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エホバの証人ってカルトなの?

僕が小さい頃に信仰していた、エホバの証人。名前は(スキャンダルなんかもあったので)有名ですが、一体どんな宗教なのでしょうか。カルトという言葉は、学問で使われる正確な言葉ではないのですが、なんとなーく反社会的+理由が宗教、というイメージですよね。概略を見てみましょう。


■ 大ちゃん事件で有名に!輸血拒否

エホバの証人で有名なことの一つに、輸血をしないということがあります。1985年に大ちゃん事件といって、当時10歳の大ちゃんがダンプカーに轢かれる事故に遭い、熱心なエホバの証人である両親が輸血拒否したために亡くなったという事件があって有名になりました。ルポも出版され、ビートたけし主演でTVドラマにもなったようです。

これは、聖書の中に「血を避けなさい」という言葉があるからで、それを守っているのですね。なので、血の入ったソーセージなんかも食べないです。血抜きされていないクジラとかもかな?あとは、逆に献血をすることもないです。輸血にもいくつか種類があって、自己血輸血といって、自分の血を回収して再度体内に入れるとか、分画といって全血ではない一部の成分を入れるなどは個々の判断に任せられていたと思います。

輸血拒否自体は厳格に守られていて、事故で気絶しても緊急で勝手に輸血されないように、「輸血拒否カード」というものを身につけています。死んでも構わないので輸血を含む治療はしないでくださいというような文言が書いてあって、そこにサインします(まあ、パラグライダーとかバンジージャンプとかでも、自己責任のサインしますからね)。そのカードをプラケースみたいなものに入れて金属のチェーンでいつも首に下げていました。事故の時には緊急で服も切られたりしますし、その状況でも治療者の目に止まるようにという事です。これが、学校なんかでは体育の着替えで目立つので、ひどく気になった記憶があります。

さて、これを読まれると、徹底しているなというか、狂信的!と思われるのではないでしょうか?そうでもないですか?その信じることの由来はどこからきているのでしょうか。


■ エホバって何?

では、そもそも、エホバの証人の「エホバ」とは何でしょうか。これは、聖書に出てくる神様の名前を指しています。一般に訳されている聖書では神様は「主」と呼ばれていますが、昔神様の名前を呼ぶのを恐れ多いと考えた人たちが、そのように書き残しました。そうでない人たちもいて、その人たちは神の名前を表記したと言われています。ヘブライ語は書く際に子音だけを書き、母音は書かれずに文脈によって補われました。そこに残されている神様の名前は「YHWH」というもので、テトラグラマトン(四文字)と呼ばれます。これが、母音が分からず発音が不明になってしまい、「ヤハウェ」とか「イエホワ」と読むなど諸説ありますが、エホバと呼ぶのが妥当と考たのがエホバの証人だったというわけです。

神様がそんな後で困るような文字を人間のために作ったのかい?と突っ込みを入れたくなりますが、言語の問題は結構一神教には根深いと思います。イスラム教でもコーランが書かれたアラビア語は特別な言語ですし、聖書では有名な物語にバベルの塔というものを人間が建てた時に、神様が人間の言語をばらばらにして混乱させた、というものがあります。漢字の成り立ちなどを知ると、ちょっと全然系統が違うし、無理じゃないか?と思うのですが、当人たちは信じているのです。

そんなキリスト教でも、聖書の中に書かれていることを、一部は物語とか、説話とか、方便のように受け取るグループと、全て事実であると考えるグループとがあります。エホバの証人は後者です。聖書の中には様々な超自然的な事象が書かれています。ノアの箱舟と全地を覆う大洪水とか、キリストが生まれる時の処女懐胎とか、モーセのエジプト脱出の時に海が割れただとか、虹を作ったとか太陽が止まったとか、すべて神様がいれば可能だと考えています。


■ キリスト教とどう違う?

エホバの証人は、キリスト教の一つです。ただ、キリスト教にも色々あります。最初にキリスト教が生まれたのは、ユダヤ教が信じられているイスラエルで、その後イスラエルがローマの支配下にあったため数世紀かけて弾圧されながら広まっていき、その過程で変化していきます。ローマの国教となってからまた、教えをスタンダードにするため会議や分裂が起こりながら成長します。そこで異端とされて潰されたグループもありますし、教皇や皇帝を含む権力争いで分裂して、東西に分かれたりもしてきました(東方側がギリシャやロシアの正教会につながっていく)。

その後、権威を持って行ったキリスト教の腐敗や矛盾に対抗し、そもそもの聖書本来の教えに戻ろうという運動がルターらによって起こります。それがプロテスタントで、「抗議」を意味するラテン語の「プローテスターリー」に由来しています。カトリックは「普遍」とか「正統」を意味するギリシャ語の「カトリコス」に由来しています。分かりやすくそれぞれ「新教」、「旧教」などとも呼ばれますが、元はそういう意味の言葉です。

ヨーロッパの大陸でもこのような動きがありましたが、島国であるイギリスでも新旧の対立は激しいものでした。しかし、アメリカに渡った移民の人の中には新教であるプロテスタントの人が多かったのです。ラテンアメリカは大陸系の植民地となっていったので、カトリック系の信仰が盛んです。そしてアメリカでも活動が進展していく中で生まれたのがエホバの証人、というわけです。

1870年代にニューヨークのブルックリンで設立され、最初は「国際聖書研究社協会」という名称でした。後に、広く神の教えを伝えることを目的に「エホバの証人」と名称が変更され、今に至ります。

そのような訳で、キリスト教といっても色々あるわけです。歴史を見てくると、カトリックも成立するまではローマ内では異端でしたし、プロテスタントも成立した頃は同様です。程度の差はあるでしょうが、信仰の内外では信じることや習慣が異なってきます。カルトとそれ以外を分ける線引きというのは、難しいのです。

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