ホームがあるから出かけていける

【毎週火曜更新・時間堂、年商1億プロジェクト14】時間堂P大森晴香です。ごきげんよう。今日のお昼まで札幌にいました。成田に降りたってしばらく屋外通路を歩いたのですけど、屋内だと思いこんだくらいには気温差がありましたね。関東の最低気温より札幌の最高気温の方が低かった。道路に雪が残っていて、踏ん張って歩いていたから足腰ががたがたです。

でもなんでだろう。雪を見るとなんかキラキラした気持ちになっちゃうのは。

…浮かれ舞い上がる私の道中は、Twitterでどうぞ。【時間堂P札幌に行く】というつぶやきを22回しています。こういうときはハッシュタグを使えばよかったんだなぁ。いまさら。

さて。ここではTwitterでは触れていない、札幌で考えたことを。

今回の札幌訪問は、intro『食卓全景』とプロジェクト・アイランド『アイランド―監獄島』の観劇を軸に計画しました。

introは札幌の劇団で、去年の時間堂札幌公演の準備段階からものすっっごくお世話になってる方々です。コラボ企画をやったり、時間堂がintroのイトウワカナさん作『言祝ぎ』を上演したり、縁の深い劇団です。なのに。なんと、肝心の作品を観たことがなかった。去年はちょうど同じ時期にお互いがツアーしていて、introが東京に来た時は私たちは大阪にいたのです。

一方、プロジェクト・アイランドは、昨年の札幌劇場祭TGR大賞のチームです。去年はちょうど、私たちの札幌リハーサルの時期が公演でした。私だけでも観に行こうか迷ったんだけど、あきらめちゃった。そしたら時間堂は特別賞、つまり2番。『アイランド』は大賞、つまり1番。悔しかった。東京でキダハシワークスがやった『島 The Island』も観て、頭がくらくらするくらいおもしろくて、観なかったことをがっつり再後悔をした

そんなある日。タイミングよく、時間堂の情報通・阿波屋鮎美から「バニラエアがセールをやってますよ」と甘いささやきが。。。これは札幌が呼んでる気がする。。。しかも公演日が連続している。。。行ける、行けるわこれ。。。

で、行ってきました。両方観ました。どちらも恋焦がれてやっと観れたわけですけど、その期待を裏切らない、超えてくる観劇体験でした。

introは東京公演があるから詳しくは書きませんけど、緩急自在に駆け巡る俳優たちが「そこにいる」ことが信じられる演劇でした。はっきり言って、好みです。打ち上げにまで図々しくお邪魔しまして、作品と俳優が一番活きる上演を目指してるってことを聞いて合点がいきました。それは作演出のイトウワカナさんの姿勢であると同時に、チームにいるすべてのひとたちがそこを目指しているんだと感じました。チームで最高のものをつくる体制があるんだってことが本当に素敵だし、素直に羨ましいと思いました。introは、これからももっともっとおもしろくなると思います。イトウワカナという才能もすごいんだけど、彼女一人分の才能だけでは届かないところに、集ったひとびとの相乗効果で手を伸ばしていくんだと思う。

プロジェクト・アイランドには圧倒されました(これもまだ上演が続いているので具体的な場面とかは書きません)。ふたりの俳優の説得力に脱帽で、大賞を獲ってくれてありがとう、とさえ思いました(TGRは大賞を獲ると翌年の会場費無料で公演ができます)。韓国のチームだったので字幕付きの上演で、正直なところスピードがあがると字幕は追いつけなかったところもちらほら。それでも徹頭徹尾、観ている側の集中を途切れさせない。あぁこれがプロだ、国とか言葉とか文化とかいろんなものをやすやすと飛び越える本物のアーティストだ、とカーテンコールでばしばし手を叩きながら思いました。あのカーテンコールもすごかった。あの突き抜け方があるから、私はちゃんと現実に帰ってこられました。

なんか劇評みたいなこと書いちゃった。でね、ここからが自分とこの話。

introもプロジェクト・アイランドも地域や国を超えて作品を発表しているわけです(introは今回は地元だったけど、もうすぐ東京公演です)。これってやっぱりすばらしいよね、と改めて思いました。演劇を通じて社会と出会う、ということだと思うのです。そして昨夜、札幌で演劇活動している友人たちとジンギスカンをつつきながら演劇談議に花を咲かせたんですけど、「ホームがあるから出かけていける」という話が出ました。時間堂はtoiroan 十色庵というホームがあるけど、そこに籠るんじゃなくてそこから出かけていくことができる、とても素敵なことですね、と。これは自分たちもよく言ってきたことなんだけど、劇団外の方からも言っていただけたのがとても嬉しかった。そうそう、そうなんです!と鼻息荒く賛同しました(笑)。

時間堂は年明けからレパートリーシアターを始動します。ものすごく端折って言うと、toiroan 十色庵で毎月公演をやるよ、ということなんですけど、これが実現すると、同時に実現可能になる活動があるのです。

それは、演劇の出前

今までのツアーは劇団総力戦、他の活動はいったん休み、という規模でした。気軽にひょいっと他地域にいくのは、公演よりもワークショップが多かった。単純に、事業のフットワークに差があった、というだけで、「大きな公演しか他地域公演はしない」なんてツユほども思っていません。レパートリーが持てれば、いつでもどこでも演劇を持って訪ねていける。それはtoiroan 十色庵という場所と、時間堂というカンパニー、両方が揃っているからこそできること。場所だけあっても、劇団だけあってもできないことが、私たちはできるんだという喜び。

場所を維持することも、劇団が持続することも、いつだってタフなことが目白押しです。ソトヅラのいい私は劇団外では機嫌のいいふりをしますけど、そんな年がら年中ゴキゲンで劇団経営できるわけではありません。むしろ、些細なことで感情的になりがち。プレッシャーとかプライドとか緊張とかストレスとかに、決して強くはありません。

それでもホームにこだわるのは、私たちならできることがあって、それがときめくものだから、なんだと思う。後に引けないって意地だけなのかなーとか考えた時期もあったのだけど、レパートリーシアターいいでしょ?演劇の出前もときめくでしょ?という気持ちに嘘は1ミリもないのです。

toiroan 十色庵でつくって、発表して、出かけもする。楽しみな2016年がすぐそこです。わくわく。

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お知らせを3つ。

intro東京公演の前に、12/3木20:00からintro前回公演『蒸発』の上映会をtoiroan 十色庵でやります。なんと札幌と中継をつなぐよ。introの皆さんは、劇団員ののしろさんちで鍋を囲みながら中継するとかいうウワサ。ご予約はこちらから

そして演劇の出前、第1弾。12/19土15:30くらいから王子小劇場で、intro東京公演にイトウワカナ作『言祝ぎ』を出前します。12/19土14:00の回を観るか、他の回のintroの半券を持っていくか、その場で夜以降のチケットを買えばなんとタダで観れちゃう。出前がタダなのは今回だけ(かも)!

レパートリーシアター本格始動の前にプレビューやります。試演会、という感じですけど、本気で作ります。観に来てください。プレビューだから半額だよ。ご予約はこちらから

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実は札幌では来年に向けたときめきの出会いもありました。札幌に行ったからこその出会い。出かけて行ってよかった。私自身は超インドアなんだけど、ひとに会いに行くってのはいいもんだなぁ。

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おまけ。京都にはこーんなキャッチフレーズの理髪店があります。時間堂と演劇に惜しみない愛を注いでくださるスーパー理容師・定元さんのお店。京都に行ったらぜひお立ち寄りください。時間堂のアンテナショップですか?って気持ちを味わえます。そのうち京都にも拠点ができたりして。

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