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根源を問う~哲学のススメ

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哲学書のレビュー集です。自身、専門家ではないので、比較的読みやすい本の紹介や、読みにくいものであっても非専門家の言葉で噛み砕いていきます
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2020年3月の記事一覧

"テツガクあ"~『子どもの難問』野矢茂樹

以前紹介した同著者の『そっとページをめくる』のなかで紹介されていた本。 「ぼくはいつ大人になるの?」 「どうすればほかの人とわかりあえるんだろう?」 「自分らしいってどういうことだろう?」 「こころってどこにあるの?」 このような、子どもがふと疑問に思うような22個の問いに対して、著名な哲学者達がそれぞれのやり方で果敢に挑んでいく。 同じ1つの問いについて、哲学者2人ずつが各2-3ページ程度を割いて答える形式になっているのだが、本書の読みどころはなんといって

"認識"の夜明け~デカルト『方法序説』を読む

久方ぶりの再読。本文で90p弱の短文なんだけど、写経&要旨まとめをちまちまやりつつ精読してたら結局足掛け2ヶ月ほどかかって読了した。 近代合理主義の始まりの地であり、現在「科学」と呼ばれるあらゆる探求活動の礎となった、あまりに有名な一冊。哲学書のわりには全体的に平易な文章で読みやすいが、根っこを丹念に紐解いていくと、その形而上的考察は深く、科学の本質を捉え未来に投げかける眼差しはとても鋭い。 そしてまた、長らく中世を覆ったネオプラトニズム-スコラ学の重さと陰鬱さが逆説的に

"知を愛する"その仕方~プラトン『国家〈下〉』

上下巻通して1,000pぐらいのボリューム感で、通読に数週間かかったけれど、やっと読み終わった。 ↑のレビューでも触れたが、本書全体としては、哲人統治者の育成の仕方を丁寧に説きながら、正義という概念がどういうものかを語る本である。 上巻で荘厳と建設され語られた国家のあり方、それを通して見る正義のあり方。それらについて、今度はイデア論を軸としながら更にもう1周ずつ切り込むことで、国家と人間個人との対応関係が明確になり、個人における正義・善の様相が立体的に浮かび上がるような、

国家。国家。国家。~プラトン『国家〈上〉』

プラトン哲学最高峰の書であり、初期〜中期プラトン総決算とも言うべき本。 岩波文庫版上巻には原典10巻中5巻までが収録されており、上巻のみでも500pを超える大著。ちなみに、プラトン著作のほぼ全体に言えることだが、難しい術語が皆無なため、哲学書とはいえ文章はかなり平易ですごく読みやすい。 内容は、タイトルにある「国家」についての論というよりも、当時の社会において一般的に信じられていた「正義とはこうである」という概念に対して、周辺論点を順繰りに考察・検討の俎上に載せながら喝破