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水平方向や柱とのバランスが考えられた和室造作の構成

和室の構成

和室の内部は床(畳など)、内法回り、天井から成り立っています。内法回りは壁面・窓・出入口・欄間・床の間・床脇・書院などの総称。内法とは、鴨居下端から敷居上端までの寸法をさします。

内法高は室町~江戸時代の成人男性の平均身長(154~156cm)に由来する畳の寸法を基準にしており、従来は5尺7寸(約173cm)が基準でした。現代人は身長が伸びたため、大きな寸法にすることが多くなっています。天井高も高くなる傾向ですが、部屋の広さや柱などとのバランスを考える必要があります。

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敷居・鴨居

障子や襖戸などの建具を嵌め込むための横木で、内法高に入れたものを鴨居、床面に敷いたものを敷居といいます。木の反りの性質から鴨居は木表を下端に、敷居は上端に使います。

敷居が松・檜・ツガの場合、入念な仕事では戸の滑りをよくし摩擦を防ぐための堅木(おもにカシ)を溝に埋木します。雨戸の敷居溝には3㎜厚くらいの真鍮板を入れる例もあります。縁側・浴室などの鴨居には水勾配をつける例も見られます。

敷居・鴨居の納まり

敷居・鴨居の見付け(正面の寸法)は柱幅の8/10~9/10くらいが基本ですが、柱との納まり方や建具の本数によっても変わり、ややくだけた感じの部屋では柱幅の6/10~8/10とします。畳に接する側は柱の面ぞろ(柱の外側)に合わせ、板(縁側など)に接する側は柱の面内(面取りした内側の線)か面中(面内と面ぞろの中間の線)に合わせます。数寄屋では鴨居を薄くしたり角を刀刃仕上げにしたりするなど、すっきり薄く納める例がよく見られます。

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無目鴨居・付け鴨居・差し鴨居

建具を入れず、溝を掘らない鴨居を無目鴨居といいます。また、付け鴨居とは開口部以外の壁の長押に取り付けるか、長押がなくても建具が入る鴨居と同じ成に揃えて化粧材とする鴨居のことです。民家などでは成が150~600㎜以上の松やケヤキの太く厚い平角材を使い、端部を柱にほぞ差しにします。このような鴨居を差し鴨居といいます。建具の押さえや開閉用としてだけでなく、梁や桁のような構造材としての機能も持っています。このとき、柱は6~9寸、柱間も2間以上と大きくするのが普通です。

長押

長押は鴨居の上に、四周にまわして取り付けられます。必ず必要ではありませんが、10畳以上の書院座敷では、その水平線により部屋を引き締め、安定感を出します。逆に数寄屋では長押はあまり付けず、付ける場合でも成の低い半長押や面皮材を使います。上等な仕事では上部の壁との間に長押蓋を付けます。長押といった場合、鴨居の上部に付ける内法長押をさすのが一般的ですが、柱最下部に付ける地覆長押、窓下の腰長押、天井と内法長押の間の蟻壁長押、天井まわり縁の直下の天井長押などがあります。

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鴨居をまわした和室。(早建)

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長押をまわした和室。(降幡建築設計事務所)

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