自分の「強み」を仕事に活かす <サービスを考える vol.6>


 ネブラスカ大学の学生を前に著名な投資家であるウォーレン・バフェットは「私はきみたちとなんら変わりません」という言葉で講義を始めた。

学生はみな忍び笑いをもらした。バフェットは世界長者番付にその名を連ねる一人だ。「もしきみたちと私になんらかの違いがあるとすれば、私は毎日朝から晩までこの世で一番好きなことをしている。ただそれだけのことではないでしょうか。きみたちに向けて何かアドバイスめいたことが私にあるとすれば、それに尽きます」


 投資家といえば複雑な市場の流れを読む能力や、即断力が必要な仕事だと一般的には思われている。世界市場はめまぐるしく変化し、途方もなく複雑だ。しかしバフェットの近くにいる人は彼を「辛抱強い実務家」と評する。他人を信用しがちで、一般的に投資家に必要と思われている資質とは無縁だ。彼はコカ・コーラやワシントン・ポストといった直感的に製品とサービスが分かる企業の株を安い時に買い、高い時に売る。凡人が経営者になっても傾かないほど製品や組織がしっかりしている会社でないと買わないと言う。1956年にわずか100ドルで投資を始めてから一貫して同じ方法を取り、その独自の投資法で成功を収めた。今でも仕事を楽しんでいる。これはすべて強みに準じたからこそ可能となったのである。


米国の調査会社ギャラップはこれまでに63ヵ国、101の企業で働く1700万人以上の従業員に、「最も得意な仕事をする機会に毎日恵まれているか」という質問をした。その結果「恵まれている」と答えた従業員は20%だった。たった20%しか職場で強みを発揮できていると感じていないのである。

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