と猫といえば、『犬も猫もどっちも飼っていると楽しい』というマンガがたいへんおもしろい。

間違いない。