キャリアコンサルタント資格勉強〜Vol.11「キャリアカウンセリングにおける代表的理論その2」
キャリアカウンセリングにおける代表的理論その2ということで、今回はこんな方々を取り上げました。ついに存命中の方が増えてきた!
1.ジョン・クルンボルツ
2.ハリィ・ジェラット
3.エドガー・シャイン
4.ナンシィ・シュロスバーグ
1.ジョン・クルンボルツ
■理論的背景
バンデューラの社会的学習理論をもとにし、キャリア意思決定における社会的学習理論として理論化された。
人は学習し続けるものだと強調した。
直接経験による学習、モデリングによる学習、自己効力感をベースにキャリアカウンセリングへ応用した。
自己効力感とは、自分がその行動をうまくできるかどうかの効力予期としている。また4つの影響要因により形成されるとしている。
1.遂行行動の達成(成功体験)
2.代理経験(モデリング経験)
3.言語的説得(「大丈夫、君ならやれるよ」と言ってもらう)
4.情動喚起(以前の体験に基づく感情変化)
■主な概念
1.遺伝的特性、特別な能力
2.環境的状況、環境的出来事
4.学習経験
4.課題出勤スキル
1.ふたつの信念
キャリア意思決定における社会的学習理論では、自分に関する信念と仕事に関する信念の2つの信念が存在すると考えられている。
・自分自身に関する信念→自己観察般化
自身のパフォーマンスを評価したり、興味や価値観を査定すること。
・仕事に関する信念→世界感般化
自分を取り巻く環境についての一般化した言語化をするようになること。職業に関するイメージやステレオタイプなどが含まれる。
2.課題接近スキル
まずカウンセラーがこのスキルを身に付け、クライエントに教えていくという考え。
1.重要な状況を認識する
2.課題を現実的に定義する
3.自己観察般化や世界観般化を検証し、正確に査定する
4.広範囲の代替案を作る
5.代替案に関する情報を収集する
6.代替案を絞っていく
3.行動
学習経験やその結果得た信念やスキルを自分のキャリアに生かし行動する。
■キャリアカウンセリングへの応用
キャリアコンサルタントは職業選択だけでなくキャリア問題全般を扱う上での援助においての役割を担う必要がある。
クライエントは特性に基づいた意思決定でなく、自分の能力や興味を広げていく必要がある。また職業を安定したものと捉えず、変化し続けるものとして準備しなくてはならない。
クライエントは診断を下されるのではなく、自身が行動を起こすように勇気づけられる必要がある。
キャリアカウンセリングの目標は変化し続ける仕事環境において、クライエント自身が満足のいく人生を作り出していけるように学習を促進させること。
キャリアカウンセリングの介入方法は2つある。
1.発達的・予防的介入
インターンシップやジョブクラブプログラムなど。キャリア問題に直面しそうなタイミングに教育や予防のプログラムを導入する。
2.治療的介入
認知的介入→目標の明確化、認知再構築、問題ある信念への直面化、認知リハーサル、ナラティブ分析、読書療法など
行動的介入→ロールプレイング、脱感作など
最新の研究結果として、ビジネス界の成功者にインタビューをした結果成功には計画された偶発性が存在するとわかった。
大きなポイントとして「未来は予測や計画通りに進まないもの」とし、計画に予期せぬ出来事が存在することを盛り込んでおく。
発生した時せぬ出来事を積極的に活用し取り入れることが大事。
そのことを行えるために必要な5つの要素が存在する。
1.好奇心、2.持続性、3.楽観性、4.柔軟性、5.冒険心(リスクテイキング)
2.ハリィ・ジェラット
■理論的背景
ジェラットによるキャリア発達における意思決定アプローチは経済学や数学における意思決定の研究の成果をもとにしている。またジェラットの前期理論とジェラットの光景理論に分かれる。
意思決定の3つのステージ
1.予測システム、2.価値(評価)システム、3.決定基準
主観的可能性
キャリア決定は自分の興味に関連しているからこそ望ましいものに思えてくると言う主観的可能性が採用されやすいことを示唆した。
主観的可能性による誤った判断や不合理な判断を避けるため、客観的なデータ収集を押し検討、データの有効性を実証的に決定できるガイダンスが必要である。
連続的意思決定プロセス
スムーズに探索的決定から最終決定と意思決定が進行するプロセスとして「連続的に決定プロセス」を提唱した。
探索的決定と最終的決定
キャリアにおける意思決定を2つに分類
最終決定とは個人のキャリアを確定する際の決定、探索的決定とはそれまでに行う決定。
探索的決定において「やってみよう」と言う考えのもと目標達成への行動を行う。行動結果を検討し最も良かったものを最終決定として採用する。
ジェラートの後期理論
後期理論の社会的背景
変化の激しい労働市場、変化が多く予測していたことも通用しない不確実な変化の多い一貫性が保たれない時代。情報が個人が職業生活を全うするまで真実であるとは限らなくなる。
本人の興味や価値観→様々な経験を積むうちに変化する可能性がある。
積極的不確実性
積極的不確実性(不確実な時代における非合理も受け入れるべき)と言う意思決定の理論も提唱。
・主観的可能性(情報は限られており、変化し、主観的に認知されたものである)
・探索的決定(意思決定は目標に近付くと同時に、目標を創造する過程でもある)
■キャリアカウンセリングへの応用
左脳だけでなく右脳も使う意思決定を行う。
簡単に言うと「夢見ることを忘れずに」と言うメッセージが含まれている考え方。
未来の予測が不可能な現代においては夢やビジョンを持つことこそが、その不確実性を歓迎して未来を創造する源泉となると言う考え方。
3.エドガー・シャイン
■理論的背景
代表的な著書「キャリア・ダイナミクス」では「キャリアとは生涯を通しての人間の生き方、表現である」と訳されている。
1.発達的視点
「組織と人の相互作用」が重視され、組織も個人も成長し続ける存在であると言う発達的視点に根ざしたもの。
2.臨床的視点人生全体を生きる存在ならば仕事生活を考える際にも仕事以外の領域で個人の状況を考えなければならないと言う視点。
■主な概念
3つのサイクルとその段階
1.人が生きている領域を大きく3つの領域に分けた。「生物学的、社会的」「家族関係」「仕事、キャリア」
2.3つのサイクルが相互に影響しあい、人が存在していることを示す。
3.何かに課題や問題を感じていたとしても、独立して考えたり検討することが難しく、影響しあう部分が大きい。
4.事故、仕事、家庭の複合体としての個人を把握するモデル
「生物学的、社会的」「家族関係」「仕事、キャリア」は重なり合う。その重なりを無視してはキャリア発達は考えられない。
キャリアには「内的キャリア」と「外的キャリア」があり2軸からとらえることができる。
外的キャリアを表すものとして組織の3次元モデル(キャリアコーン)を提唱する。垂直方向を「階層(職位)」、水平を「横断的キャリア成長(食堂)」、中心に向かうのを部内者化といい組織の核に向かうことを表現した。
「内的キャリア」は個人がキャリアにおいて主観的に受け取るもの。
キャリアアンカーとは独自のキャリア、職業における自己概念やセルフイメージをパターン化したもの。アンカーとは錨を意味しており、船をつなぎとめ安定させるためにあるように、個人のキャリアを安定させる軸になるもの。
キャリアアンカーの活用にあたってアンカーと職業を一対1で結びつけない。アンカーを予測しようとしない。(アンカーは実際の職務経験により展開していくものである)
■キャリアカウンセリングへの応用
キャリアコンサルティングは、個人が自分のアンカーを認識し、自分の欲求を満たす機会を組織内に探すことを援助することもある。また、転職役割プランニングに基づき、組織における個人やその他のメンバーの役割を理解するのに役立つ。
キャリアアンカー
・自分は何が得意か? (才能と能力)
・本当は何をしたいのか? (同期と欲求)
・自分のやっていることに意味や価値を感じられるのか?充実しているか?(意味と価値)という問いへの答え
職務役割プランニング
自分の職務が置かれた状況を、客観的に捉え直すことによって現実的なキャリアを歩むことができる。
4.ナンシィ・シュロスバーグ
■理論的背景
人生やキャリアは転機の連続であるとした。
成人の発達をとらえる4つの視点
1.コンテクチュアル(文脈的)/カルチュアル(文化的)
2.ディベロプメンタル(発達的)
3.ライフスパン(連続した課題)
4.トラディション(転機)
その上で成人発達をとらえる3つのポイント
1.「中年の危機」中年期に誰しもが同じような危機を経験すること。
2.人生の途中で共通して経験する発達的課題や転機がある。
3.個人を取り巻く環境が、成人の発達の決定的要因である。
転機への対処プロセス
1.出来事そのものをどう受け取るか、それにどう対処していくのかが重要である。
2.クライエントが問題に対処する方策としては情動中心の対処と問題中心の対処がある。
■主な概念
トラディションへのアプローチ
転機には次の3種類がある。
1.予期していた転機(出来事)
2.予期していなかった転機(出来事)
3.期待していたものが起こらなかった転機(ノンイベント)
※中でも3のノンイベントが最もストレスが大きい。例えば妊活の失敗であったり出世する話が上がっていたのに出世しなかったなど
ここの役割、人間関係、日常生活、考え方にどの程度影響を与えているかを識別することが必要。
1.個々の役割
人生の役割のうち、何かがなくなる、もしくは大きく変化する。
2.人間関係
大切な人との関係に厚みが出るもしくは薄くなる。
3.日常生活
物事をいつ、どのように行うかが変化する。
4.考え方
自己概念や自分らしさに影響を受ける、変化する。
転機のプロセス
転機は「最初の段階は始まりか終わりである」と言う考え方。
個人が転機のどの位置にいるかを見極めることが重要である。
ジュロスバーグは、転機(トランジション)に焦点を当てている理論をまとめ、トランジション・プロセスの統合モデルを示した。
対処のための資源を活用する
転機のタイプ、転機のプロセスに関係なく、4つのS(シュロスバーグの4S)が個人の天気を乗り越える能力に影響を与えている。
1.Situation(状況)転機がもたらしている状況を評価する。
2.Self(自己)自己の特性や価値観を評価(理解する。
3.Support(周囲の援助)考えられる資源と支援
4.Strategies(戦略)状況、事故、支援など多面的に転機を乗り越えていく方法を具体的に検討する。
転機に対処する
資源を強化すること。新しい戦略を立て、転機をどのように扱い、向き合っていくのかの方法をコントロールし、自身の資源の4Sを強化していく。
■キャリアカウンセリングへの応用
カウンセリングプロセスをモデル化
1.第一段階 ラポール形成(信頼関係構築)
2.第二段階 アセスメント、質問
3.第三段階 ゴールの設定、キャリアビジョン設定
4.第四段階 カウンセラーの介入
5.五段階 終結、フォローアップ
■学びや考察、感想
キャリア意思決定を支援していくにあたって人の特性理解はもちろん近年に向かって構築されてきている各理論の理解が求められる。
一方でクランボルツさんが言うように計画された偶発性と言うものが非常に大切である。
計画は未来は予測通り計画通りに進まない、これをチャンスと捉えることができるか。
またキャリア意思決定において必要な6つのスキル、「重要な状況を認識する、課題を現実的に定義する、自己観察般化や世界観般化を検証し正確に査定する、広範囲の代替案を作る、代替案に関する情報を収集する、代替案を絞っていく」をカウンセラーが身に付けている事がマストであるという主張には完全に合意する。
自分ができもしないことを人に伝えることなどできるわけがないのでキャリアコンサルタントを目指す上でもこういったスキル習得、修練は並行して必要になってくるのだと感じた。
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