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猫と私の主従関係

我が家には16歳になる猫がいる。

私は彼女の僕(しもべ)である。

彼女との出会いは大雨の日だった。
雷も鳴り響き風も轟々と吹き荒んでいた。
その週はずっと大雨が降り続いていて、彼女は三日三晩、雷の轟音にも負けじと泣き続けていた。
我が家には当時既に先住猫が居たので、もう猫は増やすまいと考えて保護を躊躇っていたのだが、余りにも泣き続ける為保護をする決意を固めた。
鳴いているらしき場所へ行くと、雨粒がバタバタと降りしきる中、白い小さな毛玉がピャーと逃げていった。
呼びかけると立ち止まってまた大きな声でひと鳴きした。
連れて帰るの一択だった。
壁際まで追い詰めてヒョイと抱え上げた。
親の姿は近くにはない。
三日三晩泣いても来なかったのだろうと思った。
腕の中の小さな白い毛玉を雨から守りながら家へ連れて帰った。

そうして私は彼女の僕となった。

彼女が鳴けば何でもする。
ご飯をあげトイレの世話をし遊び相手をし
次第に鳴かなくても何をして欲しいのかわかるようになってきて
その目線一つで察する力を身につけた
ひたすら彼女の機嫌をとる日々
でも嫌じゃない。むしろ喜んでやっている。
彼女の瞳には魔力が秘められていて、見つめられるだけでそれだけで幸せになれるのだ。
なので彼女の世話をするのは何一つ苦ではない。
嘔吐の後片付けも機嫌の悪い時の八つ当たりも
寒い日に毛布を占領されるのだってなんて事ないのだ。
彼女の為ならば微動だにせず枕にもなるし湯たんぽにだってなり切る。

他人から見れば飼い主という立場だが
私は彼女に仕えているのだ。
報酬は彼女と過ごすかけがえのない日々である。彼女と出会えた事を私は本当に感謝している。

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