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12/22 ニュースなスペイン語 Perra gorda:10センティモ硬貨

ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)とアルベルト・ヌニェス・フェイホ(Alberto Núñez Feijóo)が本日、やっと、会談する。

上で「やっと」を強調したが、この会談が実現するまでに三悶着くらいあったか。

小欄でも追おうと思ったが、いろいろありすぎて、取り上げるのを止めてしまった。

サンチェスがフェイホに対して、諸々のテーマについての議論するために、会談を申し出たのが11日。

その後、フェイホが審議日程(orden del día)をはっきり示せだの、テーマがああだこうだ、会談の場所や日時をどうしろだと、なんだかんだ言って、1週間ほどゴネていた。

サンチェスは、自らの申し出に対してなかなか明確な回答を出さないフェイホに対して、スペイン民主主義の歴史で前代未聞の出来事(algo inédito en la historia de la democracia)と閉口していた。

しびれを切らしたサンチェスは昨日、今回のキーワードである「10センティモ硬貨(約15円)」という語を使い、とうとう次のように切り出した。

「もう止めにしましょう、無駄な議論は(Para usted la perra gorda)」

そして、

金曜日に国会で会うことにしましょう。そして、あなたのお望みのテーマを話し合えば良い(nos vemos el viernes en el Congreso de los Diputados y hablaremos de lo que usted quiera)

とさじを投げた。

「10センティモ硬貨」がどうしてこのような文脈で使われるのかは末尾で説明するとして、ここでは、フェイホの皮肉たっぷり(con ironía)の返答を見ておこう。

フェイホは、まず、こんな風に切り出した。

あなたは私の望む通りとおっしゃった。じゃあ、立会人なし、ということで、よろしいかな?(Me dice usted que como quiera. Sin mediador, ¿le parece bien?)

続いて、

あぁ、それと、ジュネーヴじゃなくて、国会で(en Ginebra no, sino en el Congreso)。

と付け加えた。

「立会人」にしても、「ジュネーヴ」にしても、今月1日や4日の小欄でも取り上げた(公の)密談を念頭においた当てこすりであることは明白。

そして、

よろしければ、22日に議場でお会いすることにしましょう。議事日程をしっかり決めておくように。あと、お互い、無理な要求の押し付け合いはやめて、謙虚にいきましょう。私にはできますが、サンチェス首相、あなたはおできになるかな(Si quiere, nos vemos el día 22 en el Congreso, con un orden del día oficial y sin imposiciones ni soberbia. ¿Será usted capaz, señor Sánchez? Yo sí)

と締めくくった。

フェイホにしては珍しく(失礼!)、面白い切り返し。

テーマは恩赦法(ley de amnistía)を中心に、5日でも取り上げた憲法49条の改正(reforma del artículo 49)などが含まれる予定。

写真は握手を交わすサンチェス(左)とフェイホ。

ところで、今回のキーワードである10センティモ硬貨は1870年に作られた銅貨で、以下のような図柄が入っている。

左はおもて面(anverso)で、スペインを擬人化した女性(Hispania)が山に腰かけている。

一方、右がうら面(reverso)だが、後ろ脚で立ったライオン(león de pie)が紋章(escudo)に前脚をかけた姿が描かれている。

当時の鋳造技術が良くなかったこともあって獅子に見えなかったためか、はたまた、スペイン人特有のユーモアセンスか、いつしか、人々はこのライオンを「犬」、そして、10センティモ硬貨を「太った雌犬(perra gorda)」と呼ぶようになったという。

そして、お前さんのつまらくて、安っぽい議論は、10センティモでもやるから、もう、やめてくれ(Para ti perra gorda)という使われ方をするようになったようだ。

今日の会談で何かが劇的に進展することはないだろうが、まぁ、10センティモ以上の成果は欲しいところ。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20231220/sanchez-feijoo-reunion-dialogo-berrinche/2468400.shtml