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やめなきゃいけないのに、やってしまう(ACT番外編)

前々回の記事で、
チョイスポイント」という
モデルを紹介しました。

これは、私たちの行動を

「より有意義な人生へと進むもの」と
「有意義じゃない人生へと逸らすもの」

という2つにモデル化し、
自分の行動の変容を
起こしやすくするものです。


さて、今回は番外編として、
もう少し「行動」にフォーカスして
見ていきましょう。

ACTの基盤となっている
応用行動分析(ABA)の知見を
少しお借りします。


「知識だけじゃなく行動が大事」

というのは
よく聞く言葉ですが、

「じゃあ行動ってなに?」
「どうすればよい行動が取れるの?」

となると
なかなか答えられないもの。


もし、あなたが今

「考えてばかりで行動ができない」

「やめたい行動をついしてしまう」

そのように感じているのなら、
この記事がお役に立てるかもしれません。


行動とは何か


私たちが、普段使っている
「行動」という言葉

これはそもそもどんな意味でしょうか?

辞書的には、
「あることを目的として、実際に何かをすること」
とあります。(goo辞書)

確かに、私たちは、
喉を潤したいという目的で
水を飲みます。

それは「行動」ですね。

しかし、
「実際に」とは
どういうことなのでしょう

同じくgoo辞書には、

「心理学で、外部から観察可能な人間や動物の反応をいう」

とも書いてあります。

なるほど、確かに行動は
外から見てわかります。

隣にいる人が
(喉が渇いたなぁ)と
感じているかはわかりません。

しかし、
「水を飲む」という動きは
見てわかります。

この行動の定義は、
とてもわかりやすいですね。

外から見てわかる反応が「行動」


この定義は心理学、つまり
人の心をどう科学的に解明していくか
という学問において

「外から観察可能なもの」だけを
考えるようにしよう
という立場を表しています。


ここで、一つ
面白い定義を紹介します。

それは、行動とは
「死人にできないことすべて」である

というものです。

(死人とは、少し露骨な表現ですが
 ご容赦ください)

この定義だと
考えるとか、思うとか、感じるとか
も「行動」に含まれます。

亡くなっている人、遺体は
考えることも思うことも、
感じることもできません。

少なくとも
脳も呼吸も停止していたら
そうした人間の内側の反応は
起きません。

霊や魂の有無は
一旦わきに置かせてくださいね。


そうした、
外からは見えないことも
「行動」に含むのが、この定義です。

そう考えると、
人間がしていることはすべて
「行動」
とも言えます。

だから、
「考えてばかりで行動ができない」
という人は、実は

「考えるという行動ばかりをしている」
だけなのです。

となると問題は、
どのように「考える」以外の行動を
増やしていくか。

そうしたところになります。

これは、「考える」だけではなくて、
自分が「やめたい」「変えたい」と
思う行動すべての問題
です。

人間がしていることがすべて行動ならば、

望ましい行動を増やして
望ましくない行動を減らすこと


よい人生への道のはずです。


では、どのように
自分の行動を変えていけば
よいのでしょうか。


ここでは、
「分化強化」という方法を
ご紹介いたします。


分化強化とは


分化強化の説明に入る前に、
「強化」という言葉の意味を
つかんでおきましょう。

強化といえば「強くする」

ゲームなどで武器を強くしたり
ステータスを上げたりするような時に
使われる言葉ですね。

心理学において強化とは
「ある行動を増やすこと」だと
思っていただければよいかと思います。

「運動する」という行動が強化されたら、
週1回だったウォーキングが3回になる。
そんな意味合いです。

逆に、
「ある行動を減らすこと」は
弱化です。

毎日吸っていたタバコが、
2日に1回になったなら、
「タバコを吸う」が弱化されたことになります。


さて、本題です。

分化強化というのは、

ある行動を強化して
同時にほかの行動の強化をしない方法です。

もしやめたい行動(問題行動とします)があって、
それを減らしていこうとするなら、

問題行動の強化はしないで、
他の行動(代替行動)を強化する
というアプローチになります。

要は、

問題行動を減らして、
代わりの行動を増やしましょう

ということです。

私たち生きていて問題になるのは、
やめたい行動をやめられない
という状況の方が多いでしょう。

反対に
もしもっとやりたい行動(運動)があって
それを増やしていこうとするなら、

やりたい行動を強化して、
他の行動を強化しないことになります。


分化強化には
多くの種類があるのですが、

この記事では
以下の4種類をご紹介します。


①非両立行動分化強化
(DRI :Differential Reinforcement of Incompatible behavior)

②代替行動分化強化
(DRA :Differential Reinforcement of Alternative behavior)

③他行動分化強化
(DRO:Differential Reinforcement of Other Behavior)

④低頻度分化強化
(DRL : Differential Reinforcement of Low rates of behavior


①非両立行動分化強化(DRI)

まず、非両立行動分化強化です。

これは、
問題行動と(物理的に)同時にできない行動を強化し
問題行動は強化しない
という方法です。

例えば今、
「タバコを吸う」という問題行動を
減らしたい人がいるとします。

例)
「タバコを吸う」という問題行動を減らすために、「アロマを嗅ぐ」という行動をする。すると、アロマを吸うたびに、タバコの匂いを気にしていた家族から褒めてもらえる。それが嬉しくて、よりアロマを嗅ぐようになり、タバコを吸う回数が減っていった。

非両立ですから、同時にはできない行動を選んで
その回数を増やしていくことです。

例の場合
「タバコを吸う」と「アロマを嗅ぐ」は、
どちらも吸うという機能を使っているので
同時にはできません。

結果として、
問題行動は強化されないので減少
もう一つの行動が強化されていくことで、
望ましい行動が増えていくという効果があります。


②代替行動分化強化(DRA)

次に、代替行動分化強化です。

これは、
問題行動の代わりになる行動を強化することで、
問題行動を減らし、代替行動を増やそうというものです。

例)
「タバコを吸う」という問題行動を減らすために、「ガムを噛む」という行動をする。すると、ガムを噛むことで、タバコの匂いを気にしていた家族から褒めてもらえる。それが嬉しくて、よりガムを噛むようになり、タバコを吸う回数が減っていった。

例の場合、
「ガムを噛む」が「タバコを吸う」の
代替行動です。

先ほどの非両立行動と異なり、代替行動は、
問題行動と両立しないと言いきれないもの
でも可能
です。

ただ、例の場合、
「ガムを噛む」だけでは「タバコを吸う」よりも
得られるプラスの感覚が少なく感じるかもしれません。

しかし、健康につながる、家族のためになるなど
単なる薬物の快感とは異なる快を感じること
それが問題行動を減らすことにつながるでしょう。

ここはまさに選択の場面
チョイスポイント」です。


③他行動分化強化(DRO)

他行動分化強化は、
問題行動以外の行動を強化することで、
問題行動が起きない時間を増やす方法です。

代わりの行動を決めてそれを増やすのではなく、
問題行動をしていないことを評価します。

問題行動をしていないということは、
何か他の行動をしているということですから、
「他行動」です。

例)
「タバコを吸う」という問題行動を減らすために、タバコを吸っていない時に、家族に褒めてもらうようにお願いする。あるいは、一日タバコを吸っていないことに自分で気づいたら、好きな飲み物を一個買う、など。


④低頻度分化強化(DRL)


最後に、低頻度分化強化です。

これは、①〜③とは少し異なります。

行動が高頻度で発生する、つまり、
「やりすぎている」ことが問題となっている場合に
行動を減少させるために行う方法です。

あらかじめ回数や時間を決め、その基準より少なく行動した場合に強化をすることで頻度を減らします。

例)
「タバコを吸う」回数を減らすために、3日間タバコを吸わなかったら1回外食をする、というルールを決めた。など。

ちなみに、
望ましい行動を増やしたい場合には、

高頻度分化強化
(DRH: Differential Reinforcement of High rates of behavior)
という方法があります。

これは④とは逆で、
あらかじめ回数や時間を決め、その基準より多く行動した場合に強化をすることで頻度を増やします。

例)
「運動をする」という行動を増やすため、1日20分・週3日以上の運動ができたら、1食だけ少し贅沢をしていい。


おわりに

最後までお読みいただき、
ありがとうございます!

今回は、
ACTのベースとなっている
応用行動分析学の分野から、
分化強化」の具体的な手法について
ご紹介しました。

用語が少し難しく感じるかもしれませんが、
やっていることはシンプルで、

「望ましい行動を増やして、
 望ましくない行動を減らす」

ということです。

では、
「何が望ましい行動なの?」
というと

ACTにおいては、
「価値に沿った行動」ですし、

私の言い方では、
「テツガクに沿った行動」です。

(ACTの価値については以下の記事を参照)

(テツガクについては以下の記事を参照)


時間は有限ですから、
その時間をどんな行動に使うかで
人生はつくられていきます。

有意義な行動をする時間を
増やしていくことが、
充実した人生をつくります。

そうはわかっていても
難しいのが行動ですから、
こうして心理学の知見を借りましょう。


最後の最後までお読みいただき
ありがとうございました!


ACTの全体像については、
以下の記事をお読みください!

また、私の運営するジブンテツガク・プログラムでは、
ACTをベースとした心理スキル習得のための
エクササイズ
も提供しております。

プログラムの詳細はこちらをご覧ください。

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