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DEAR FRIENDS_自叙伝1970年02_dear meショートストーリー

16歳。
この春、高校は捨てた。
だって窮屈。退屈。先が見えない鬱屈感。

だから、私は今、何者でもない。
だけど、必ず私にしか出来ないことで
自分の未来を見つける。

中高一貫私立女子校、規模も規則もマンモスの高校をドロップアウト。
とにかく、あのどうしようもないセンスの灰色の3シーズンコートを着て、軍隊のように列を作り、あの狭められた鉄の門を潜りたくなかった。
それも毎日。あきれる。

ブービートラップ。
校内へ進むには罠だらけ。
私を誰が捕まえるの?

初夏の向かい風の中、退学届を出して教室を背に堂々と門を出たときの爽快感。その先にことなんか見上げた空の青さで塗りつぶしてやる。
そしてハイな気分はどこまでも空の高みに舞い上がり、収まるところに収まった自分に着地。

自由度満点の姿は絶好調。
熱風が吹き荒れる真夏の日差し。
ノイズゲートを振り切る蝉の鳴き声。
ベースギターを担ぎ、足元はハイヒール。
髪は半分ハイブリーチ。半分は地毛。
好き勝手な服を着て向かうのは自由に開け放たれた門。

自分を不条理に縛る校則も鬼の形相で立ちはだかる指導員もそこにはいない、ただの門。
年齢も職種も全てバラバラの生徒たち。
だけど皆同じ高校の生徒。

都の就学相談でタライ回しされた後、1年待ってやっと通信制の2年生に編入した。
このあと3年はたっぷり続くリベンジ高校生活。
ただし通学は月2回。
その他はバイトとバンドで転がり続ける日々!

「ROCKやってるのか?」
月2回のスクーリングの登校時に担任教諭が声をかけてきた。

「はい。これで食べていこうと思います」
と、即答。

担任は日焼けした顔で首を傾げながら
「お、頑張れよ!」

初夏の日差しに逆光で見た少し眩しそうな顔。
その時から彼は私の良き理解者になった。

単位制、スクーリング、レポート提出。
今日は現代国語のテストが戻ってくる日。
私はいつも教室の後方の席に座る。

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