マッカーサーが日本の戦争は自衛戦争だったと証言した?!(1)

肯定派の主張
(1) マッカーサーが日本の戦争は侵略ではなく自衛戦争だったと証言した


はじめに

1950年6月、南北に分断された朝鮮半島で朝鮮戦争が勃発。朝鮮戦争の国連
軍司令官に任命されたマッカーサーだが、トルーマン大統領と戦略面で意見が対立、戦争のさなかに解任され、本国に召還されることになる。

1951年5月3日からマッカーサーを証人としたアメリカ上院軍事外交合同
委員会が開催された。主な議題は「極東の軍事情勢とマッカーサーの解任」その時に、マッカーサーが「日本の戦争は自衛戦争だった」などと証言したとされる。

肯定派の主張(1)

マッカーサーが日本の戦争は侵略ではなく自衛戦争だったと証言した

Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.
(したがって、日本を戦争に駆り立てた動機は、大部分が安全保障上の
必要に迫られてのことだった)

この意味は、日本は侵略ではなく「安全保障の必要に迫られた」
つまり自衛のために戦争したということになる。

ABCD包囲網を敷き、日本を追い詰めたアメリカの日本に対する厳しい
経済封鎖が巻き起こした戦争であったという意味が含まれている。

反証1:日本の軍事行動を侵略だと認識していた

まず、原文はこちらにあり、該当の文章は#69 (p.57) だが
その前の#55(P.43)に以下の記述がある。

General MacArthur. (略) The objective of Japan was to conquer,occupy, control and exploit all of China.
(マッカーサー将軍:日本の目的は、中国全土を征服し、占領し
支配し、搾取する事だった
)

マッカーサーは、日本による過去の中国への軍事行動を「侵略」だと
認識しており、日本が自衛戦争をしたなどと発言するはずもない。

反証2:security の解釈

原文はこちらにあり、該当の文章は#69 (p.57)

securityの意味は「安全」や「安心」など複数あり、必ず「安全保障」
とは訳さず、前後の文章を見る必要がある。

そもそも securityには正当・不当のニュアンスはないが、自衛には
正当なニュアンスがある。

「自衛」は 英語で「self-defense」自衛戦争は「defensive war」
安全保障の意味は「国外からの攻撃や侵略に対して軍事同盟、経済協力
中立などにより、国家の安全を守ること」

これを前提に、例の証言の前後をみると

Strategy against Japan in World War II
(第2次世界大戦における対日戦略)

Senator Hicknlooper. Question No.5: Isn't your proposal for sea and air blockade of Red China the same strategy by which Americans achieved victory over the Japanese in the Pacific?
(ヒッケンルーパー上院議員 5番目の質問です:あなたの提案する赤化
中国への海上・航空封鎖は、アメリカが太平洋で日本軍に勝利を収めた
時と同じ戦略ではないですか)

「中国への海上・航空封鎖」は対日戦略と同じかと質問しており
マッカーサーは「同じ」だと答え、自身の戦略を説明している。
戦略の有用性を語るのだから、日本の擁護というより、いかにして
日本を攻略したかが語られている

General MacArthur.Yes, sir.In the Pacific we bypassed them.We closed in.
(マッカーサー将軍:そうです。太平洋では、米国は日本を迂回しました。
そして閉じ込めたのです。)

You must understand that Japan had an enormous population of nearly 80 million people, crowded into 4 islands.
(日本が抱える8千万人に近い膨大な人口は、4つの島に密集詰していたことをご理解いただく必要があります。)

It was about half a farm population. The other half was engaged in industry.
(およそ半分は農業人口であり、残りの半分は工業に従事していました。)

Potentially the labor pool in Japan, both in quantity and quality, is as good as anything that I have ever known.
(私の知る限り、日本の潜在的な労働力は、質量ともに優れています。)

Some place down the line they have discovered what you might call the dignity of labor, that men are happier when they are working and constructing than when they are idling.
(ある時点で、彼らは、労働の尊厳と呼んでいるものを既に見つけている。つまり、人々は働いて何かをつくっている時の方が怠けている時より幸福であると言うことです。)

This enormous capacity for work meant that they had to have something
to work on.
(この莫大な労働人口の余裕は、彼らには職がなければならないことを
意味します。)

They built the factories, they had the labor, but they didn't have the basic materials.
(彼らは工場を建設し、労働力を持っていましたが、基礎材料をもって
いませんでした。)

There is practically nothing indigenous to Japan except the silkworm.
(実際、日本には蚕以外に産出するものは何もありません。)

They lack cotton, they lack wool, they lack petroleum products, they lack tin, they lack rubber, they lack a great many other things, all of which was in the Asiatic basin.
(彼らには綿、羊毛、石油製品、スズ、ゴム、その他多くのものが
ありませんでした。そして、アジア海域にはその全てがありました。)

They feared that if those supplies were cut off, there would be 10 to 12 million people unoccupied in Japan.
(彼らは、それらの供給が断ち切られた場合、日本に1000~1200万人の
失業者が生じることを恐れました。)

Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.
(したがって、彼らが戦争に突入した目的は、主にセキュリティによる
ものでした。)

大量の失業者」について触れており、このことを「security」だと述べて
いて、経済的な側面や治安の維持(国内の危機回避)のことを指している。
意味合い的には job-security(雇用保証)に近いのではないか。

これを「(経済)安全保障」と訳しても「安全保障だから自衛だ」
などと考え「正当性のある戦争」「やむを得ない戦争」と解釈する
のは「security」の意味を曲解し「安全保障」を拡大解釈している。

「国外からの攻撃や侵略」なら自衛だが、(資源不足で)大量の失業者が
生じることを恐れ、防ごうとするのは、自衛ではなく予防。

また、自衛戦争なら「アジア独立のため」とは一体何だったのか。
マッカーサーは一言も触れていない。

さらに、経済制裁を理由に武力行使していいのなら、現に経済制裁されて
いる北朝鮮から、攻撃を受けても「自衛」なのか。

北朝鮮の外務省は24日、国連安全保障理事会が採択した追加制裁に
ついて、戦争行為であり、完全な経済封鎖に等しい

北朝鮮外務省は声明で「われわれは、米国とそれに追随する国が策定した
制裁決議は北朝鮮の主権に対する重大な侵害であり、朝鮮半島や地域の
平和と安定を乱す戦争行為
だとみなすとともに、断固として決議を拒否
する」と宣言した。


まとめ

◆マッカーサーは、日本による過去の中国への軍事行動を「侵略」だと
認識していた。
◆securityに正当・不当のニュアンスはない。
◆「安全保障だから自衛だ」と解釈するのは「安全保障」の拡大解釈。
◆「大量の失業者」の回避策が戦争であり、securityだと述べている。
つまり、経済的な側面や治安の維持のことを指している。意味合い的
には job-security(雇用保証)に近い。
◆大量の失業者が生じることを恐れ、防ごうとするのは自衛ではなく予防。

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