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11/16 ニュースなスペイン語 Filibusterismo:議事進行妨害

スペイン社会労働党(PSOE)が成立を目指している「恩赦法(ley de amnistía)」に、早くも、試練が訪れそうだ。

上院(Senado;Cámara Alta)の審議規則(Reglamento)の改正案(reforma)が14日、賛成147票(a fovor)、反対116表示(en contra)で可決された。

この改正案を提案したのは国民党(PP)で、これを支持したのがボックス(Vox)ということを思い起こせば、規定の改正が恩赦法の成立に何らかの足かせになることは、容易に想像できる。

でも、なぜ?

それは、審議規則の133条と182条を改正することで、下院(Congreso de Diputados;Cámara Baja)から上がってきた法案を、緊急審議(procedimiento de urgencia)で進めるか、通常審議(ordinaria)で進めるかを、上院で決めることができるようになるからだ。

つまり、下院で社会労働党がどんなに緊急審議で恩赦法の法案を通しても、上院で最大2ヶ月まで(hasta un plazo máximo de dos meses)審議を引き伸ばす(demora)ことができる。

否、時期によっては、国会が休暇(vacaciones parlamentarias)に入るので、2ヶ月以上、成立が遅れることもあり得る。

ただし、憲法(Constitución)の90条では、上院に法案が上がってきた際、2ヶ月を超えてはならない(no pueden exceder los dos meses en el Senado desde su entrada)と定めている。

だけど(法律は何かとややこしくて…)、この憲法の規定は、法律の草案(proyecto)に当てはまるのであって、法案(proposición)には適用されない、というのが国民党の見解。

なので、2ヶ月以上の審議遅延もあり得る(のかなぁ…)。

まぁ、いずれにしても、恩赦法を否決できないまでも、国民党とボックスは、社会労働党に最大限の嫌味を付けることができるという算段。

こうした国民党のやり方に恨み節を炸裂させたのが、当たり前だが、社会労働党や独立派の面々だ。

ある社会労働議員は、審議規定をこれまで一度も改正するなんて言わなかったのに(nunca antes la reforma de los artículos del Reglamento)、今になって、 邪魔者扱いするなんて(que ahora sí les molesta)と嘆いて見せた。

そして、恩赦法を誰よりも待ち望んでいるジュンツ(Junts)のある議員は、国民党のやり口をタイトルのように「議事進行妨害」とし、そして、重大な規定違反(grave infracción reglamentaria)と断じた。

近日中にペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)が首相に返り咲くことになりそうだが、就任(investidura)の前に、すでにこんな有り様。

しかも、マドリードの社会労働党の本部前で繰り広げられている、恩赦法に対する抗議活動は目下進行中。

前途多難、大波乱含み――。こんな言葉がしっくりくる船出は不安しかない。

写真は上院で改正案が可決した瞬間。

タイトルにある「filibusterismo」は「海賊行為」を意味するオランダ語由来。

日本の牛歩戦術もfilibusterismo。

Wikiによると、2021年のチリの国会で、11月8日朝、10時24分に始まった演説が翌日1時25分まで続いたという。チリの国会史上最長の演説。これもfilibusterismo。

こういうのに比べると、今回の国民党の改正案提出は、まぁ、節度あるfilibusterismo。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20231114/senado-aprueba-reforma-pp-retrasar-aprobacion-definitiva-ley-amnistia-congreso/2460860.shtml