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一本の線の上にいるような/『トラクターの世界史』

今の自分が立っている場所、やっている仕事にどんな歴史があるのか、自分がいたその後にどうなっていくのか、そういうことをじっくり考えてみるのもいいと思った。

藤原辰史著『トラクタ-の世界史』

いまや、農業従事者でトラクターを使わない人はほとんどいないと言って良い。トラクターは農業・農村の風景を一変させてきた。その記録や歴史を、世界的な規模で丁寧に記述している。

当たり前だと思っている世界が、ほんの50年、100年前には全く違っていたのである。人間ひとりでできる事業・技術は一部でも、たくさんの苦労・努力が重ねられて、今の技術ができあがっている。しかし、その技術の当初からの根本課題は、実は今も残されていたりする。

戦争や東西対立といった歴史的な出来事とも、農業技術史は密接に関係している。食糧生産は生きることに直結しているから。不自由なく食糧が行き渡るようになったのは、それほど昔のことではない。トラクターの歴史はそのことをはっきりと教えてくれる。

過去の歴史を知ることで自分の立っている場所を確認し、その上で、将来になにを残していくのか。いまの世の中だって、歴史に残るごく一部の人だけで成立したものではない。圧倒的に大多数の名もなき人が、生きて、関わって、貢献して、作り上げられたものだ。

大それたことを考えなくても、誠実に生きていることが、たぶん歴史の隅っこの一部になっていくんだろう。

先にどうなっていくかの予測は難しいけど、過去から未来に連綿と続く時系列の一線上にいるような感覚を味わっている。


まじめか。