半世紀坊ちゃん

明治から戦前に書かれた文豪たちの名作と呼ばれるものをほとんど読まないまま半世紀生きて来た。

そのこと自体に別に後悔はなく、学生時代に読んでおけばという思いはない。読みたくなったときが読みどきですから。

だけど、読んでいないことになんとなく後ろめたさのようなものはあったた。そして、この年になって少しずつ読み始めている。

まぁ、文筆を生業として生きているならともかく、いつ読んでも良いものだと思う。と言っておこう。


で、今年に入って、夏目漱石『吾輩は猫である』『坊ちゃん』など、ほかにも森鴎外、菊池寛などを読み進めている。それぞれ時代を感じはするが、えがかれているテーマは古くささを感じず、表現にすごみを感じる。

そして、今書かれているたくさんの文章の中に、そのエッセンスが受け継がれていることも強く感じる。ここですでにこういう表現が使われていたんだと。

ああ、あの小説のモチーフはここから拝借したのか、とか、あの台詞はこれを知っているとよりニヤッとできるのか、とか。また、これが書かれた時代にすでに問題があぶり出されており、人という者はいつになっても変わらないのかと思わされたり。

あと、やはり夏目漱石や森鴎外の名前や言葉が直接出てくる読み物も数多くあり、その部分の理解度がより深くなる。

やっぱり、読んでおいた方が文芸をより楽しめることは、間違いないのだな。


この年になって読んだから覚える感情というのも、多いのだろうと思う。たぶん、若いうちに読んでいれば別の感じ方をしていたに違いない。

若い人に「ここから読め」という人の気持ちは、わかる気がする。


「古典」「名作」と呼ばれながら、読んでいないもの、たくさんある。恥ずかしがらずに読んでいこう。