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【映画レビュー】ダンケルク

クリストファー・ノーラン監督、脚本、制作、2017年公開。第二次世界大戦下の実話に基づき、ドイツ軍に海沿いの街ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍を救出するために、イギリス軍が民間船をも動員しながら実行した作戦が描かれています。

今回は、ノーラン監督新作『TENETテネット』の公開前にIMAXシアターでの上映があり、そちらで鑑賞しました。

戦争映画は、これまで幾つか鑑賞していますが、過去のものと明らかに異なる点は、所謂「ヒーロー」不在ということでした。史実が忠実に再現され、銃撃戦によるエンターテイメント的要素は少ないのですが、リアリティが追求されたストーリー、映像によってIMAXシアター効果も重なり、正に自分もダンケルクの砂浜で死の恐怖に怯える感覚に陥りました。

まさに自分が派遣された兵士の一人に。ダンケルクから脱出し、生き延びて、再び国のために闘う。死は受け入れているが、無駄死にでは無く、国のために死にたい。軍の機能として生きることが自分のアイディンティティと思える。

鑑賞後、戦時中の日本や国を守るために命を投げ出した祖先がいたことにも思いをはせ、感謝の念も湧き上がりました。圧倒的なリアリティを持つ戦争映画によって、今の自分のリアルについても考えさせられました。自分は死を受け入れて、今を生きることが出来ているのか。日本の外交、軍備、政治がどのようにあるべきなのか。戦争は悪、と思考停止に陥るだけでは済まされない感覚が残る映画でした。

量子力学の世界では、未来からも現在、過去に時間が流れているという考え方があるそうです。現在、世界中で行われているコロナとの生活が、未来の人間から見たダンケルクかもしれません。世界の秩序が乱れ、それに伴う恐怖感が人と世論と国を今までと違う方向に動かしていく時代。アイディンティティの確立無しに情報力、判断力、感性が磨かれない時代。逃れられない脅威に追い詰められた「ダンケルク」状態で、人はどうあるべきなのか?未来の自分からの視点で、現在を捉えると、コロナに怯えるだけで思考停止に陥り、恐怖のままに生きることが、最も死(自分の時間を生きていない)に近くなるのでは無いかと思います。恐怖や不安を煽られる状況でこそ、自分の在り方を確立し、それに従った生活を送ることで、救われる(ダンケルクを脱出できる)と未来の自分は、知っているのでは無いでしょうか。

映画最後の脱出シーンで感じた爽快さと生きることへの喜びは、今も心から離れない感動であり、未来の自分にも残り続けていると信じています。

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