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6/2 ニュースなスペイン語 Cascada de recursos:訴訟の滝

日本語なら「訴訟の波」とでも言うところか。

昨日の小欄で紹介したように、30日に下院(Congreso de los Diputados)で恩赦法(ley de amnistía)が可決した。

ところが、カスティージャ・ラ・マンチャ州知事、エミリアノ・ガルシア・パへ(Emiliano García-Page)のように、恩赦法を推し進めてきたスペイン社会労働党(PSOE)所属にも関わらず、本法が「平等の理念への侵害(una agresión al concepto de igualdad)」として、憲法裁判所(Tribunal Constitucional)に対して訴訟(recursos)を起こした議員が出るなど、恩赦法の船出はまったく順調ではない――。

昨日の小欄ではこんなことを紹介した。

で、今回は野党(oposición)の反応を見ておこう。

野党第一党である国民党(PP)が首長をつとめる自治州(comunidades autónomas)では次々と恩赦法の違憲性を問う訴訟(recursos de inconstitucionalidad)が滝のごとく(una cascada)起こっているという。

マドリード州知事イサベル・ディアス・アジュソ(Isabel Díaz Ayuso)は、恩赦法が可決された木曜日に、「今日は何とも不吉な日。最も汚れた法律が可決されたのだから(Hoy es un día nefasto para la democracia española, puesto que se aprueba la ley más corrupta)」と声明を出し、憲法裁判所に提訴する考えを明らかにした。

また、アンダルシア州知事フアンマ・モレノ(Juanma Moreno)も「分離主義者と独立主義者の野心を食い止めるために(intentar parar este desafío secesionista e independentista)」、同じく憲法裁判所への提訴手続きを始めたことを明らかにした。

同様の動きは、ムルシア州、バレアレス諸島州、カスティージャ・イ・レオン州、アラゴン州、バレンシア州、エストレマドゥーラ州といった国民党所属の知事が治める自治州からも出ている。

ムルシア州知事フェルナンド・ロペス・ミラス(Fernando López Miras)は同法が可決された30日を「スペインにとって暗黒の日(un día negro para España)」と表現したり――。

バレアレス諸島州知事マルガ・プロエンス(Marga Prohens)は恩赦法を「スペイン人の平等、三権分立、そして、法治国家スペインに対する攻撃(un ataque contra la igualdad de los españoles, la separación de poderes y nuestro Estado de Derecho)」と表現したり――。

カスティージャ・イ・レオン州知事アロンソ・フェルナンデス・マニュエコ(Alonso Fernández Mañueco)とアラゴン州知事ホルヘ・アスコン(Jorge Azcón)のふたりは、奇しくも、恩赦法を「暴走(atropello)」と表現したり――。

一方、ガリシア州のアルフォンソ・ルエダ(Alfonson Rueda)は恩赦法が「スペイン人の間に大きな差別を生むことになる(supone una enorme discriminación entre españoles)」としなからも、小欄執筆現在、提訴の表明はしていない。

同様に、カンタブリア州知事マリア・ホセ・サエンス・デ・ブルアガ(María José Sáenz de Buruaga)も「権力によって犯罪者を無罪放免にする、汚職まみれの試みと引き換えに、我が国の民主主義は大きく一歩後退した(un inmenso paso atrás a nuestra democracia, un intercambio corrupto de impunidad por poder)」としながらも、現時点では提訴の動きは見られず、週明けにも(próxima semana)、同州の法律専門家に法的に手続きを諮問する(encomendará)ようだ。

表現や提訴のタイミングの差こそあれ、どの知事も異口同音に、恩赦法の違憲性を問題にしている。

ところで、もうひとつの野党、極右政党ボックス(Vox)は、違憲性の提訴を定めた法律が国会内で最低50議席持っていることを要件のひとつとしているので、国民党と連携しながらの動きとなりそうだ。

とは言え、万一、憲法裁判所が違憲判断を出したら、恩赦法は一時無効となり、審議差し戻しになるのだろうけど、国民党内には「憲法裁判所への信頼はゼロ(la confianza en el TC es nula)」との見方があるようで、一斉提訴はある種の政治パフォーマンスに終わりそうな予感。

写真はマドリード州知事のアジュソ。

出典
https://www.eldiario.es/politica/ccaa-pp-avanzan-recursos-amnistia-paso-ayuso-moreno-quieren-dar-forma-inmediata_1_11410523.html