桜の季節17

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「ん?なんか言うたか?」

「いえ!そんな事より大事なお話しをそろそろ聞いて頂きたいのですが。」

「ああ、なんじゃい言うてみい。」

「はい、えーと。なんて言えばいいんですかね。」

「ん?」

「貴方は明日死んでしまいますが、貴方の願いを叶えてあげたいのです。」

「願い?」

「はい!あるでしょう?やり残した事が。」

「もっと生きていたいのう。」

「それは無理です。いや、できるのか?」

「どっちなんじゃ!」

「いいえ、どちらでもありません。明日から2日間だけ生きてもらいます。」

「2日?たった2日生き長らえただけで何も変わらんわ!」

「ただ生き長らえるだけではありません!その2日間貴方は昔に戻るのです。」

「昔に?」

「ええ!貴方は若返った姿でその2日を生きてもらいます。」

「若返る?昔の姿に戻れるのか?」

「ええ、見せてあげたいんでしょう?一雄君に強かった昔の姿を。強さとは何かを伝えてあげたいんでしょう?」

「一雄に……。」

「それが……。」

  スレイブは何かを言いかけたが思い留めた。

「それが?」

「いえ!なんでもないです。さぁ、早速取り掛かりますよ目を閉じて。」

「ああ、分かった。」

  スレイブは目を閉じた庄之助の額に手を伸ばした。すると、暖かな桜色の光が2人を包む様に光そして消えた。

「はーい、OKです。」

  目を開き自分の身体を見回す庄之助。

「なんじゃ?何も変わっとらんぞ?」

「すいません、明日までには変化があるかと思いますので。」

「なんじゃいケチケチするなよ。」

「ケチって!……仕方ないでしょう私にはそんなに力がないんですから。」

「ははは、すまんすまん。しかし、明日が楽しみじゃわい!」

  台所から葉子と一雄が部屋に入ってきた。

「おじいちゃん、ご飯できたよ~。」

「ごめんなさい遅くなってしまって、お腹すいてるでしょう?」

「いやいや、大丈夫じゃよ。ちょうど腹が減ってきたとこじゃ。」

  そう言いながら庄之助はお腹をさすってみせた。

「どうしたの?急に元気になったみたいだけど。」

「ははは、ちょっとな。」

「よかった、おじいちゃんが元気になって。」

「ん?心配かけたかのう?」

「ううん、全然!行こう!今日はご馳走だよ!」

「一雄!お父さん、いつもと変わらないからね。」

「あー、お母さん嘘ついてる。いつもより豪華だよ。」

「こら、一雄!」

  楽しそうにリビングへ向かう3人、香ばしい香りが漂ってくる。その姿を見つめるスレイブは庄之助の後ろ姿に向けてつぶやく。

「しっかり一雄君に教えてあげてくださいね。それが……、それがあの桜の願いですから。」

  そう呟くとスレイブの姿が消えた。部屋には一家団欒の楽しげな声が響いていた。

つづく

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