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【コラム】ブッカー賞とは?

正式名称はThe Booker Prize
1968年に創設されたイギリスの最も権威のある文学賞の一つで、創設年の翌年1969年に第1回の表彰が行われました。

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〇対象作品は?
前年10/1から選考年9/30までの期間中に英語で執筆され、英国とアイルランドで出版された長編小説。
同一作家が複数回受賞することもあります。

〇選考方法は…?
賞選考は大きく下記の流れで行われます。

① 諮問委員会が選考委員を決定
② 選考委員と出版社による選考対象作品の選定(銘柄非公開)
③ 選考委員会による受賞候補作(longlist)の選考
④ 選考委員会による最終候補作(shortlist)の選考
⑤ 選考委員会による受賞作の選考

【選考委員】は文芸評論家、学者、編集者、小説家、高名な人物などから、性別などのバランスに注意して選出されます。
【選考委員】は毎年変わり、2度選ばれることは滅多にありません。
今年2021年の選考委員はMaya Jasanoff、Horatia Harrod、Natascha McElhone、Dr Rowan Williams、Chigozie Obiomaの5名。作家、編集者、俳優、学者、教師など様々な肩書を持っている人々で構成されました。

また、今年の規約によると、審査対象作品は、
① 過去のブッカー賞受賞者・ショートリストまで残った実績のある作家の期間内発売新刊全点
② 英国出版社による推薦作品(2016年から今までのロングリストに入ったタイトル数により上限あり)
だったようです。
加えて選考委員が推薦図書としていくつかの候補作を上げていくこともあるようなので、上記2定義に当てはまる作品以外にも候補作として取り上げられている可能性は高いです。

選考対象作品が集まったら、その後選考委員がロングリストの選考に入っていきます。

つまりブッカー賞選考フローは「選考委員の決定がされて、その選考委員と出版社が審査対象作品を選出、その中から受賞作を選定する」という流れになっています。

有識者が選ぶその年最高の小説賞…日本で言うところの直木賞に近いのかもしれません。

〇今年のブッカー賞は…?
英国時間2021年7月21日に受賞候補作(longlist)が発表され、ノーベル文学賞を受賞した日本をルーツに持つ英国人作家、カズオ・イシグロ氏の「Klara and the Sun(邦題:『クララとお日さま』)」がノミネートされました。
一方で同年9月14日にブッカー賞最終候補(shortlist)の発表では候補外となり、同年11月3日に南アフリカのデイモン・ガルグート「The Promise」が受賞作として決定しました。
ブッカー賞の公式HPはこちら

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☆直木賞との比較

画像5※大衆小説…「娯楽性」「商業性」を重んじる小説で、読んで楽しい!と感じるエンターテイメント作品のこと。

ベテラン作家が選ぶ、「新進中堅作家が書いた新刊小説のうちその年最も面白い小説に贈られる賞」が直木賞。
「業界注目度の高い作家が書いた最も面白い小説に贈られる」のがブッカー賞。
と言えるでしょう。
一方で「純文学」に近い作品がブッカー賞に選ばれることも多いそうなので、読み応えの感覚としては芥川賞受賞作品に近いのかもしれないですね。

ちなみに「ブッカーバウンス」と呼ばれるロングリスト、ショートリスト、受賞小説は、売り上げが劇的に増加することで有名です。
実際に英国では2020年の受賞作は受賞発表後1週間で25,000部以上売り上げており、これは発表の前の週に比べて1900%の売上増加とのことです。
ブッカー賞に対する注目度がうかがえる事例の1つです。

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(参考)
「The Booker Prize」
「The 2021 Booker Prize for Fiction Rules&Entry Form」
「コトバンク」ブッカー賞
「ウィキペディア(Wikipedia)」ブッカー賞
「公益財団法人日本文学振興会」各賞紹介
総務省統計局 書籍新刊点数と平均価格
MARKETLINE「Publishing Global Industry Guide 2015-2024」
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所「出版指標年報2020」(9784915084072)
International Publishers Association (IPA), WIPO「World Intellectual Property Indicators 2020」