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4/17 ニュースなスペイン語 Cocinas fantasma:ゴーストキッチン

ゴーストキッチン(cocinas fantasma)とは、宅配食(llevar a domicilio)に特化し、ホールスタッフも客席も持たない店舗を指す。fantasmaは「亡霊」という意味。スペイン語でも「ダークキッチン(dark kitchen)」という英語を使ったり、「盲目キッチン(cocina ciega)」という表現も見かける。緊急事態宣言(Estado de Alarma)が去年の10月に発令されて以降、突如、新聞などに出てきた語だ。特にここ1か月ほど、よく見聞きする。

マドリード市の北東に位置するプロスペリダー地区(Prosperidad)で問題となっているのが、クックレーン(Cooklane)社が設置した約40ほどのゴーストキッチン。キッチンは居住地区(zona residencial)にあり、住民たちは「ここで火事があれば、私たちは全員死ぬ(Aquí hay un incendio y morimos todos)」と恐れている。

住民たちを悩ましているのは、火事だけではない。ゴーストキッチンの付近の幅5メートルほどの一方通行の道路では、1日1000~3000台のバイクや自転車等の車両(vehículos)が行き来する。近くには病院や学校があることから、交通事故も怖い。

また、「騒音、におい、そして煙(ruido, olores y humos)」も住民たちの悩みの種だ。付近にはマンション7階建てと同じくらいの高さの煙突(chimenea de siete pisos de altura)がある。「市内すべての煙突の母(madre de todas las chimeneas)」と呼んでいる住民もいる。約38カ所のゴーストキッチンのにおいと煙を吐き出す。

さらに、「自分のマンションの下に38ものゴーストキッチンがあると知ったら、価格が半分だって買い手が付きません(cualquiera que se entere de que hay 38 cocinas abajo no compra esto ni por la mitad de precio)」と案じる人もいる。

同じくマドリードのアルガンスエラ地区(Arganzuela)のゴーストキッチンの付近の学校では、生徒たちが登下校(la entrada y salida de clase)の際は道路を封鎖(corte de las calles)し、「煙のない、優しくて安全な環境(un entorno amable y seguro sin humos)」を求めて、抗議活動を行っている。同様の動きはマドリード市内の各地で起こっているようだ。

被害者の会(Plataforma de Afectados)のメンバーのひとりは、「現在、投薬治療を受けていて、寝るのも大変(Estoy medicada y me cuesta dormir)と嘆く。

マス・マドリード党(Más Madrid)とスペイン社会労働党(PSOE)が、ゴーストキッチンの実情の本格調査に乗り出すなど、来月に控えたマドリード知事選の争点のひとつにもなっているほどだ。マス・マドリード党の調べでは、現在、マドリード市内だけでも、12の運営会社が約180カ所のゴーストキッチンを経営している。

外食を避け、中食(なかしょく)の需要が高まってきたスペインで顕在化してきた問題。恐らく、日本でも同様の問題が発生するだろう。

 写真は65 y más.com(3.31)より。プロスペリダー地区のゴーストキッチン。真ん中に見えるのがマンション7階建ての高さの煙突。手前3つの矢印がゴーストキッチンの施設。これらを囲むように住宅地が密集している。