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春の山我が物顔でアライグマ


アライグマという動物を知っていますか?


そう聞かれて、知らないと答える人は少ないだろう。

しかし、アライグマがどういう動物かをはっきりと知っている人はどれだけいるだろう。

よく狸のイラストで、尻尾に縞々があるがそれは間違いで、縞があるのがアライグマである。

また、狸とアライグマは顔も全然違うが、イラストでしか見る機会がないせいか実物を見た時に両者を混同してしまう人がいる。

流石に動物園で見れば、それが狸かアライグマかは解るだろう。なにせ動物園には丁寧に何者かを表記しているのだから。だが、野生下ではどうだ。

突然目の前に現れた時、それがアライグマか狸かわかるだろうか?

動物好きであれば、解るだろうが、そうでなければ狸と思うのではないだろうか。だってここは日本である。

日本にいるのは狸。という思い込みがあろう。

ところが日本にもアライグマは生息している。

それどころか、山で見るのは大体アライグマだったりする。

そもそも狸は臆病な上に夜行性で中々人目に触れるようなところに出ては来ない。北海道に住んで数十年の私も、狸を見たのは数えるほどだ。にも関わらず、アライグマは山に行くとまま見てしまう。それも日本全土で見られる。

アライグマは外来種で害獣だ。

彼らは雑食性で何でも食べる。虫も作物でも動物でも。農家や、家庭菜園をしているひとにとってみればアライグマは害獣以外の何物でもない。

実際、農業被害も深刻で、自治体も対策に必死だ。

私はどちらかといえば、自然を愛する人間なので、外来種問題については感心が高く、駆逐して欲しいと願っているのだが、実際生きている動物を見ると、とてつもないやるせなさに襲われる。

アライグマは野生化した背景には、ペットブームで持ち込まれ飼い主が自然に還してしまったか(そもそも元々いない地域に放逐することを野性に還すとは言わないが)、動物園等からの脱走などがあり、完全に人間の無責任故だ。

そして現在は輸入・飼育などが制限されている。

ということは、今現在山に住むアライグマたちは日本で産まれて育った個体なのだ。にも関わらず、駆逐されようとしてる。ルーツである国も知らない世代にとってみれば、日本こそが生まれ故郷であるというのに。

人間のせいで移住させられたにも関わらず、また人間の勝手でその地を追われる、と考えると本当にやるせない。

しかしながら、それらのせいで滅び行く在来種もあるのだと思うと、なんとも言えぬ気持ちになる。

誰にも何も言われず、我が物顔で歩ける環境があると良いのに。

生きている限り、だれにとっても無害であることなどあり得ないのだとそんなことでも突き付けられる。



春なので、ドライブしていたらアライグマに遭遇しました。
春だなぁ(アライグマは寒い地域では半冬眠するらしい)。


『春の山我が物顔でアライグマ』 鶴群

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