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再開発は果たしてエリア価値を高めるのか?! -固定資産税と住民税からエリア価値を考える- /洞口 文人/FUMITO HORAGUCHI

洞口 文人/FUMITO HORAGUCHI
特定非営利活動法人自治経営 副理事長
仙台市 都市整備局 営繕課 技師

エリア価値を高めるまちづくり?

今回、自治経営コラムでは2回目のコラムになります。以前は脱・キラキラ公務員宣言と、公務員のメンタル的な部分についてコラムを書いたが今回は、少し真面目な記事を書きたいと思います。

以前のコラムでも説明しましたが、僕は2013年より仙台市に入庁し、そこで、せんだいリノベーションまちづくりや公民連携の企画推進に関わってきました。
特に、力を入れたのが民間主導による公共空間の利活用を推進です。民間と連携し、定禅寺通や肴町公園を中心に都心を回遊しながらコーヒーやワイン、パンなどを楽しめるGREEN LOOP SENDAIというマルシェを実施してきました。

これらの公共空間を民間主導で活用を促し、将来的には、公共空間における公民連携事業を生み出し、周辺不動産を巻き込んだエリアマネジメントまで踏み込んでいくことを目標としていました。僕自身が、2018年度より異動となってしまい、志半ばで、オフィシャルで関わることが激減してしまいましたが。。。

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GREEN LOOP SENDAIの様子

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GREEN LOOP SENDAIと同時に社会実験において道路上に民間資金民間設営で設置した定禅寺パブリックパークレット

上記の取組はNPO自治経営から出版している公民連携事業ケーススタディブックにて特集が組まれていますので、詳細を知りたい人はそちらをご覧ください。


どの業務も「エリア価値を高めるまちづくり」と言い、事業を推進してきましたが、それについて疑問を感じるようにここ数年なりました。
そして、次の仙台市の政策を見たことをきっかけに、その気づきを確かなものになりました。


せんだい都心再構築プロジェクトについて
仙台市では2019年度より、せんだい都心再構築プロジェクトという方針が仙台市より発表され、話題となっています。(詳細については、リンクへ
このプロジェクトの前提となる問題意識として、仙台市都心部の老朽化する建物が更新されないということが課題だと挙げられています。さらに、これらのオフィス床に企業が入居するのに、設備面が整っていなく入居しにくいため、建て替えを誘導する必要があると言っています。
それらを実現する政策として、例えば、共同建て替え(法定再開発)を実施する場合、補助率を拡充したり、高機能オフィスを入れる場合、そこの固定資産税相当分を助成したり、容積率の緩和をしたりする。
この政策から、何を読み取れるかというと、仙台市の老朽化する建物を建て替えする資本力が仙台には足りないため、その資本力を域外資本である東京資本(東京資本とは限らないが、ターゲットは東京資本であろう)を呼び込もうという狙いです。なので、再開発の際に床を受け持ってくれるディベロッパーや建設会社に向けて、市街地再開発事業にかかる事業費の補助率の拡充や容積率の緩和、テナントに入れたい高機能オフィスにも助成する政策をつくっているのです。
ただし、この政策により生まれた利益は東京へ吸収されるということは、多くの読者の皆さんにはお分かりだろうと思います。では、なぜ、このような政策が生まれてくるか?それについて、7年間ほどの短い公務員経験のもと、僕なりに紐解いていきたいと思います。
また、このコラムは再開発を批判するものではなく、このような政策や再開発が動くのには、きちんとカラクリや理屈があり、そこを明らかにする事で、また新たなミライが生まれるのではいう思いで本コラムを執筆しましたので、ご理解ください。

では、話を戻すと、この政策が作られる背景として、行政から見たときのメリットを見ていくと案外、いろんなことが分かってきます。もちろん、それは短期的なメリットということを付け加えておきたい。
次に税制面からのこのメリットを説明していきたいと思います。

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