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和の建築家・4人衆(畠山博茂・出江寛・降幡廣信・木原千利)の仕事『日本の心、和のすまい』

和の建築を手掛ける4人の建築家(畠山博茂・出江寛・降幡廣信・木原千利)の建築を紹介する「日本の心、和のすまい」。ここでいう「和のすまい」とは、単に和風の素材を使用している、床の間がある、あるいは日本の伝統的な技法を用いているなどの表面的な意匠ではなく、日本人固有の精神性がいかに空間に表出されているかに本質があります。

ここで紹介する住まいは、それぞれ個性的であっても、私たちの中に脈々と流れている、日本人の精神(心)の拠り所を強く触発してくれます。単なる形式的な和風・洋風という差異を超えて、「和」のスタイルが表出されたこれらの住まいから、「日本の心」「和のすまい」の豊かさを感じ、堪能してもらいたい、そんな思いが込められた書籍です


表紙に使われているこの写真は、木原千利氏による床の間。正面の壁を床から天井まですりガラスにしており、外光によって庭の木々の揺らめきが墨絵のようにガラスに映し出されます。まるで床の間の壁が自然を表す一幅の軸のように感じられます。通常の軸も掛けられるように、すりガラスの内側には京唐紙張りの襖戸が仕込まれています。

畠山博茂氏が設計した大倉山の家(神奈川県横浜市)。十数代続くこの家のご当主は、人生の証として納得できるものをと、旧家の建替えを決意し、寡黙で凛とした落ち着きのある建物を望まれました。軒深く、水平にのびやかな姿は、まさに現代の数寄の結晶。時代を超えた美意識さえ感じられる風雅な雰囲気を醸し出しています。建築のみならず、玄関から奥座敷に至るそこかしこの飾りの室礼にも隙がなく、抑揚のある清々しい緊張感が空間に漂います。

出江寛氏設計のさぬきの家(香川県高松市)。古い瓦屋根の町が集まる一角に建つ、燻し瓦の屋根と土佐漆喰の白壁が際立つ美しい蔵づくりの住まいです。邸内には、随所に斬新なディテールが施され、不思議な落ち着きと新鮮さにあふれています。

降幡廣信氏による古民家再生。伝統の方法を尊重し、それに従いつつも、新しい現代の生活に対応した空間構成の手法を探求する「再生」の技。老朽化もひどく、生活上の不便も感じられる民家が、「再生」によってよみがえった姿には、刻み込まれた歴史の深み、時代が移っても変わることのない美と同時に、新たな暮らしの営みに向かう瑞々しさも漂います。

木原千利設計の美原の家(大阪府南河内郡)。建て主のイスとテーブルの生活に合わせ、和室はたったひと部屋。しかし、従来和室に使われる建具や材料を洋室にも使い、和室に凝縮された数寄の感性が広々と設けられたホールや居間にも反映されています。

[contents]
第一章 和のすまい探訪
 大阪・美原の家 設計:木原千利
 香川・さぬきの家 設計:出江寛
 神奈川・大倉山の家 設計:畠山博茂
 清々しく四季を過ごす、夏と冬の暮らしの「室礼」
 大阪・箕面の家 設計:降幡廣信
第二章 すまいに息づく和の造形美
 日本人の「美意識」と「伝統」について(文・出江寛)
 二元対比と余白の美 設計:出江寛
 面と線の端正な構成美 設計:畠山博茂
 自在なしくずし、写しの美 設計:木原千利
 古民家再生の美 設計:降幡廣信
第三章 作り手に宿る和の感性
 現代和風の極上 文・石堂威
 民家再生に賭ける情熱 文・立松久昌
 出江和風ーその華麗な冒険 文・馬場璋造
 被膜としての和風建築 文・長谷川堯
 小さな庭への誘い 文・木原千利
付記ー四人衆建築家像
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