「A Woman in Blue ep.4 わたしと鳥と焼き芋と」(連続ドラマシリーズ)
雪解けと同時に、地域の人々の心も解け始め、
青い髪の女は、いろいろな人との交流を楽しむようになっていた。
そして、夏がやってきた。
照りつける太陽。
青い髪の女は、北海道での初めての夏を愛おしく思った。
この太陽の力を、全身で受けよう。しっかり蓄えよう。
そう、あっという間に、長い長い冬がやってくるのだ。
「あ、焼き芋のストックが切れてた!買いに行かなくちゃ」
青い髪の女は、太陽と仲良くしながら、片道30分のスーパーへの散歩を楽しもうと準備を始めた。
ザーーーーーーーーーー!
突然の強い雨。
昨日も突然の雨で外出を断念していたのだった。
「よし、今日は、雨と対話することにしよう」
「豪雨上等」とばかりに、外へと飛び出す青い髪の女。
ザーーーーーーーーーー!
ザーーーーーーーーーー!
雨は全く止む様子もなく、青い髪の女の頭上に突き刺さる。
強い雨は視界を遮り、雨音以外何も聞こえない。
それがかえって静寂を連れてきたかのようだ。
「瞑想モードだね、これは。うん、嫌いじゃない」
青い髪の女はそう思った。
バタバタバタっ。
突然、背後で大きな音がした。
「え? 何?」
青い髪の女は、音を頼りにキョロキョロ。
バタバタバタっ。
あ、あの窓!何かがぶつかって暴れている!
よく見ると、それは鳥だった。
おにぎりぐらいの大きさ。
白や黒、青など、カラフルな色をまとった鳥だった。
東京では見たことないようなその鳥は、雨で翼が濡れて飛べなくなっていたようだった。
「おお、かわいそうに! 傘で雨から守ってあげなきゃ!」
青い髪の女は、急足でその窓に近づこうとした。
バタバタバタっ!
ギャァーー!
背後で大きな音が。
「ん? 他にも鳥がいるのかな?」
青い髪の女は振り向いた。
同じような色をまとった鳥が2羽、青い髪の女を睨みつけていた。
でかい。
カラスぐらいある。
「え? 親鳥かな? あ、違うよ。何もしないよ。ビショビショのあの子を助けてあげたいって思っただけだよ」
さらに一歩近づく。
バタバタバタバタバタっ!
ギャァギャァーー!
威嚇はさらに激しくなり、青い髪の女の傘を攻撃してきた。
「え、違うよ。襲わないよ。濡れて暴れてたら怪我しちゃうから、傘をさして乾かしてあげたいだけなんだよ」
バサバサっ!
バチコーン!
ギャァギャァーー!
攻撃はなおも止まらない。
「うーん、警戒させちゃったな。どうしよう……」
ギャァギャァーー!
「わかったよ。離れるよ」
青い髪の女は、あきらめてその場を去ることにした。
「あ!そうだ! スーパーで傘を買って、鳥さんに差しかけてあげればいいんだ!よし!」
青い髪の女は、急ぎ足でスーパーを目指した。
大雨の中、全身びしょ濡れで。
「よし、ゲット!鳥さん、待ってて。今雨から守ってあげるからね!」
買った傘を手に、青い髪の女は、濡れて動けなくなっている鳥のところへと急いだ。
「あれ?」
さっきまで鳥がいた窓は、しーんとしていた。
「ん? 飛び立てたのかな?」
大丈夫なら、それでいい。
青い髪の女は、穏やかな気持ちで、その場を立ち去った。
家に着き、びしょ濡れの服を着替える。
「さてと、コーヒータイムにでもするか」
思いがけず豪雨の中のスリリングなひとときになったが、
鳥たちが無事ならそれでよい。
この上もなく豊かだ
うん、コーヒーがおいしい。
「あ……」
青い髪の女は、本来のミッションを思い出した。
「焼き芋、買ってくるの忘れた……」
短い夏を存分に楽しむ青い髪の女であった。
(終わり)
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