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スポーツにおけるリアルタイム分析の未来 ~ひとりひとりが"「おしん」と"(OSINT)化?~

現代のスポーツにおけるプレー分析は、複雑化と"間口の広がり"の高速化が無茶苦茶なペースで進んでいると感じます。暇さえあれば誰でもTwitterでプレー分析ができ、プロチームの間でもツールを使うことは珍しくなくなりました。昨今ではそれ専用のツールを販売する企業のアカウントも複数出てきており、今後ますます競争が激しくなると個人的には思っています。

そんな中で私が注目しているのが「OSINT」と呼ばれる手法です。これは一般的に公開されている情報をひとりひとりが考え、読み取り、独自の情報を得るという、いわゆる「諜報活動」のひとつでもあります。現代のリアルタイム分析は、元をたどればこのOSINTにあたるものではないかと思うことが多いですが、果たしてそれはどこまでほんとなのか、そしてその未来はどうなるものかと、ちょっと考えてみようと思います。

野球に見る「情報」の層の違い

写真の位置情報から住所を割り出したりしている「特定班」なんかはよくネット上で聞きますよね。あれも「OSINT」の一種で、「合法的に入手できる資料」を「調べて突き合わせる」というものが基礎の基礎です。

野球、ひいてはスポーツ分析において、「存在する情報」と「意味のある情報」は違ってきます。「存在する情報」は成績やセイバーやらスプリント回数やらの数字情報と、プレーでの動き、映像、動体分析がそれにあたり、「意味のある情報」はそこからの判断の材料として用いられる、例えるならお股ニキさんとかARAさんとかseVenさんのツイートみたいなものを指すと個人的には考えています。

現代の世の中で、数字だけでスポーツを分析する人はまれです。というかあってはならないと思っています。日本だけならまだいいんですが、非常に難しいのは手軽に現地に行ってみることのできない海外のリーグのプレー分析。あそこには「中継のカメラ角度」という魔境が存在します。角度が違うだけでも、体の動きを間違って読み取ったりしてしまう(そしてそれは日本のリーグでも起こりうる)ので、これ以上ないくらい難儀なのです。

自分だけの言葉を持つこと

ここ数年で、技術解説のブログは爆発的に増えてきました。正直まだ信じられないです。私自身もどこまでそれが本当なのか心配になりながら、いろんなサイトを常々チェックしています。また、おそらく「クレクレ君」が生まれるのはこういったものの影響があるからだと思っていて、理論"だけ"を知りたいなぁという方も、手っ取り早く強くなりたいという方もたくさんいらっしゃるのもまた事実だなぁと考えています。

個人的には、それぞれ個々人のいろんな要素(筋量とか)によって最適な技術というものは違ってくると思っていて、正直言うと「今あるバズワードは全部人の持ちうる"最大公約数"なんじゃないか?」なんて考えも持っています。それは技術的なものでもなく、戦術的なものでもそうです。例えば一時期話題になったサッカーの「インバーテッドサイドバック(偽SB)」は、究極的に突き詰めると「メッシすげーーーーーーーーーーーーーー!!!」ってなれるシステムです。もうちょっと言うと、フィールド上に全員でメッシという存在を降臨させるための儀式システム、みたいな解釈をしています。しかしながら、これもあまたの「他人の解説」がないとたどり着けないものでした。

大事なのはバズワードをそのまま理解するのではなく、自分なりの言葉に翻訳してから解釈すること。そして自分だけの表現を見つけること。これに尽きると思います。そしてそれに責任が持てるかどうか、もです。

「おしん」のようにOSINTの波を耐える

現代のプレー映像一つからわかることはさまざまです。体の関節の角度、速さ、動き方の精度、さらにはその選手が考えていることも推察できてしまうかもしれませんよね。これらは瞬く間にSNSなどのメディアによって拡散され、そして最大公約数となっていきます。たとえそれが選手にとってやさしいものであっても厳しいものであってもそうです。波というものはいったん始まったら止まらないもので、それはまるで「いびり」のようにも聞こえる時があります。私自身、いま改めて「選手への愛」が問われる時代になるとも感じるのです。

そういえば。愛というのはさまざまな形がありますね。鞭というものにも、素直な感情というものにもなります。愛から始まるこの波は収まるどころか、おそらくどんどん加速していくと思います。ただし、現在のSNSへの公開、へのやり方だけでは数年もたたないうちに波の拡大に限界が来るとも思っていて、そうなったときに「特異点」みたいなものはどこか?とも思っています。

それが「スポーツに関する何もかもがオープンソースで使える未来」です。

リアルタイム分析がプロを超える日

SNS上のリアルタイム分析は、いつかプロのスコアラーの分析を超えていくだろうと私は考えています。ただしそれは以下に書く3つの条件をクリアした時に、です。

一つ目は「自由にプレー映像が使える環境が整備されること」。まぁ正直これが一番高い壁です。放映権や収益は最大限尊重されるべきですし、何よりも自由化しまくって経営が成り立たなくなり、リーグが崩壊するのはもってのほかです。しかし、もしサブスクのような形でサービスとしてその権利を享受でき、「ブラックジャックによろしく」のように自由に使える人が出てきたら?というのは、見てみたい未来のひとつでもあります。最も、そんな貴重なもの簡単に安価で手放す世界線なんてやってこないと思いますけどね。

二つ目は「オープンソースで高性能な分析ツールが整備されること」。現在のプレー分析ツールは販売の形式をとることが多く、これがプロとリアルタイム分析の壁を大きく分けると感じます。悪魔超人が同じ超人強度でも鍛え方が違う、と言ってるのと同じで「同じ情報でも活かし方が違う」というのになっていると思うのです。もしその壁が取っ払われたら?というのは気になりますね。

最後は「映像を使う人が技術と人柄に明るいこと」です。やっぱり最後は伝え方の勝負だと強く思ってます。ここまできたらもうビジネスの世界なんですが、僕も身につけていきたいですね。

みんなにとって楽しい分析でありますように。

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