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エジプト文化研究会:インタビューサークル、サークルインタビューvol.15

人物研究会が行なっているサークルインタビュー。再開後二回目の今回はエジプト文化研究会さんです。エジプト何それ美味しいの?大丈夫!これからみんなで好きになってこうぜyeah!

談○エジプト文化研究会 幹事長  法島さん
            副幹事長 中島さん

取材○人物研究会(坂田、楠城)
構成○人物研究会(坂田)


『「エジプト文化」なんて名乗っているのはうちだけなんです』

―サークルの基本情報等を教えていただけますか
法島:はい。今の時点でサークルの全体の人数としては68人[i]。早稲田の歴史系サークルの中では一番多いです。活動に関してはオンライン勉強会をしています。普段は各自が興味のある事を発表するフリーテーマ勉強会、会員の好きなテーマ、それこそ古代エジプトとか中東・イスラームとかに関係するようなことや、あまり関係がなくても各自が興味のある事を発表しています。加えてエジプト先史時代から現代エジプトの政治や経済まで取り扱うようなエジプト通史勉強会というのをやっています。週に1~2回、長期休暇も含めて1年中活動しています。あと最近はできていないんですけど、みんなでエジプト料理を食べに行ったり、博物館に行ったりみたいなことをやっています。

―所属されている方の学部の内訳はどうなっていますか?
法島:文学部とか文化構想学部とか、半分くらいが文キャンの方です。少数ながら理工や所キャンの方もいらっしゃいますし、結構色々な学部から集まっています。ただ特にどういう人が多いかとなったら、やはり文学部の考古学コースの方や中東・イスラーム研究コースの方です。僕は3年生なんですけど、2年生の中イス(中東・イスラーム研究コース)は半分がエジ研員ですし、アラビア語のクラスで多い時は3分の1がエジ研員だったりします。

―エジプトは古代文明の印象が強いですが、イスラーム勢力による征服以降のエジプトに興味がある方もいらっしゃるということでしょうか。
法島:そうですね。中東・イスラームに関係していることでもいいですし、イスラームに関わっていれば中央アジアや中国を扱う人がいてもいいかなと思っています。「エジプト文化研究会」って変な名前じゃないですか。古代エジプトしかやらないなら「古代エジプト研究会」とかでもいいわけですし。実際「古代エジプト研究会」というサークルは他大学さんにあるんですけど、「エジプト文化」なんて名乗っているのはうちだけなんです。それはエジ研を作った時に、古代エジプトだけじゃなくて現代までの長い歴史を持つエジプトの文化というものを扱ってほしいということを考えて命名したからなんじゃないかなと思っています。それこそ今のエジプト文化っていうのはイスラームにも関係していますし、中東各地とも繋がりがあるわけです。そういうものもエジ研では研究対象にしています。

『コロナ禍でもコミュニケーションが円滑にできるようになった』

―コロナの影響でサークル活動のあり方が大きく変わったと思いますが、現在どのように活動が行われているか教えてください
法島:大体コロナが始まった2020年の4月頃からオンライン上で活動をするようになりました。エジ研ではDiscordという通話ツールを使って勉強会をしています。オンライン勉強会という形で大体週1~2回、夜にみんなでDiscordのサーバーに集まって、1人が発表するのをパワポとかレジュメを見ながら聞いて、その後は質疑応答、みたいな感じでやっています。あとはオンライン上にみんなで集まって話したりとか、そんな感じで交流会もしたりしています。

―これからもそのように活動されていく予定なのですか?
法島:そうですね。勉強会の形はスマホがあればどこからでも参加できるので、オンラインの方が良かったんじゃないかなと思っています。例えばオンラインだとバイト終わりの帰り道からでも参加できますけど、対面勉強会だと授業がない日でも往復何時間もかけて大学に行くことになるので、随分ハードルが高くなります。実際みんななかなか集まってくれないと思うんですよね。勉強会はオンラインでやって、博物館とか行ってエジプトの遺物を実際に見るという対面でしかできない経験は対面でやったりとか。うまい具合に組み合わせてやっていけたらいいなと考えています。

―どうしてZoomではなくてDiscordなのですか?何かこだわりなどがあるのでしょうか。
法島:まずZoomってリンクを踏むまで何人いるかわからないじゃないですか。それって割と怖いなと感じる人がいると思っていて。でもDiscordだと何人通話しているのかがわかるんですよ。『あ、こんなに集まってる。行ってみよう!』みたいな感じで入るハードルが低くなるというか。あとは気軽に話すことが出来るツールという事も大きいですね。例えばZoomで『1年生同士で話してみませんか』ってなった時にZoomの部屋を作るのって結構めんどくさいじゃないですか。でもDiscordって常に時間制限とか無しに通話できる環境が整っているのですぐ集まれるんです。そういう気軽さっていうのが、コロナでもコミュニケーションが円滑にできるようになった要因なんじゃないかなと思います。

エジ研さんより提供。Discordでおこなわれたオンライン勉強会の様子。たくさんの会員が参加しているのがわかります。

『みんなでエジプトを好きになっていこう』

―お二人がエジプトに興味を持った理由やきっかけを教えていただけますか?
法島:僕は一応幹事長をやっているんですけど、初めはあまり古代エジプトには興味はなくて、そこまで知識もなかったですね。もともと中東での紛争とか紛争地におけるジャーナリズムみたいなものに興味があって、そこから紛争が発生している中東という地域自体やイスラームという宗教に興味を持ちました。それで2外でアラビア語をやるとなったときに、アラビア語選択の先輩がたくさんいるエジ研に入会したという感じです。ただ、エジ研は古代エジプトに詳しくない人でも全然受け入れてくれましたし、むしろサークルの中でみんなでエジプトを好きになっていこうって雰囲気だったので、エジ研に入って古代エジプトに興味を持ってという感じです。

―なるほど。
法島:早稲田のエジ研って、古代エジプトを研究するために早稲田に入学した方や吉村作治先生が好きな方、ミイラが好きって方はもちろん、僕みたいに最初は古代エジプトにはあまり興味がなかった人まで色々います。古代エジプトの研究を早稲田でやりたいってために再受験して早稲田に来たって先輩もいらっしゃいましたし。でもエジ研って詳しい人もそうでない人もみんなで勉強していこう、みんなで好きになっていこうっていうスタイルのサークルなので。エジ研で古代エジプトの事が本当に好きな人たちに囲まれたからこそ、僕はエジ研の中で次第にエジプトが好きになっていったかなという感じです。

―ありがとうございます。中島さんはどうでしょう。
中島:法島幹事長はどちらかというとイスラームの方を専攻しているという感じですが、私は古代エジプトの方をがっつりやっていこうと思っている立場です。私がエジプトに興味を持ったのは具体的にいつからかは覚えていないのですが、小学生の時とかに、何か展覧会にいってミイラ見たとか、おそらくそのあたりから段々興味を持ったのかなと思っています。おぼろげに覚えているのは、中学だったかの時にエジプトについての展覧会に母と行って、そこのミイラを収める棺に書かれているヒエログリフだったりとか、イラストみたいなのがすごく独特で、そこにある種の畏怖みたいなのを覚えて、まあそういうとこに魅力を感じたのかなと。それから高校に入って早稲田に来るまで、なんとなくエジプトは興味があるなという感じだったんですけど、早稲田の文学部に進学することになって、せっかくだからエジプト考古学をやろうかなと思いました。

―今ではエジプトのどのような部分に一層魅力を感じますか。
法島:個人的には、古代エジプト文明がエジプトの人々の中にずっと受け継がれてきたっていうことがすごい好きなんですよ、古代エジプトそのものだけじゃなくて、古代エジプトの遺跡とかがずっとエジプトの人々の中に受け継がれてきたっていうことがとても魅力的で。例えば古代エジプトのあと、エジプトはプトレマイオス朝が倒されてローマ帝国の支配下になるじゃないですか。それでキリスト教に改宗した時に古代エジプトの多神教って捨てられちゃうわけですけど、実はそのエジプトのキリスト教徒たちの中でイシス信仰が聖母マリア信仰みたいに形を変えて、古代エジプトの文化がずっと受け継がれてきたっていうのがあって。イスラームの時代になったら、偶像崇拝ということで多神教の時代のピラミッドとかの遺跡は否定されてしまうと思うんですけど、それでも、エジプトの人々の間ではエジプトの大切な物ということでピラミッドとかスフィンクスとか守っていこうっていう思いがあったり、中世の頃から観光地としてピラミッドが人気だったりとか。僕は近現代の中東を考えるのが好きなんですけど、沢山の王朝や政権が入れ替わった中でもエジプトを含む世界中の人々を魅了し続けた古代エジプトの文化っていうのは素敵で魅力的だなという風に感じています。

―中島さんはヒエログリフの魅力というのはどこら辺に感じてますか。
中島:ヒエログリフっていうよりかはどちらかと言うと、普通の壁画とかに書かれている絵とかの方に魅力を感じているんです。エジプトの壁画って、独特な雰囲気があるじゃないですか。エジプトの壁画ですごく典型的な、顔を横顔で描いて、上半身は正面からの見える形を描いて、足は横から見える形を描くという人の描き方とか。そういうのって、日本の文化には全然ないじゃないですか。そこにエジプトのオリジナル性を感じたりしました。あとは興味の根底にはやはりちょっと怖いっていうものが割とあります。例えばミイラは見た目が怖いなとか、ピラミッドは入り口から中へ入ると、狭くて暗い道を頑張って登らないと【玄室】までいけないとか。そういうスリリングな感じが転じて私の中で魅力になっているのかなと考えてます。

―サークルの中に伝統行事のようなものはありますか
法島:まずは通史勉強会です。エジプトの地理から初めて、古代エジプトの先王朝時代からアラブの春後の現代エジプトまでやっていきます。伝統行事みたいな感じとは少し違うかもしれないですけど、みんなでエジプトについて詳しくなるための行事としてやってます。あと最近はなかなかできてないんですけど、エジプト遠征っていうものがありまして。初代会長の吉村作治先生もおっしゃっていましたが、エジ研の一番の目的は実際にエジプトに行くことです。エジ研ができて2、3年後くらいからもうさっそくエジプトにみんなで行ってましたし、その後も長年エジプトに行っていました。最近はコロナの影響でなかなか行けてないんですが、来年2023年春休みの2月ごろにみんなでエジプトへ行こうってことでいま計画を立てていて、伝統行事を復活させようという流れになってます。

―エジプト文化に興味を持ったばかりの人にお勧めの本を教えてください。
中島:エジプト文化全般というより、古代エジプトに興味を持った人向けの本になりますが、まず『古代エジプト解剖図鑑』という本を読んでほしいです。著者の方が近藤二郎先生という方で、昨年度まで早稲田でエジプト考古学の教授をやられていました。初心者向けで古代エジプトの概要について非常に網羅的に書かれているのと、イラストが多いので見ていて楽しいです。エジプトの雰囲気も掴みやすくて分かりやすいかなと思います。

『古代エジプト解剖図鑑』(X-Knowledge)近藤二郎(2020年)

中島:あとは河合望先生の『古代エジプト全史』です。これはエジプトについて全然知らない初心者向けというよりは、概要は知っていて、もう少し詳しい内容を知りたいっていう方にお勧めのものです。内容としては旧石器時代からクレオパトラやローマ時代までの通史を割と細かめに扱っているので、エジプトの政治史みたいなのをもうちょっと詳しめに知りたい方にお勧めです。巻末の付録がなかなか充実していて、より深く知りたい方向けに先生がおすすめの文献をいくつか用意されています。「古代エジプト文明に理解を深めるための文献案内」というのを参考文献リストみたいな感じで河合先生ご自身が書いてくださっているんですね。これ発表を作るときにすごく便利だなと思っていて、日本語文献もありますし、英語文献もありますし、インターネット文献もありますね。

『古代エジプト全史』(雄山閣)河合望(2021)

中島:そして私が割と好きなのはこの『古代エジプトうんちく図鑑』です。これは学術的と言うよりは娯楽として楽しむ要素が強いかなと思います。特徴的なのは、割と文字多めの漫画みたいな、結構手書きのイラストが多くて、しかも文字で割と説明もがっつり書いてあって読みごたえもあります。この著者の方は実際に現地の方に聞いた話だったりとか、いろんな神話を見てこう思うっていう風に彼女なりの解釈をしたりとかっていうことを書いているので、これはこれで面白いかなと思っています。エジプトのリアルな雰囲気というものを知るのに良いかなと思います。

『古代エジプトうんちく図鑑』(バシリコ株式会社)芝崎みゆき(2004年)
なんと、ライトにエジプト好きな坂田が数年前に購入していました!なんだかご縁を感じますね。

『一人の好きをみんなの好きに』

―サークル運営の指針を教えてください。
法島:サークル全体としては、言葉にはあんまりしてないんですけど、「1人の好きをみんなの好きに」という感じで運営しています。エジ研にはそれこそ、いろんな趣味や専門の人がいるんですよ。僕も戦前・戦中の日本とイスラームの関係について興味があってその分野がとても好きなので、他のエジ研員にも興味を持ってほしいです。アラブ文学が好きな人もイスラーム哲学が好きな人もその他の分野が好きな人も、自分の興味のあること、関心のある事をみんなに伝えて、みんなで好きになっていこうというスタンスです。せっかく色々な人がエジ研に集まってるんだから、今まで自分が勉強した興味のあること、好きなことをみんなに共有して、みんなで好きになっていこう、様々なことをみんなで学んでいこうという感じでサークルをやらせてもらっています。

―それでは最後にお二人の座右の銘を教えてください
法島:そうですね。幹事長をやる上でとても気をつけているのは、他人に行動してもらうには自分から行動していこうということです。勉強会の準備やパワポ作りなど、他人に時間を割いてもらうって結構厳しいことですから。まずは自分から行動して、その上で他のエジ研員からも協力してもらえるように頼んでいます。
中島:サークル運営に関しては、副幹事長という立場で学年も上なので、いわゆるパワハラとかをしないように気を使っています。あとは、私の記憶の中では、先輩やアクティブな同期は男性が多かったと思うので、同学年の方とか後輩の特に女の子たちにとっても居心地がいいような空間をつくれたらなと、勝手に思っています。
法島:中島さんはとても頑張ってもらっています。歴史系サークルって男性の方が多いところが大半ですが、うちの場合は割と珍しく大体1:1くらいの男女比でやっています。そういうところは副幹事長の中島さんの居心地の良い雰囲気作りのお陰かなと思っています。エジ研は今すごい人が増えていて、それぞれに様々な得意分野があります。僕の不得意な分野とかは中島さんをはじめ、たくさんの会員に手伝ってもらって、いつも助けられてます。最近はデザインができる人がいるので、新歓のポスターとか作ってくれたりしています。

2022年度のエジ研新歓パンフレットの画像。緻密なデザインはなんとサークルメンバーが担当したそう。

―分業体制がうまく出来上がっているというか、良い雰囲気でサークル運営されていますね
法島:エジ研のメンバーはみんなサークルに対して、誰かがサークルを動かしてくれるのではなくて自分たちもサークルを動かしていくんだって思ってくれている人が多いです。そういう雰囲気があるのはいいんじゃないかなと思っていてとても感謝しています。みんなの協力のお陰で今年は例年の4倍以上の人が新歓に来てくれましたし、新しく入ったたくさんの人達も含め、これからもみんなで一緒にサークル運営をしていきたいと思っています。また、今年は地歴系の7つのサークルを集めて合同新歓説明会を開催しました。エジ研はむしろコロナ禍で成長してコロナの1年前の2倍ほどの会員数になりましたが、どうしてもコロナ禍で活動が下火になってどんどん人数が減っていったようなサークルもあります。エジ研だけではなく、早稲田大学にある様々な地歴系サークルがそれぞれ活発になることで、地歴系サークル全体にとってもよいことが色々あるんじゃないかなと思います。

―素晴らしいですね。法島さんのサークルへの愛が伝わってきます。
法島:僕を含め今の3年生ってコロナの時Zoomの授業しかなくて人と話す機会ってなかったじゃないですか。それこそ大学の先輩とのつながりとかもなくて、そういう中で僕がツイッターで見かけたエジ研の先輩方がとてもよい方たちばっかりで、そういう人たちを見て、初めはあんまり興味なかったんですけど、エジ研に入りました。エジ研に入った後、先輩方はアラビア語はこうなんだよとか、イスラーム研究するときはこういう資料を使ったほうがいいよとか、そういった知識を優しく丁寧に教えてくださいました。それこそ顔も知らない1年生に対して、あそこまで優しく受け入れてくださって、もしここに入っていなかったら、僕の大学生活はどうなってたんだろうなって思うことがあるんですね。こんな経験があるから、エジ研に入会してくれた人たちの助けになれたらいいなと思ってますし、みんなで勉強できて、お互いに刺激し合う環境を作れたらいいなと考えています。なので、そういうエジ研の環境に惹かれて人が集まってくることや、エジ研員が自信をもって友人を勧誘できる環境のサークルを作れてとてもうれしいと思っています。そういう環境を作れて本当に良かったなと思います。それこそ僕が早稲田に入った時なんてアラビア語をサークルでやってるところなんてなかったんですよ。でもコロナ禍の最初の年からはエジ研の中でみんなでアラビア語勉強会をしたり、最近も部室で2年生が1年生にアラビア語を教えてくれています。最近のエジ研は多言語学習サークルの一面もあって、一般的な第二外国語はもちろん、ペルシャ語、サンスクリット語にチベット語とヘブライ語、古典ギリシャ語やラテン語まで、さまざまな言語をやっている人がいます。このようにアラビア語等の言語学習に限らず、色々な事をみんなで教え合って会員同士で高め合うようなエジ研の雰囲気を、オンラインで先輩方に作ってもらった時からより一層よいものにしていきたいと思っています。

―ありがとうございました!

[i] 2022年7月4日時点では79名。

取材:2022年4月29日
ZOOM取材

人研編集後記

エジプトへの愛、そして何よりもサークルへの愛がひたすらに伝わってきたインタビューでした。やばい、インタビューをした私も入会を検討してしまう……!エジプト文化っていいな!!(坂田)

☆エジプト文化研究会☆

Twitter: 早稲田大学 エジプト文化研究会 (@ejiken2) / Twitter@ejiken2

★人物研究会★

「会いたい人に会いに行こう」をモットーとする1965年創立のインタビューサークル。早稲田祭などでは講演会の企画運営も行う。田中角栄公認現場叩き上げ。新会員募集中。

公式HP:人物研究会 - 早稲田大学 人物研究会 公式サイト (jimdofree.com)
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