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6/27 ニュースなスペイン語 Eutanasia:尊厳死

ギリシア語で「善き死」を意味する「尊厳死」だが、日本では「延命治療を施さずに自然な最期を迎えること」とされていて、「人為的に寿命を短くさせる」行為である「安楽死」とは区別するようだ。

とは言え、日本では「安楽死」はもとより、「尊厳死」も法制化されていないので、患者がこれを望んだ場合でも、尊厳死を実行した医師は同意殺人罪などで起訴されることになる。

さて、スペインでは、尊厳死は三年前に法制化されていて(2021年3月19日の小欄を参照のこと)、この度、「尊厳ある死を迎える権利を行使する会(Derecho a Morir Dignamente(以下、「DMD会」と略記する)」という団体(asociación) が、2023年度における申請数(solicitación)と尊厳死措置の実数を明らかにした。

この報告によると、2023年度は約750名の人が尊厳死の申請をし、 この内、約半数に当たる350名が自らの望む死を達成した(350 personas lograron ejercer su derecho a una muerte digna)という。

前年比で30%程増加しているものの、DMD会にとっては、世間の無理解という壁によって阻害(choca contra un muro de incomprensión)された結果、まだまだ、少ない数値だろう。

また、厚生省(Ministerio de Sanidad)も、一時的なデータ(datos provisionales)としながら、2023年度の統計を出していて、 これによると727名の申請(solicitudes)があり、323名に対して尊厳死(se han realizado 323)が施されたというから、DMD会の報告と大きな差異は見られない。

DMD会によると、尊厳死のための手続き(tramitación de la eutanasia)が、雑然としていて、複雑なためか(farragosa y compleja)、多くの人々が結果を待っている間に亡くなっている(el gran número de personas que han muerto a la espera de tramitación)という。

こうした状況を、DMD会は、「制度上のいじめ(maltrato institucional)」と表現する。

法律上、尊厳死認定の手続きは、35日を超過してはいけない(por ley no debería prolongarse más de 35)となっているらしいが、実際は、平均で75日かかっているらしく、これは、同会によれば、いかにも「かかり過ぎ(excesiva duración)」だ。

また、自治州によっても大きな不均衡(enorme desigualdad)が生じているのが現状で、例えば、尊厳死の数が多いナバラ州、カタルーニャ州、バスク州と比べると、ムルシア州やエストレマドゥーラ州、ガリシア州などは、場所によっては10倍も数値が低い(hasta 10 veces más bajas)とのこと。

いわゆる行政が、申請の受理を拒否するようなボイコット(boicot)の事例はないものの、DMD会によれば、例えば、カスティージャ・イ・レオン州では、 尊厳死認定委員会(Comisión)の中に、尊厳死反対を公言している委員らがいたり(miembros que han declarado públicamente su oposición a la eutanasia)、尊厳死実施の有無のデータを公開していない自治州もあるとのことで、DMD会の懸念は尽きることはなさそう。

DMD会の副代表は次のように話す。

スペインでは未だに、かかりつけの医師に尊厳死を求めに行っても、どうしたら良いのか分からない、とか、ちょっと待って欲しいなど言われる。しかし、待っていても、回答は一向に来ないのに(Todavía hoy en España, si va una persona a su médico de cabecera a pedir la eutanasia, el médico le va a decir que no sabe lo que le está pidiendo y que ya le responderá, pero esa respuesta no le va a llegar nunca)。

写真は尊厳死のイメージ画像。

小生は、もし、病に倒れたら、いたずらに治療は長引かせたくないタイプなので、ふつうの措置をふつうに施してもダメなら、潔く現世をあとにしたいところだが、まだまだ、法整備が追いついてない。

尊厳死が法制化されているスペインでも、上で見たような状況だから、日本で「潔く」旅立つまでには、法(と、人の気持ち)の改革が必要。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240625/eutanasia-balance-750-personas-2023/16161776.shtml