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タッチアンドゴーがお得意なパイロットの話



オフィサー(士官)とエンリステッド(志願兵)

米軍人と関わり始めて、軍隊という組織の上で当たり前なのだが興味深かったことの一つは、厳しい上下関係の存在と秒単位・ミリ単位の細かい規律にアメリカ人が従順に応じていることだった。というのも、短期間だがアメリカの高校に通った際に、堂々とパジャマで登校し、足を机に乗せて虫の形をしたグミを教室でもぐもぐ頬張り、放課後は車を乗り回して友達とダラダラあそびまくるフリーダムなアメリカ人高校生を知ってるからだ。つまりはアメリカ人にとっても、軍隊というのは特別な組織に見えているのであろう。

 その中でランクと呼ばれるカースト制度があり、詳しくは触れないが大きく分けるとオフィサー(士官)とエンリステッド(志願兵)という立場が存在する。この中でまたランクが細かくわかれているのだが、個人の事情から安定した生活基盤を作るきっかけを求めて、高校卒業すぐに人生の【フェーズ】として入隊してくるエンリステッド(志願兵)に対して、大学を卒業してオフィサーになるコースをパスした後に【キャリア】として入隊するオフィサー(士官)は、歳が上だろうが下だろうが在籍期間に関係なく、入隊したその時から志願兵の上に立つ、格上の立場なのだ。ミリタリー好き女子の中には『O(オフィサー)としかデートしない』という方もいるらしい。本人も、事情がわかっているミリタリー通もオフィサーは格別、ということは暗黙の了解なのだ。

だがしかし、身の程知らずか、怖いもの見たさか。誘われたからといって無邪気にもそのラビットホールに落ちた哀れな女がここにいる。

みなさんこんばんは、しくじり女です。

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早い段階での『コーヒーでも飲みませんか』

【デートプロフィール】

名前:パイロット
ルックス:白人、青い目、薄毛、金髪
年齢:30歳
職業:エアフォース オフィサー、しかもパイロット

 しくじり女の狩りツール、Bumbleを介してマッチしたのはなんとエアフォースのパイロットだった。世間でいう『実家に連れて帰ったら親が両手放しで喜ぶ』相手には間違いないが実のところ、私は世間一般受けするような職業の人にはあまり魅力を感じたことがなく、ましてや立場がある人や権力の香りはなんだか自由をコントロールさせる気がして後退りしてしまう傾向があった。そういうハイスペックな方と私は見合わない、と潜在的にどこかで思っている節があったのかもしれない。その彼は返事も遅いし、きても特に盛り上がるわけでもなくお互いの1日のスケジュール交換会をしているような内容だった。そのほかにもっと面白いやりとりをしていた方はいたが、パイロットは面白くはないが思い切りはいいようで一番乗りで今週末会ってみない?といってきた。

まあサクッと会ってみるかーと、こちらも軽いノリで、コーヒーデートを約束をした。

たった1時間で、一体この僕の何がわかると言うのだろう?

ザ・ブルーハーツ出てきたわ。当日、とてもありきたりなカフェに招待され、サクッと1時間たわいもない話をした。思い返せば別に面白いことは何もなくて、彼のお父さんもパイロットで、大学卒業後別に何もやりたいことがなかったから父親に説得されてこの道を選んだことや、休暇には家族とタイムシェアリゾートで過ごすなど、まあ私が今まで出会った海兵隊の苦労人たちとはうって変わって、典型的な上位中産階級のおぼっちゃまだった。例えるならテレビシリーズ『Sex and the City 』のシャーロット・ヨークが付き合いそうな御子息だ。

私も次の予定があったのだが、軍人らしく彼はきっちり1時間でコーヒーデートを畳み、車まで送ってくれてお開きとなった。

冷静に振り返れば、確かに特に盛り上がったわけでもなく、彼から君のことが知りたいというギンギンなオーラを感じるわけでもなく、やや挑戦的な波のある海を、SUPボード上に正座して、落ちないように必死に腹筋に力を入れ続けた、そんなデートであった。

そしてもちろん事件は起こる

1日の終わりにお礼のメッセージを入れた。拒絶というものは辛いものだが、ベストパートナーと出会うためには受け入れなければいけない。しかし、一回のデートで相手の何がわかるというのだろう?一回であかんて、それもう容姿の好みが❌やったってことやろ?そんな彼からこんなメールが返ってきたのだ。

彼:I didn't feel any connection between us and I don't think we should continue talking to each other.

 (僕たちあまり共通点があるように感じなかったから、もう連絡をとる意味がないと思う。)

Good luck!(じゃ、がんばってね!)


こんな「ごめんなさい」メールが来て、対して私も大人な対応をせねばと咄嗟に

Same to you !(あなたもね!)

と返信した。

その2秒後、秒殺でマッチ解除されたのだ。さすがパイロット、華麗なタッチアンドゴーを披露!!(爆笑)

人生において、アプリで出会った男性から拒否されたことも、マッチ解除されたこともなかったので、これは洗礼だった。というのが、よっぽど命の危険とか生理的に受け付けないとかあるならまだしも、そこまでする必要ある?それとも私、危険な女っぽかったのかしら。

悶々と、男友達に出来事を報告したら一言。

『おお、well done (よく出来ました)。』


ん??なんでよ?

ん・・・・・

んあ???

Same to you !(あなたもね!)


私が「お互い頑張ろうね」の意図で返信したこの一言。どうやらダブルミーニング(2つ意味)を持たせられた模様で

『お前もな(私も全くあなたに興味なかったわ、ハゲ)。』

と、全く意図しないところで自分を防御した上で、鋭利な刃物、一撃で相手を成敗していたのだ。おそらく挫折を知らず、オフィサー・パイロット・青い目しかも白人というWASPの超特権階級で育ち、ハゲでもチヤホヤされてきたチビ男がまさかの自分より下層階級の『好みじゃない、外国人』に拒否返しされるとは夢にも思わなかったのかもしれない。

申し訳ない、そんなつもりは本当になかった。

なかったんだけど、そうだったのかもしれないと想像が膨らめば膨らむほど、全ての出来事が爆笑でしかなくなり、私のプライドも少々癒されたのだった。


終わり!

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