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生涯コストを“お化け”にさせるな!家づくりはシミュレーションで生涯コストの割り出しが先

家を建て暮らしていくには、生涯どのくらいのお金がかかるのでしょう?生涯コストのシミュレーションについて、一般社団法人ミライの住宅代表理事の森亨介さんに解説していただきました。
※雑誌「だん05と06」から一部抜粋

生涯コスト、ご存知ですか?

戸建て住宅に住むにあたりかかるお金として、建築時のイニシャルコストとその後に掛かるランニングコストがあるのは誰でもイメージできると思います。ランニングコストの内訳には、毎月の光熱費、数年に一度の修繕、数十年に一度の大規模な修繕などが含まれるほか、火災保険料、固定資産税、都市計画税、住宅ローンの金利、住宅が原因で掛かる医療費なども含まれます。

高性能な住宅を建てると、冷暖房費をはじめとするランニングコストが安くなるから、生涯コストでは得になります――』

少し勉強をされた方であれば何度も聞いたことがあるフレーズでしょう。確かにその通りですし、それを証明するシミュレーション結果や、実際の家庭の年間光熱費データも世の中にはたくさん存在します。

ではこれから家づくりをしようとされている、またその勉強をされている方、あるいは既に建築を終えて戸建て住宅に住んでおられる方に質問をします。あなたはこれから住むことになる家、または今住んでいる家の生涯コストがどのくらいになるのか、ご存知でしょうか。建築会社の担当者さんは、それを教えてくれたでしょうか。

住宅を建てる際、生涯コストという言葉がよく使われます。しかし、生涯コストの金額を具体的に住まい手に提示する建築会社はごくわずかです。実は、生涯コストを住まい手に提示するということは、建築会社にとっては不都合が多いからです。

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なぜ提示されないの?

例えば長い保証を付けている建築会社があります。保証の条件を詳しく読んでいくと、定期的な点検や修理を必ず行わなければ、その保証は最後まで継続させることができないことがわかります。長期保証を人質にされているため、提案されるリフォームを断ることできないという状況になるのです。

新築でプロパンガスを選ぶと、追い炊き機能付きの給湯器や、ガスファンヒーターをガス会社がプレゼントしてくれることがよくあります。ガスをたくさん使う商品をプレゼントすることで、後から払っていただくガス代が増え、プレゼントした分以上に回収できるという仕組みになります。

暖かい家をつくろうとすると、断熱を向上させ、暖房設備を適切に配置することになります。

どちらを重視しても暖かい家ができますが、断熱材だけにウエイトを置いてしまうと、建築会社は後で儲かりにくくなります。断熱性をあえて少し落としておき、暖房設備の量を増やした方が、10年後の設備の買い替え需要が見込めます。

これはほんの一例ですが、このようなビジネスモデルで仕事をしている建築会社が生涯コストを事前に提示するということは、自分が後でどのくらいお客様から光熱費や維持管理費でお金を貰おうとしているのかという手の内を見せることになります。

車や携帯電話、賃貸住宅と違って、戸建住宅には失敗したと思ったからといって違う商品に変えるという選択肢はありません。後でお金が掛かろうが掛かるまいが、生涯変えることのできない環境がつくられてしまうのです。だからこそ、住まい手の立場に立ってみれば、自分がこれから建てようとしている家の生涯コストがどのくらいになるのかということは、絶対に知っておきたい情報ではないでしょうか。


住宅は建てた後にお金がかかる

住宅という商品は、家を建てる時よりも建てた後の方がお金がかかります。日本の一般的な世帯が一生のうちに衣食住の「住」に掛けるお金はおおよそ8000万円。これは前述した建築費のほか、光熱費やメンテナンスコスト等も含んだ金額です。一生賃貸で過ごす人も、親から受け継いだ家で過ごす人も、すべてを包括した平均金額になりますので、新築を建てる場合はさらに大きな金額になります。一般的な住宅の場合、建てた後にかかる生涯の光熱費やメンテナンス費、その他税金などを積算すると、おおよそ5000万円になります。

後で想定外のお金がかからないように生涯コストの計算を建築会社に依頼することをお勧めしていますが、ここでもまた建築業界の抱える構造的な問題が発生します……

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シミュレーションの質問項目例

※気になるシミュレーションの方法(全文)は雑誌「だん06」に掲載しています