通常学級担任のための発達障害児教育 入門編1
はじめに
子どもたちは、無限の可能性を持っている。
特別支援教育に関わってきて実感したのがこの言葉です。
筆者らが参加する特別支援デザイン教育研究会では、発達障害を持つ子どもへの支援コンテンツの作成やそのご家族、支援者が家庭や地域で活用できるWebサイト「特別支援教育のための教材」を構築してきました。
平成17年に、「インターネットが発達したのなら簡単にアクセスできる環境を生かして特別支援教育に役立てられないだろうか、診断から手だて、そして教材までの専門的な知識や情報が手に入らないか」と考える現場の先生たちや地域社会の関係機関の人々、保護者たちの願いがありました。
こうした願いの受け皿として、上野一彦(東京学芸大学名誉教授)を会長として「特別支援教育研究実践委員会」が立ち上がりました。
同年から「子どもゆめ基金」(独立行政法人国立青少年教育振興機構)の教材開発・普及活動に参加、Webサイト「特別支援の教材」は、特別支援教育への願いと子どもたちへ気持ちを結ぶべく、情報教育の専門家や特別支援教育の専門的な知識を持つ人たちが集まり特別支援教育を必要とする子どもたちへの支援が行えるようにという思いからスタートした取組です。
現在も、名称を特別支援教育デザイン研究会(会長 前迫孝憲 大阪大学名誉教授)と変更し、障害を持つ子どもの自立と社会参加を目的に、特別支援教育に関わる教職員や保護者、地域のボランティアへの支援の一環として、様々な専門家の連携により教材開発と普及に取り組んでいる研究会として、文部科学省「子ども夢基金」のご支援をいただき、活動を継続しています。
見えない困り感についての対応は悩みの種でした。
はじめて発達障害という概念に出会ったのは小学校で先生をしていた頃です。若い頃、学級をどうまとめるかで悩んだことは何度もありました。今になって考えれば、自分の意のままに動く学級集団、ある意味で管理しやすいクラスを作りたかったのだと思います。
自分の意のままの学級を作りたいと思う気持ちが強すぎると目の前のこどもが見えなくなることに気づけなかったのかもしれません。もしご家庭でも、誰かがその家族を意のままに動かそうとするなら「家庭のトラブル」の種になることは間違いのないことだと思います。
周りの先輩たちがみんな、担任の意のままに活動し行動する学級を作っているのに、自分はできていないということへのいら立ちや焦りがありました。
子どもたちが「みんなに迷惑をかけない」「みんなと同じことをする」こと。その頃は、そんなことは簡単なことで、それができることが普通なのだと思っていました。
そうした気持ちを持ちながら基礎学力の定着の取組と教育相談の取組を始めました。
幾度もの試行錯誤の中で筆者が一番大事にしてきたのは「子どもも担任も安心できる居場所」でした。それが教室という空間と授業という時間のなかで作れないかと考えました。
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