シリア内乱の経緯

ベン・ノートン
 Resistance Report, 2024年12月7日

 米国はアルカイダやISISと繋がった反乱グループへの武器許与と訓練に数十億ドルを使った。2012年、国家安全保障担当顧問のジェイク・サリバンは「AQ(アルカイダ)はシリアでは我々の陣営だ」と言った。
 2024年11月後半、反乱軍はNATO加盟国トルコの支援受けた作戦で、アレッポを制圧した。アレッポとイドリブを支配するアルカイダ関係の反乱グループは、我々は「イスラエルが好きで」シリアに親西側政権を樹立すると,イスラエル・メディアに語った。イスラエルは、アサド政権を転覆しようとするアルカイダを含む過激反乱グループに武器やその他の援助をしてきた。アサド政権はイスラエルを認めず、抵抗勢力を軍事支援してきたからである。
 西側メディアはアレッポを制圧したサラフィー派聖戦主義者を「穏健派」反乱軍と表現するが、彼らを指導するのは改名したアルカイダである。ハイアト・タハリール・アル・シャム(HTS)といって、その前身はシリア・アルカイダのヌスラ戦線である。HTSは、西側の「穏健派」イメージ戦略を受けて、表向きはアルカイダと距離を置いた。ワシントンのネオコン・シンクタンクはHTS指導者を「多様性フレンドリーなジハーディスト」と上塗りしたが、本質的には残忍なファシストである。このようなメディアなどの誤魔化しにも関わらず、2018年米政府はHTSを、前身のヌスラ戦線と同じく、テロ組織と指定した。テロ組織と規定したにも関わらず、米とその同盟諸国のイスラエル、トルコ、湾岸君諸国は武器と資金の支援をやめなかった。
 HTSはイドリブに事実上の政府を樹立し、トルコの支援で鉄拳支配を行っていた。イドリブを拠点にHTSやアルカイダ民兵やISISグループなど雑多な反乱軍は11月アレッポを攻略した。AFPは「トルコ諜報機関と繋がった反乱グループがトルコからゴーサインを得た」と語ったと伝えた。

 シリア・アルカイダと西側の繋がりは、ジェイク・サリバン自身が認めている。オバマ政権時代にヒラリークリントン国務長官の主席補佐官だったサリバンがクリントンに送ったEメールが、ウィキリークスによってリークされた。それは「シリアではAQは我々の側である」というもの。
 2011年、アラブの春の一環として、アサドの独裁政治への抗議運動が起きたとき、米国は機に乗じてシリアの反乱グループに武器提供を始めた。CIAはアサド転覆のために武装グループに兵器と訓練を提供する極秘作戦を行った。2015年のワシントン・ポストの記事によると、この極秘作戦予算は年間10億ドルで, これはCIAの予算全体の15分の1がシリア関係に使われたことを意味する。ティンバー・シカモアー作戦と呼ばれたCIA作戦は、ニューヨーク・タイムズのよると、「1980年代のアフガニスタンのムジャヒディーンに軍事援助したサイクロン作戦以来、最も金のかかる反乱支援・助長・訓練計画」であった。サイクロン作戦がアルカイダとタリバンを育成したように、ティンバー・シカモア作戦はアルカイダとISISの成長を促した。
 アムネスティ・インターナショナルはISISの虐殺者たちが米兵器を使用して殺戮を繰り返していると報告した。EUが資金を出す英国の紛争兵器研究所も、米とサウジアラビアなどがシリア反乱グループに供給した兵器の多くがISISにわたっていると言った。
 米政府はシリア・アルカイダやISISを支援する意図はないと言っているが、政府内文書は米政府が彼らを援助・強化していることを示している。2012年国防情報局(DIA)の覚書は「サラフィー派、ムスリム同胞団、AQIがシリア内乱の主役である」と述べている。AQIはイラク・アルカイダで、後にISISとなった。DIAは「AQIは最初からシリア内乱を支援してきた味方」という報告書を国務省、統合参謀本部、国土安全保障省、FBI、クリントン国務長官、レオン・バネッタ国防長官に送った。DIA報告書は「西側、湾岸諸国、トルコが反乱軍を支援、ロシア、中国、イランがアサド政権を支援」と書いていた。DIAはシリア東部にサラフィー派宗教公国が樹立され、アサドを孤立させるものと考えていたようである。実際、シリア東部はISIS支配地となった。

 イスラエルもシリア・アルカイダ関連の反乱軍を支援している。2019年、ガディ・エイゼンコット幕僚長はイスラエルがシリア反乱軍に兵器を供与したことを認めた。2015年、『タイムズ・オブ・イスラエル』は「イスラエルは内戦で負傷したヌスラ戦線やアルカイダの戦士に治療を施すためにシリアとの国境を開いた」と報道した。『ウォールストリート・ジャーナル』はアルカイダを「小さな必要悪」と呼んで、イスラエルの元軍諜報機関の長アモス・ヤドリンの「ヒズボラやイランのようなシーア派イスラム民族主義政治勢力がイスラエルの敵で、過激なスンニ派イスラム主義はイスラエルの敵ではない」という発言を紹介した。ヤドリンは「アルカイダはイスラエルに迷惑をかけたことはなく、それどころかイスラエルの敵と戦ってくれる」と言った。
 NATOと協力するイスラエルのシンクタンクは、2016年に、西側はISISを潰すべきではない、ISISは「役に立つツール」で、イスラエル国存続にとって戦略的に必要である、と述べた。
 2017年、イスラエルが不法占領しているゴラン高原をISISが誤って攻撃した事件があったが、ISISはすぐに謝罪したと、当時のモシェ・ヤアロン国防相が語った。ISISやその他のシリア反乱軍指導者は、イスラエル・メディアの『カン』の取材に、「我々はイスラエルに共感している。敵ではない」と語った。

 

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