葡萄の季節、ぎりぎりセーフ

四年前の夏、ママ友4人と山梨へ旅をした。
葡萄に詳しいママが「ちょっとぶどうを買ってもいい?」というので、
道の駅にでも寄るのかと思いきや、「毎年行くぶどう園があるの」だそうな。

ワクワクして向かったぶどう園は、観光案内に載っていなかった。
小さな看板が立てかけてあるだけの、こぢんまりとした営業所。
軽トラックが1台、そして私たち旅行者の車が2台停まったら間口を塞いでしまうほどの、小さな小さな営業所。
だから私は、大いなる勘違いをした。
ご自宅やご近所に卸す分だけを収穫する園なのかな、と。

いざ待合室に入ってみれば、客が自由に味わえる冷茶とぶどうが置かれている。
そして種類が豊富。見たことも聞いたこともない品種まで試食できる。
なんとなく、知る人ぞ知る……の雰囲気。
そこの主人と顔なじみのママ友のおかげで、
普通はこんなにも味見させてもらえないだろうという量を振る舞われ、
口の中は、すでに葡萄ジュース状態。

実際に試食でいただいた葡萄ちゃんたち。


「気に入った葡萄を切ってやるから、ついてきな」ということになり、
営業所とご自宅の間の狭い道(ごめんなさい)を抜け、緩い下りのあぜ道をぞろぞろと進めば、なんと。
突然、見渡すかぎりの葡萄棚、出現!
どこを見ても葡萄棚、葡萄棚、葡萄棚。
これは……車道を走っていただけではわからんわ、と顎が外れた。
「ここ一帯、全部ぶどう園さんの土地」と笑うママ友。……マジですか。

道の左右が、こんな状態。葡萄棚だらけ。
こんな感じの葡萄棚が、ずーっと続いています。
たわわ〜♪
まさしく「ぶどうでございます」な風景。
私もひと房、ちょん切らせていただきました。


葡萄棚の下にいると、当然ですが空気が葡萄の香り。
これは気持ちが豊かになるよね……と、
そのぶどう園のご夫妻の、大らかさの源を感じた次第。

東京から突然やってきた私たちを、温かくもてなしてくださったご夫妻。
そのご夫妻が経営するぶどう園を参考にした小説が、このたび文庫になりました。
BLですが、心温まる一冊です。
なにせ、この作品を執筆中、ずーっと幸せでしたので。

セシル文庫10月21日発売
「子連れやくざのリモート・スロー・ライフ」
著:綺月陣  絵:亜樹良のりかず先生

葡萄の季節に、ぎりぎり間に合いました。
みっちり詰めた葡萄の香りを味わいながら、
明るくて優しいラブコメディ、お楽しみいただければ幸いです。


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