私がしょっていたものを軽くしてくれた妻に感謝!
私は妻と愛犬と暮らしています。私と妻は共に自分たちの子供を連れての再婚です。いわゆるステップファミリーですね。私は田舎の8人兄弟の長男である父親のもとに生まれました。姉が一人いますが、母は小姑たちから「男の子を生まなきゃダメ!」と言われて生まれたのが私。私が生まれて母はホッとしたようです。
あんたは跡取りやから
幼少期の私は家の跡取りとして育てられました。
と言ってもそんな教育を受けたのではなく、法事などイベントごとがあるたびに親戚たちから
「あんたはこの家の跡取りやからな」
と言われていたのです。
それだけです(笑)
跡取りだから○○をしなければいけない、そんなことを言われたことはありませんでした。
だから私は跡取りがなにをするものかが分かってはいませんでした。
おぼろげながら頭にあったのは、法事などの時になんだか最初に挨拶なるものをしなくてはいけない。親戚が集まって食事をするときに乾杯の音頭を取らなければならない。
そんな感じでした。
あ、もう一つあったのは自分は生まれた家に住み続けるというイメージもありましたね。
人見知りになりました
私はそんな幼少期の頃、近所の人にはちゃんと挨拶をするように母親からは口をすっぱくして言われていました。
そして近所の人には「良い子」だと思われるようにふるまわなければならないと考えるようになっていったのです。
小学生時代の私は「大人しくて良い子」のイメージが定着していったのです。
このようなことがあって私は人見知りになりました。
例えば街中で近所の人が目の前から歩いてくるのが見えると、道路わきの電柱などの物陰にかくれてやり過ごしたり、下をみながら歩いて気づかないふりをしていました。
面と向かって挨拶をして、何か失敗をしでかすようなことがあってはいけない、そんな風に考えていたのです。
前妻が家を出ました
時は過ぎ、私も会社員になりました。
入社した会社は実家から遠くて寮で暮らしていました。
私の人生は順調でした。
親の言う通り、いい学校に入っていい会社に入りました。
若くして前妻と結婚し、私の跡取りとなる息子も生まれ社宅に住むようになりました。
息子が小学校を卒業するころ、路線や電車も進化して私の実家から勤め先まで通えるようになっていました。そこで私は家族にあまり相談することもなく実家に帰ることを決めたのです。
こうして片道2時間の時間をかけての通勤が始まったのです。
息子が高校を卒業するころ、跡取りとなる息子をおいて前妻は家を出ました。
私との老後の生活がイメージできないというのがその理由でした。
跡取りを養子に!?
話は変わって、父が亡くなってからのこと。
それまでお盆や正月、法事などの時は7人の兄弟たちがそろってうちに集まっていました。
そんな親戚の人たちが父が亡くなるとパタッと来なくなったのです。
私はそれでもこの家の長男として後を継がねばと考えていました。
そんなとき、今の妻と出会って母親と一緒に暮らし始めました。
何年かが過ぎて息子が結婚したいという彼女を連れてきました。
そのとき今の妻が言った言葉に私は耳を疑いました。
なんと息子の名字を変えて養子に出すように言ってきたのです。
その理由を聞いてみると、私の母が原因でした。
母は8人兄弟の長男の家に嫁いでけんめいに家を支えてきました。
そして「長男の嫁とはかくあるべし!」という信念を持っていたのです。
その信念を前妻や今の妻にも見習うようにといった言動があったようです。
息子が結婚したら彼女に対しても母はそんな態度で接することは目に見えている。そうなると彼女は家を出ていくことになるというのです。
迷う私に妻がかけた言葉は
「イエ」と息子の幸せとどっちが大事?
私は長男として跡取りに「イエ」を繋げないことを悔いていたのですが、妻はそんなことよりも息子がどうなれば幸せになるかを考えていたのです。
私にとっては苦渋の決断でしたが、養子に出した息子はいまでも幸せに暮らしています。
しょっていたものを手放す
母もこの世を去った後、妻は私に実家を処分することを提案してきました。
確かに父亡き後、誰も寄りつかなくなった家。
私が家を渡すはずの息子も養子に出て幸せに暮らしている。
ならばこの家を私が持っていても後に住む人はいない。
残していても息子たちの負担になるしかありません。
なにをどうすればいいかわからない「跡取り」としての目に見えないプレッシャー。それをしょって生きてきた私の身が軽くなったのは良きパートナーとしての妻の存在があったからこそです。
実家を処分した私は娘家族の近くで妻と愛犬と一緒に住んでいます。
そしてたまに遊びに来る孫たちに「じいや」と呼ばれる日々を楽しんでいます。
妻と二人で愛犬を見送った後はあちこちを旅して暮らそうと思っています。
感謝の気持ちを込めて。
じいやより。
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