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サッカーのスペーシング戦略

1.スペーシング戦略とは

3つの部分から構成されています。
戦略と戦術 」、「リズムを作る」、「言語化」です。 

戦略と戦術 

得点を獲る為の最終段階を明確にした戦略です。
そして得点の確率を高める戦略です。
また戦略を実現する為の戦術を含みます。

リズムを作る

更にサッカーで重要視されるチームとしてのリズムを作りだす戦術を含みます。

言語化

今までは選手の資質に依存して無意識的に使われていたスペースと、スペースに対するアプローチを言語化します。

戦略と戦術が言語化され姿が明らかにされると、今まで目の前に在っても気が付かなかったサッカーで得点を獲る本質的な姿が見えて来ます。
得点を獲る本質的な姿見えたらならそれを実行すれば点が取れます。

チームの選手に得点を得る為の共通認識が生まれます。
また数学の公式を使うように、試合中にその応用ができます。
選手一人一人のサッカー脳が強化できます。
数学の公式と言っても微分積分と言った複雑なものでありません。
足し算や引き算や、どっちが得、損の判断です。

2.戦略 

得点の確率の高いスペースに人とボールを運ぶサッカーです。
そのスペースは偶然ではなく計画的に狙って獲得します。
得点獲得の効率が高い戦略です。

重要なスペース 

下図1で、G1,G1a、左右のG2、左右のG3とGtがターゲットのスペースになります。
仕掛けて狙うスペースです。

図1 ターゲットのスペース

スペースG1

最重要なスペースです。 
この位置から直接シュートすると得点できる確率が極めて高いスペースです。 
また狙って(仕掛けて)そのスペースに人とボールを運べる可能性も高い場所です。

スペースG1a

G1に進む為のアプローチのスペースです。 起点になります。
スペインのポゼッションサッカーでは、ボールを回してここにスペースが出来るタイミングを図っています。スペインサッカーに取って最重要なスペースです。 

スペース G2L、G2R

このスペースまでの侵入は難しいですが、ここまで侵入ができると
ニアのGKを避けてG1、Gtに折り返すと得点の確率が高くなります。

得点の確率を高めるには折り返しが必要です。 
侵入して直接シュートは得点の確率が少し低くなります。

スペース G3L、G3R

相手DFがゴールの中央を絞って守る事が多いです。 
その例は日本とスペイン戦、ドイツとスペイン戦です。

中央を絞られるとG1のスペースを狙う事が困難になります。 
シュートできるスペースとして残っているのはゴールの左右のG3L、G3Rになります。

G3L、G3Rを起点としてボールをG1、Gtに運びます。
また確率は下がりますが、G3L、G3Rの位置から直接シュートもできます。

日本とスペイン戦でスペインの得点はG3Rが起点になっています。
スペイン戦の堂安選手の得点はG3Rからの直接シュートです。

堂安選手のシュートはキックが強くボールが早く、GKのパンチングミスを誘いゴールに成りました。しかしG3Rからの直接シュートはGKに捕られる確率も高いです。
それで直接シュートしないでG1、Gtにパスをするとゴールの確率が高まります。

スペース Gt

良く使われる伝統的なスペースです。 
サイド深く侵入してGtにパスすることによく使われます。

引いて守るチームには、例えばコスタリカやアジア予選などは、Gtまでドリブルで侵入できれば、又抜きで得点できるのではと考えています。 

3.戦術

ドリブルでDFラインに仕掛けるが基本になります。 その時にドリブラーのサポーターが狙うスペースに走り込んで、或いは、そのスペースに位置に留まってドリブラーからのパスを受けてシュートします。

ドリブラーがDF抜き去ると、複数のDFが引き付けられてスペースが生まれます。そこにパスをします。仕掛けてスペースが作れます。 

ドリブラーが更に深く侵入してシュートを選択するよりも、ドリブルで仕掛けてスペースを作って、そこにパスをする選択がゴールの確率が高く重要です。 

狙った所にスペースが作れるので効率的に得点できます。

DFとの対峙の時に強さと激しさで圧を増す。圧を増すとスペースが生まれる確率が高まる。

サイドから内に進みG1を狙う

G1のスペースを得たのであれば、サイドのウイングがDFラインでDFに対峙した時に、ドリブルで斜め内側のゴールに向かうようにボールを運ぶと、
中央を守っていた別のDFがドリブラーにつられて、G1にスペースが生まれます。

ここ2年のバイエルのサッカーを見ると、同じ事を行っています。 Youtubeのバイエル試合動画で確認できます。
 

サイドから縦に進みG1を狙う

日本代表の伊東純也選手のように、サイドのウイングがドリブルで縦に突破してもいいです。 
GKはニアに詰めているのでGtへのセンタリングは確率が悪いです。 
Gtへのセンタリングが一般的で、多く見られる攻撃のパターンです。

そこでスペーシング戦略では、サイドの奥深くからG3に折り返します。 
G3起点でGKに迫ってシュートでもいいし、そのタイミングでG1に折り返しのパスでもいいです。

G2を狙う

全日本の三苫選手のようにサイド奥に侵入して、更にドリブルでG2をボールを運び、G1に折り返す。 これは 人がボールを運ぶ 例です。

或いはスペインのように、ボールに運ばせる ます。
G2から外に少し離れた、ペナルティーエリアのサイドラインにボールを流し込んで、そこに人が走り込んでパスを受ける。そしてG1,Gtに折り返す。
 
足が早いFWや対戦相手が中央を絞って守っている時に、ゴール前の左右のどちらかに守備体勢が振られている時に、反対側のG2を狙う動きです。
 

4.スペース的優位性とは

DFの背後にスペースがあると、対峙するドリブラーにはスペース的優位性があります。 縦でも内側でもドリブラーは抜けます。 ただし躊躇しないで一機に抜き去る事が必要です。 躊躇すると時間的な遅れが生まれDFにボールを取られます。

DFと対峙したその瞬間の短い時間であれば、ドリブラーの技巧が左右するよりもスペース的優位性が大きいので、ある程度のドリブル技術があれば、縦でも内ににでもドリブル突破ができると考えています。

どちらかと言えば心理的な優位性で、対峙から時間が経過するに連れて少なくなる優位性です。

DFの背後がゴールネットエリアの狭く密集した場所でも、ドリブラーにはスペース的優位性が生あります。ドリブルでDFに仕掛けるとスペースが生まれます。

スペース的優位性が生まれる理由

例えばサイド攻撃のウイングと高い守備ラインを保持するDFが対峙する場合を考えます。

サイドからのドリブラーと対峙したDFは、最初にゴールを守ら無ければいけないと言う意識が生まれます。

するとゴールを守る為に、ゴールを背にして斜め横に構えたカニ状態の体勢に成ります。
 
DFは背後に大きなスペースがある事は分かっています。
しかもカニ状態なので背後(内側)の動作が機敏にできません。 
それでドリブラーが考えているよりも内側には抜き易いはず。

DFは背後(内側)の守備に難点があるカニ状態の体勢の修正を始めます。 そうなると体勢依存の優位性が消えて行きます。 それで瞬間的に抜き去る必要があります。

或いは、外にフェインを掛けてDFのカニ状態を強化して内に抜く。

縦に抜くことはより容易です。
DFにとってゴールに向かって斜め内側に抜かれると最悪です。
それだけは避けたいので、それでDFはどちらかと言えば内側に抜かれるよりは縦に抜かれる事を許容します。 
 

5.サッカーのリズムを作る

科学のフロッキングシミレーション
バラバラに泳ぐ魚の集団があります。そこに科学のフロッキングシミレーションを行います。 シミレーションは僅か3つのルールを全ての魚が行うとどうなるか?

すると最初はバラバラだった集団がリズムある動きになります。 少ないルールを繰り返すとリズムが生まれる事が分かりました。

サッカーでも同様で少ない決め事を繰り返し行うとサッカーのリズム が生まれます。

言いたい事は、サッカーにはリズムが必要で、リズムは僅かなルールを繰り返す事で生まれます。次にリズムがゴールを生みます。

ドイツ代表=チームの半数がバイエルン所属は得点の確率が僅かに高いルールをチーム全員が繰り返す事でリズムを作りゴールしています。

得点の確率が僅かに高いルールは実は少ないです。

ドイツ代表やバイエルンの攻撃のスタイルは実はシンプルです。 彼らは数少ないルールを実直に繰り返し実行しているに過ぎません。 それで複雑は動きが生まれているように見えます。 しかしよくゲームを注意深く見ると、シンプルなルールでゲームを作っていることが分かります。

それは
「ボールを奪うと、広くサイドに展開しているウイングにパスする」
次に
「サイドからドリブルで圧を掛けてG1にパスして、そこからシュートで得点をとる。」です。 

サイドからドリブル圧は繰り返して行います。 繰り返すことでリズムが生まれます。 

今回は得点を得る最終段階の戦略と戦術を述べています。それ以外は語っておりません。
ボールを奪う部分のデュエルは対象ではありませんが、そのボールを奪う所であったり、守ったたりする部分もリズムを生む上で重要です。

リズムが生まれた後は

リズムの次には共振が生まれます。
共振は瞬間的な大きなエネルギーを作ります。
それがゴールです。

リズムがあるという事は
集団として揃った動きがある事。
各人の波長が同期しているという事

すると次第に共振現象が生まれます。

例を挙げるとは声でワイングラスを割る。

共振が生まれると大きな力が瞬間的に生まれます。
それがシュートゴールだと考えています

結論は、ゴールにはリズムが必要である。

6.スペースG1の有効性

G1の重要度が分かる2つの例があります。

スペイン 7-0コスタリカ戦のスペインのゴール

スペインのゴールの起点となったのは

1点目 PKマーク(G1)
2点目 PKマーク(G1)
3点目 PKでゴール(G1)

4点目 9番が右サイド奥からG3Rにマイナスパス
5点目 PKマーク左(G1)
6点目 シュートこぼれをPKマークから押し込む
7点目 4点目と同じG3R、 コスタリカDFは疲れで棒立ち

バイエルン 8-2 バルセロナ 2020年8月 CL

5点目6点目8点目は左ゴールエリア(G2L)でドリブル圧で中央にスペース(G1)を作りパスでゴール。

7点目左ゴールエリア(G2L)でドリブル圧から直接ゴール

7.ポゼッションサッカーの問題点

ポゼッションサッカーの問題点が分かるとスペーシング戦略の優越性が分かります。
それで出来るだけシンプルにポゼッションサッカーを説明すると

ポゼッションサッカーとはパス交換を繰り返して得点の確率の高いスペースを得る戦術です。ただし得点の確率の高いスペースはパス交換を繰り返して偶然に生まれます。
狙ってはスペースを作る事ができません。

パチスロ

例えれば、遊技のパチスロのような物です。
パチスロのボタンを何回も何回も押して試行をして、やっと「大当たり」がでます。

ボタンの押す方法に「ある程度の技術介入」要素はありますが、基本的には「大当たり」を出すまでには、すごい数のボタンを押す必要があります。

3回目のボタンを押して「大当たり」を必ず出す事はできません。
何回か押せばいつかは「大当たり」がでるでしょうという運任せのところがあります。

パス交換

ポゼッションサッカーの「パス交換」はそれに相当します。 偶然性や運任せなのがポゼッションサッカーです。

数多くのパス交換をしなと得点の確率の高いスペースが得れないので、高ボール保持率が必要です。

上で述べた「パチスロのある程度の技術介入」と言うのが、スペインの高いパス技術に相当します。

理系の人間から見るとポゼッションサッカーはどちらかと言えば非効率的な戦術です。

得点の確率の高いスペース

ポゼッションサッカーで得たいと思っている「得点の確率の高いスペース」は、実は数はそれほど多くありません。 ポゼッションサッカーでなくてもどのサッカー戦術でも同じスペースになります。それはG1、G2, G3、Gtです。

実例

日本 2-1 スペイン戦では、日本は5バックで、G1とG1aのスペースを消しました。そしてG3の攻撃の起点も潰しました。
試合後のスペインの攻撃人のインタビューで「起点となるパス先が無かった」と言っていました。
 
日本の板倉選手は試合後のインタビューでボールは持たれて回されたが、危険を感じることが無かったと言っています。 

弱点

ポゼッションサッカーは偶然性や運任せでスペースを作るので、そこを絞られると攻撃の起点ができません。 そこがポゼッションサッカーの弱点です。

日本 2-1 スペイン戦での日本のボール支配率は17.7%で、スペインは82.3%でした。 スペインは圧倒的にボールを支配しパス交換を行いましたが、起点となるゲートのG1、G1a、G3が開いていなかった。 それで得点が出来なかった。 

パチスロのボタンを押し続けたが、悪い事に大当たりが出にくい台だった事に成ります。

対してスペーシング戦略では仕掛けて狙って計画的にスペースを作れます。 ここに優位性があります。

8.数的優位

広く認知されている「数的優位」の言葉あります。 亡き偉大なオシムさんが数的優位を日本で広めらました。 

その数的優位を踏み込んで考えて見ると、数的優位で生まれるものは、フリーな人とフリーなスペースです。 「数的優位」が最終的に作りたいのはスペースです。

だったら最初からスペースを作りにいった方が効率的です。 
ドリブルで圧で掛ければ複数のDFが引きつられてスペースが生まれます。

パス回しのポゼッションをしたければ、してもいいですが、ポゼッションをしなくてもスペースを作る事ができます。ポゼッション・サッカーにこだわる必要はありません。

9.ロングボール

相手が高いDFラインを築いているなら、DFの背後に大きなスペースが既にあります。スペースが在るのであれば、新たにスペースを作る必要もありません。 そのスペースに人かボールを運べはいいだけです。

ドリブル突破は人がボールを運ぶことです。
サイドでの一般的な縦へのドリブル突破です。

ボールに運ばせるには、背後の大きなスペースにロングボールを蹴りこみ、そこにサポーターが走り込んでボールを保持します。 そして攻撃の起点を作るます。

WCでの日本とドイツ戦での2点目の浅野選手のゴールがこれに相当します。 ドイツ代表は高い位置でのDFラインを作るチームなので、そこが弱点になります。

WCのスペイン 7-0 コスタリカ戦の4点目もボールをスペースに運ぶ例です。
DFラインの背後の右サイド奥にボールを流し込んで、そこに9番が走りこんでボールをキャッチしてG3Rにマイナスパスをして、そこからシュートでゴールです。

スペースに人がボールを運んでもいいし、パスでボールを運んでもいいです。

以上です

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