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【イスラエルへの正面批判を拒否】またもや、サンダース、お前もか!

編集部 脇浜義明

 以前、日本の左派に人気がある米国民主党のバーニー・サンダース元大統領候補は、国内政治では進歩派だが、パレスチナ・イスラエル問題ではイスラエル・ロビーと同じく反動的だ、と書いたことがある。
 サンダースはBDS運動に反対し、一国解決案を「イスラエル国の生存権の否定になる」として反対し、イスラエルが国連で除け者扱いされているとして、国際社会を非難する親イスラエル・ロビーの文書に署名した。
 そして、現在のハマスの「アル・アクサ洪水」レジスタンス(抵抗運動)についてもサンダースは、「ハマスはイスラエルを破壊しようとしている。ハマスを壊滅すべきだ」とCNNのインタビューの中で言った。司会者の人道的停戦に関する質問にも、「停戦に反対する」と答えた。
 サンダースはユダヤ人であるが、ユダヤ人だから親イスラエル、というわけではない。米国の、とりわけ若いユダヤ人には反イスラエルが多い。イスラエルの戦争犯罪的なガザ攻撃に抗議するデモ隊の中にはユダヤ人が多い。私がよく翻訳する『アナリシス・ニュース』のポール・ジェイや、哲学者のノーム・チョムスキーもユダヤ人で、パレスチナ人の闘いを支持している。
 CNNのインタビューで、サンダースの発言に「はらわたが煮えくり返る」思いで反論をSNSにポストした政治学者のノーマン・フィンケルスタインも、ナチの強制収容所の生存者を両親に持つユダヤ人である。彼はホロコーストの研究者で、イスラエルのガザへの仕打ちを「ホロコースト相当」と非難している。
 サンダースの姿勢は、米国のリベラルや左派など「進歩派」の限界を象徴するものであろう。米国の進歩派に関しては、「パレスチナ以外で進歩派」という言葉がある。イスラエルの犯罪に援助金を与えて支援するバイデンは、トランプと比べて、一応「進歩派」に部類分けされるが、パレスチナに関してはトランプとまったく同じである。

ガザ紛争で両極化する世界

 サンダースは自分の親イスラエル姿勢を「イスラエルの生存権」という言葉で正当化する。イスラエルは、例えば日本国に「生存権を認めよ」と要求したことはない。イスラエルが「生存権」、ユダヤ国としての「生存権」を主張する対象はパレスチナ人に対してである。
 内実的には、「生存権」が意味しているのはパレスチナ人の追放、虐殺、民族浄化である。歴史的経過や現実のイスラエルの行動を見れば、サンダースほどの知的な観察ができる人間ならば分かりそうなものだが、サンダースや富める国の左派や進歩派には、そういう内実が見えないのであろう。
 ガザ紛争に関しては、イスラエルを支持する西側諸国(日本も含む)と、世界人口の多数派であるグローバル南とが両極分解している。ウクライナ戦争でもそれが見られるが、この両極分解はますます拡大・深化するであろう。いわゆる「先進国」の左派の姿勢が問われる時代になりつつある。

【編集部注】米国では十万人規模のデモや議会占拠が続く。サンダースには、彼の300人以上の元スタッフが休戦決議案の上院提出を促したが、彼は拒否して援助物資を送るための「人道的停止」だけを求めた(後のバイデンと同じ)。だが民衆からの民主党への圧力は強まっている。

ワシントンの反戦デモ

(人民新聞 23年12月5日号掲載)

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