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Q&A  妊婦さんのビタミンDは大丈夫?

Q
 従業員にビタミンDを取ってもらっていますが、スタッフが妊娠しました。
 妊娠した事によりビタミンを摂る事に不安を抱いております。
 妊婦へのビタミンDの摂取の注意点を教えて頂けませんでしょうか?


A 妊婦さんこそビタミンDが必要です。

 スタッフにビタミンDサプリを提供する経営者さん!素晴らしいですね!

 そんな社長さんばかりになったら、日本はどんなに心も体も明るく元気な人が増えて素晴らしい国になるでしょう!

 妊婦さんの不安について、ご質問ありがとうございます。

 まず何より大切なのは、本人の話を聞いてあげることだと思います。

 注意点というのは妊婦さんでも何も変わりません。
 これまで書いたことをまとめるなら、


1 ビタミンD3のサプリメントを1日5000IUが目安(4000IUがいいなら週6日にすればよい)


2 味噌汁と一緒に飲む。(乳酸菌、マグネシウム、海藻類にビタミンKを含む)

3 活性型ビタミンD製剤、カルシウムサプリメントは使用しない。
 です。


 ただ、知りたいのはそういうことではないでしょう。
 
 その妊婦さんは何を心配されているのでしょうか?


ビタミンD過剰を恐れているのか?
サプリメントの信頼性に疑問があるのか?
ビタミンDを摂る意味がわからないのか?


 そしてよくお話を聞いてあげた上で、私なら以下のような説明をします。


 それでもその心配が解消されないならば、サプリメントを飲ませるのはやめた方がいいでしょう。
 気が進まないサプリメントを飲まされるのはストレスでしかありません。
(嫌々ながらビタミンDサプリメントを飲まされている人がいると思うと私も辛いです。家族に飲ませたいなら黙って味噌汁に混ぜましょう。食品ですから問題ありません)


 サプリメントはどうしても必要なものではありません。
 飲みたくない人にはなるべく日を浴び、魚やきのこを食べるように勧める方が良いと思います。


(長いと思う人は3だけ読んでください)


1 ビタミンD過剰症を心配している場合


 ビタミンAは過剰に気をつける必要がありますが(肝油ドロップは1日2個まで)、ビタミンDは過剰症に神経質になる必要はありません。

 それでももしビタミンD過剰を心配されているなら、実際に病院(産科でもよい)でビタミンDとカルシウムの血中濃度を測ってもらうのが一番でしょう。
 コロナのおかげで最近はだいぶビタミンDの認知度が上がり、測ってくれる医師も増えてきたようです。
 保険適応となるかどうかは医療機関・自治体によると思います。
(注:『25(OH)ビタミンD』(読み方:にじゅうごヒドロキシビタミンD )を測る。『1,25(OH)2ビタミンD』(読み方:いちにじゅうご「ジ」ヒドロキシビタミンD)ではない。)
 
 「基準値」にも注意が必要です。


 日本人のほとんどが
 不足 30ng/ml(=75nmol/L)未満

 あるいは


 欠乏 20ng/ml(50nmol/L)=未満

 ですが、「基準値」とは95%の人が入る範囲なので、みなが低いと基準値自体が下げられている場合があるからです。


 ビタミンD過剰の目安は


 150 ng/mL(=375 nmol/L)以上

 です。(参考2)
 こちらも皆が低いと「基準値」が下げられて、ちょうどいいのに「過剰です」と言われることがあります。


 日本では、50ng/ml(=125nmol/L)以上で過剰とする基準値が用いられる場合もありますが、「60ng/ml(=150nmol/L)以上では有害な影響をもたらす可能性がある」(参考3)とされているだけで、実際にそのレベルで有害な反応が出た報告はありません。


 カルシウムの血中濃度を一緒に測ってもらうことも重要です。
 ビタミンD過剰症と言われる吐き気や脱力感などの症状や腎障害などは、実はビタミンD自体の過剰ではなく高カルシウム血症によるものです。
 ビタミンDの血中濃度が高くても、カルシウムの血中濃度が上がっていなければおそらく何の症状もないでしょう。 
 高カルシウム血症は、活性型ビタミンD製剤の使用、カルシウムサプリメントの併用などが原因であり、1日5000IUのビタミンDサプリメントだけで起こった報告は一例もありません。
 もともと高カルシウム血症のリスクとなる副甲状腺機能亢進症やホルモン産生腫瘍などのまれな病気がある人以外は、心配いりません。
 万が一、高カルシウム血症になっていたなら、ビタミンDサプリメントをやめるとともに、別の原因を探す必要があります。


2 サプリメントの信頼性に疑問がある場合


 これは当然の疑問です。
 ビタミンD過剰症の中には、サプリメントが不良品で記載の10倍量が含まれていたというケースがあったそうです。
 サプリメントは人が作っているものであり、ミスやズルの可能性はゼロにできません。
 サプリメントを使う場合は常に、そのサプリメントを飲んでいて実際にどうなのか?時々(1週間単位などで)やめてみて、飲んでいる時と飲んでいない時で心身の調子がどうちがうのかを感じることが大切です。

 飲んでない方が調子いいならサプリメントは有害ですし、何も変わらないならお金の無駄です。
 もちろんクスリではないので劇的な変化はなかなか感じられませんが、それでも必要な栄養素を補った時には、なんとなくでもいい感じがあるものです。
 鼻水がでにくいとか、クヨクヨしにくいとか、お肌のつやがいいとか、お通じが立派だとか。
 そうした変化が感じられれば自分からそのサプリメントを続けたくなるもので、そうでないならやめたくなるのもまた自然なことです。
 例えば、もともと腸内細菌がばっちりで、日焼け止めを塗らずにビーチバレーやライフセーバーをしている若い人は、少なくとも夏の間はビタミンDサプリメントにメリットは感じないでしょう。
 最終判断は本人の感覚で決めるのが一番だと思います。


3 妊婦さんにとってのビタミンDの重要性


 実は、最もビタミンDを必要としていて欠乏すると命に関わるのは、妊婦さんです。
 近年、『周産期うつ』と呼ばれる妊産婦のうつが増加しています。
 出血など他の全ての原因で亡くなる妊婦の2倍も亡くなっており、今の日本で妊娠出産の最大のリスクはうつです(参考4)
 その大きな原因は、鉄分とビタミンDの不足です。
 「うつ」の人は大抵ビタミンDが欠乏していますが、同じ「うつ」と診断された人でも、ビタミンDが比較的高い人ではビタミンDが低い人より自殺率が半分以下に下がります(参考5)
 その他、ビタミンDの欠乏は妊娠高血圧・妊娠糖尿病・不育症・子癇・早産・低出生体重児などの妊娠合併症などのリスクを上げるという報告もあります。(参考6参考6-2


 逆に言えば、ビタミンDを補うことでそうした妊娠合併症のリスクを大きく下げられる可能性があるのです。
 さらにお母さんがビタミンDを摂ることで最も救われるのは、おなかの赤ちゃんです。
 赤ちゃんは、あらゆる栄養素をお母さんからもらっています。ビタミンDも例外ではありません。
 ビタミンDはあらゆる細胞の分化と機能発現に必要なビタミンであり、生きる力の源となるホルモンです。盛んに細胞分裂している赤ちゃんには特に重要です。
 妊娠中の母親のビタミンD欠乏は、子どもの出生後の自閉症、発達障害、言葉の発達の遅れ、将来の精神病にも大きなリスクになることがわかってきています。(参考7)(参考7−2


 日本で発達障害などが急増し大きな問題となったのは2000年代以降。1990年代から美白ブームが始まりました。多くの女性が日光を避け日焼け止め入りの化粧品が普及し、日光を浴びなくなった女性たちが母親になってからそうした病気が増えたのです。

 こんなに母子ともに色んな病気のリスクを減らせるなら、ビタミンDを摂らないのはもったいないと思いませんか?
 ビタミンDを摂るのと摂らないのと、どっちが心配で、どっちが安心でしょうか?
 ビタミンDを摂っても大丈夫?ではなく、摂らなくても大丈夫?
 と問うべきでしょう。
 もし私に力があれば(権力でも財力でも)、全ての妊婦さんのビタミンDとフェリチンを測定し、不足している人にはサプリメントを提供します。(本当は全国民にしたいけど)
 …とあまり熱を入れるとゴリ押しな感じになりかねないので…、あくまでもサラッといきたいですね。
 とにかく、本人の気持ちが一番ですから^^

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