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【政策⑥】利上げ局面で、日銀が抱える重大な問題点とは何か?

前回までで、なぜ世界的にインフレが起きているのか、なぜ世界各国が利上げを行っているのか説明してきました。

そして、日本も円安が進み社会に悪影響が大きくなったとき、利上げをして円の価値を守る必要に迫られる可能性があるとお話してきました。

そして、今年ついにその懸念が現実となる日がきました。

2022年10月、1ドル151円台後半と32年ぶりの円安水準に!

今年10月、円が1ドル150円台まで下落しました。当時、歴史的な円安が日々ニュースを賑わせたのは、みなさん記憶に新しいかと思います。

そして日銀は、何回かに渡ってドル売り円買いの為替介入を行いました。為替介入の効果もわずかな期間で消し飛んでしまったことも印象的なできことでしたね。

その後、アメリカの利上げの打ち止めが視野に入ってきたことに加え、日銀も事実上の利上げ(長期金利の変動幅を±0.25%から±0.5%に拡大)を決めたことにより、円安は一服した感があります。
しかし、国際情勢は一寸先は闇、予見できる未来など、この世には一つもありません。いつ何時状況が変化するか分からない毎日、再度また日本が円安に見舞われる状況になる可能性も、まだまだ十分にあるのです。

しかし、日銀は通過防衛のための利上げを行うことに対して大きな問題を抱えてます。それが、前回ご説明した巨額の当座預金の存在です。

積み上がる日銀の当座預金。利上げとの関係は?

通常、中央銀行は国債を必要最小限しか持っていないので、短期の国債の売り買いで金利を調整しています。

通常、日銀は短期の国債を売り買いするのことにより、需要と供給を調整しています。国債の供給量が増えると需要が減り金利が上昇し(価格は下落)、国債の供給量が減ると需要が高まり金利は低下(価格は上昇)します。
筆者作成

上記の図のように、金融機関は短期金融市場で資金のやり取りをしています。以前は、ここの資金量を日銀が国債を買ったり売ったりして(買いオペ、売りオペ)調整し、金利の上げ下げをしていました。

利上げの際の日銀、民間銀行、顧客の関係
筆者作成

しかし、長年に渡る日銀の緩和政策によりお金が溢れかえり、短期金融市場での国債の売り買いでは金利が操作できなくなりました。今後利上げをする場合、日銀は巨額の当座預金に対して利子をつけるという形で行うこととなります。(実際にアメリカの中央銀行にあたるFRBでは似たような形で利上げが行われています)。

このとき、日銀にある巨額の当座預金がまさに問題となるのです。現在日銀の引当金勘定など(日銀が持っているお金)は約10兆円、仮に1%の利子を付けるとなると、日銀は1年で約5兆円の利払いをする必要があります。仮に1%程度の利上げで済んでも、その状況が数年続いたり、もし1%以上の利上げが必要となった場合はすぐに「債務超過」となる可能性があります。

日銀データより筆者作成

もちろん、日銀が債務超過となってもすぐに破綻するわけではありません。しかし、管理通貨制度(金の保有量とは無関係に法律で定められた通貨制度にもとづいて、中央銀行が貨幣の量を管理する制度)のもとでは、通貨は信用こそが命です。江戸時代のように、貨幣にそれ自体が価値となる金のようなものが含まれていないからです。その通貨を発行する日銀が「債務超過」となる。そのとき、信用を失った日銀や円がどのような運命を辿るかは誰にも分かりません。日銀による国債の野放図な買い入れは、知らぬうちに非常に危険な状態へ日本を追いやっているとも言えるのです。

次回、引き続き国債発行の増大による弊害をみていこうと思います。


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