マガジンのカバー画像

読み物「桜の季節」

32
むかし書いた舞台の台本を小説風に連載中。死神と桜の精が織り成すファンタジー。
運営しているクリエイター

2020年7月の記事一覧

桜の季節10

桜の季節10

前回の桜の季節はこちら。

「私はいいんです。この辺りも近代化が進み、私たち植物には住みにくい環境になりつつあります。思った様に根もはれず、このままではもっても20年ほどといったとこでしょう。」

「しかし、本来死ぬ予定の人を生き長らえさせたら……。」

「未来が変わってしまいますか?」

「私たち死神には未来はか分かりませんから、そこまでは言えませんが。何かしら異変は出るのでは無いかと。(小声で

もっとみる
桜の季節11

桜の季節11

前回の桜の季節はこちら

  承諾も得ずに賭けを始めた桜の精にスレイブは。

「待ってください!」

「え?」

  桜の精は投げたコインを上手くキャッチした。

「ど、どうしたんですか?途中で止めるなんて卑怯ですよ!」

  許可も待たずに賭けを始めた自分は卑怯じゃないのかとツッコミたい気持ちを押えてスレイブは冷静に言う。

「すいません、しかしどちらが表でどちらが裏かちゃんと決めて頂かないと賭

もっとみる
桜の季節12

桜の季節12

前回の桜の季節はこちら

  なんとコインは両面同じ図柄だった。両面が同じ図柄になるように2枚のコインを合わせて1枚にしたものだった、初めにスレイブに見せたコインとは別物だったのだ。

「やっぱり!神木の精ともあろうものがイカサマですか?」

「うっ……。」

「こんなの何処で手に入れたんですか?」

「昔に庄ちゃんが私の上に忘れて行ったものです。」

  観念したのか桜の精は初めのコインを着物か

もっとみる
桜の季節13

桜の季節13

前回の桜の季節はこちら。

  スレイブは桜の精の魂を自分の中に取り込み、新たな力に変え庄之助に与える事にした。

  その昔、同じ様な事を行った覚えがあった。ある子供の魂を迎えに行った時だった、その子供の親に姿を見られてしまった事があった。子供が死んだら自分も自殺するつもりだったのだろう。その子の親はスレイブにこう言った。

「私の命はいりません、代わりに息子の命は助けてください。」

  そう

もっとみる

桜の季節14

前回の桜の季節はこちら。

  葉子は急に立ち上がり。

「それじゃ、私は夕食を準備するわね。お父さんは一雄と一緒に待っててもらえるかしら?」

「ああ、分かった。」

「すぐに用意できると思うから。」

  そう言って葉子は台所へと向かった。一雄はテーブルの急須から庄之助にお茶を入れた。

「はい、おじいちゃん。」

「おお、ありがとう。」

  庄之助はお茶を啜った。一雄は目を輝かせ問いかけた

もっとみる
桜の季節15

桜の季節15

前回の桜の季節はこちら

  庄之助が[江戸彼岸]と書いたノートを見つめながら一雄は庄之助にお礼を言った。

「ありがとう!おじいちゃん!」

「確かな、ちゃんとした広い場所に生えて入れば1000年も花を咲かせるそうじゃよ。」

「え~!1000年も?」

一雄は流石に1000年は信じられないと言った表情をしている。

「ハハハ、明日調べるんじゃろ?」

「うん。」

「そうしたら嘘か本当かわかる

もっとみる
桜の季節16

桜の季節16

前回の桜の季節はこちら

  庄之助はテーブルを拭きながらスレイブに尋ねた。

「大事な話し?ワシが死ぬのは明日なんじゃろ?それとも何か?もうワシの事を殺しに来たのか?」 

  庄之助はそう言いながらスレイブの方に振り向いた。しかし、そこにいたのはスレイブではなく葉子と一雄がタオルを持って立っていた。

「殺すだなんて……。お父さんをどうして私が?」

「え?いや!違うんじゃ!」

  スレイブ

もっとみる

桜の季節17

前回の桜の季節はこちら

「ん?なんか言うたか?」

「いえ!そんな事より大事なお話しをそろそろ聞いて頂きたいのですが。」

「ああ、なんじゃい言うてみい。」

「はい、えーと。なんて言えばいいんですかね。」

「ん?」

「貴方は明日死んでしまいますが、貴方の願いを叶えてあげたいのです。」

「願い?」

「はい!あるでしょう?やり残した事が。」

「もっと生きていたいのう。」

「それは無理で

もっとみる
桜の季節18

桜の季節18

前回の桜の季節はこちら。

──次の日4月20日、庄之助宅。

  桜の木はすっかり枯れてしまっている。中庭にものすごい勢いで走ってくる青年、どうやら本当に若返った庄之助のようだ。

「ウォー!すごく体が軽い!こんなにも早く動けるものなのか!」

  スレイブが追いかけて中庭にやってくる。

「ちょっと!もう少し静かに!」

  庄之助は立ち止まり。

「ん?なんでじゃい?」

「一人暮らしの老人

もっとみる
桜の季節19

桜の季節19

前回の桜の季節はこちら。

  スレイブが庄之助を追いかけていってから10時間以上が経っていた……。辺りは茜色に染まりつつある。スレイブと庄之助は一体どこで何をしているのやら……。取り残された様に枯れ果てた桜の木が、風に枝を泳がせている。

  すると、そこに怪しげな影が2つ忍び寄ってきた。

「すいませ~ん。誰かいらっしゃいますか?」

  男はさしあし忍び足で中庭に入ってきた。後を追ってもう1

もっとみる
桜の季節20

桜の季節20

  前回の桜の季節はこちら。

  うろたえる2人の前に足音の主が現れる。

「おじいちゃん!」

  足音の主は一雄だった。怪しい2人に気づいた一雄は問いかけた。

「おじさん達誰?」

「お!おじさんだと!」

  見つかった事よりも、おじさんと言われた事にショックを受ける東。彼はまだ28歳であった。そんな事とは露知らず一雄は2人に。

「分かった!あなた達が桜の精さんですね!」

  一雄は

もっとみる
桜の季節21

桜の季節21

前回の桜の季節はこちら

「ふ〜ん、そうなんだ。」

  山路も何故か納得してる。

「痛い!」

  一雄に分からないように東が山路の頭をまた叩いた。

「しっかり話を合わせろ!」

「すいません……。」

  そんなやり取りをしていると、玄関の方から騒ぎ声が近づいてくる。

「もう、はやく!こっちですよ、戻りましょう!」

「おい!離せよ死神!」

「いったい何のために若返ったと思ってるんです

もっとみる
桜の季節22

桜の季節22

前回の桜の季節はこちらから。

庄之助は東達に問いかけた!

「その子をどうする気だ!」

「はぁ?なんの事だ?お前には関係ないだろうが。

東はすっとぼけている。しかし、何やら山路の様子がおかしい。

「クソー!まさかこんなにも早くバレるとは!どうしますか兄貴!」

「おい!まて!お前は何を言ってるんだ?ちょっと黙ってろ!」

しかし、全く話しを聞いてない山路は続けた。

「俺たちがこの家に空き

もっとみる