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7/20 ニュースなスペイン語 Mantero(2):マンテロ(2)

「マンテロ(mantero)」とは「しきものにモノを並べ、路上で販売している人」を指す。マンテロたちは、彼らを一斉検挙(redada)する警察から逃れる際、並べていた商品をしきものに丸め込んで、担いで退散する。そんなマンテロたちの多くはセネガルからの移民であり、マドリード市のラバピエス地区(Lavapiés)に多いー。昨日の記事ではこんな話を書いた。

このラバピエス地区で、2018年にセネガルの青年が、警察の一斉検挙から逃亡する際に死亡した事件についても触れた。

事件から3年余り経った今月2日、同地区に「パンテラ(Pantera)」という名を冠した店舗がオープンした。パンテラはスペイン語で「黒ヒョウ」を意味する。この店は、「マンテロ労働組合(Sindicato de Manteros)」が組織し、現職のマンテロたち、元マンテロたち、そして、ボランティアの人たちで実際には運営されている。

この店の設立の目的のひとつは、マンテロたちを、「露店から引き上げる(sacar de la calle)」こと。マンテロ労働組合の報道官(portavoz)であるマリック・グエイエ(Malick Gueye)は「マンテロたちはマンテロであり続けたいわけではない(Los manteros no quieren ser manteros)」と述べる。

もうひとつ、設立のより重要な目的は、グエイエによれば、「どこにでも売っているようなシャツを売ることではない。我々がここで売るあらゆるものが、反人種主義のメッセージを持つ。この社会で移民の人々が受けている人種差別を目に見える形にすること(No se trata de hacer cualquier camiseta. Cualquier cosa que vendamos, tiene que llevar un mensaje antirracista, que visibilice el racismo que sufren las personas migrantes en la sociedad)」なのである。

商品のデザイン(diseño)や製造(confección)はすべて、マンテロたちによって行われる。スペインに来る前に、自国セネガルで縫製の仕事をしていた人たちが、パンテラにはかなりいる(importante cantidad)。

次なる野望はオンラインショップだ(tienda online)。近く、立ち上げるようだ。パンテラの目標は「自給自足(autosuficiente)」だ。というのも、現在、バレンシアにあるエコロジー企業(empresa ecológica)がシャツのプリントを請け負っているからだ。最終的にはすべてを自分たちの手で行いたい。

そして、「店で働いていようといまいと(trabajen o no en la tienda)」、すべてのマンテロたちを援助したいという。

まだ、歩き始めた若い企業だが、高い志と強い信念を持っている。そして、何より、仲間たちを助けたいという大きな使命感を持っている。ゆっくりだが、着実に育ってほしい「黒ヒョウ」だ。

写真はパンテラのオリジナルTシャツ。「マドリードは人種差別の墓場になるだろう(Madrid será la tumba del racismo)」と胸には、祈りにも似た、強いメッセージがしたためてある。