サービス・マネジメント <サービスを考える vol.1>

世界で初めて企業を研究の対象とし、マネジメントの方法について多くの研究と本を発表して有名になったP・F・ドラッカーという人がいる。
(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本が、2009年に発売から半年で100万部発行され有名になった)

 ドラッカーはモチベーションとリーダーシップの関係を説明するため、「三人の石切り工」の昔話を例としてよく使った。
石切り工たちに何をしているのかと聞くと、第一の男は、「これで暮らしを立てているのさ」と答えた。
第二の男は、槌(つち)で打つ手を休めず、「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしているのさ」と答えた。
第三の男は、その目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら「大寺院をつくっているのさ」と答えた。

ドラッカーは、リーダーに必要な視点は第三のものであると述べている。第一の視点は生活のための作業であり、発展性は無いが問題があるとまでは言えない。第二の視点は個人的なやり甲斐を持っているが、全体の目的とずれる可能性があり、リーダーとして危険である。この例は、リーダーシップに関して述べたものだが、「サービスから何が作られるのか」を知っていることは、私たちが何に向かって努力すべきか考える助けになると思う。
 
その一つとして、リチャード・ノーマンの「サービス・マネジメント」という本を紹介したい。
この本による分析は、スカンジナビア航空という会社のサービス戦略立て直しに著しい効果を上げたことで有名になった。航空会社では、最新鋭の飛行機をいつ購入し(燃費や積載量の向上)、効率よく多くの顧客に利用してもらうことが経営のカギとなる。しかし、当時のスカンジナビア航空社長ヤン・カールセンは会社を立て直すにあたって顧客と従業員が接する瞬間を重視した。ヤン・カールセンはその自伝で次のように述べている。

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